異界からの迷子
暑い…。
むしむしする。
今は梅雨だっけ?
なんでこんなに暑いの。
それになんだか緑のにおいがする。
わたし、部屋に植物なんて置いていたかしら?
…まあ、いいや。
眠たいし、寝る。
ポツン
「…ん?冷たい!?」
わたしはガバッと起き上がった。
目なんて一気に覚めたわ。
「え?雨?なんで?家で?うそ?ってか、ここどこ!?」
あたりをみまわすとわたしの部屋のものなんて何一つなかった。
茶色のタンスもテレビも本も。
代わりにあるのは緑だけ。
緑、緑、緑の森?野原?
この場合は野原なのか?
木というより草だから…って、そんなのはどっちでもいい!
今は雨から逃れなくちゃ!!
風邪ひいちゃうよ!
わたしはダッシュでとりあえず走った。
「はあっ…はあっ…」
走った。うん、疲れた。
もう濡れていいや。
めんどい。
今も雨はザーザー と降っている。
ほんと、意味わかんない。
わたし夢遊病だったの?
昨日は学校に行って、バイトに行って、帰宅して寝ただけ。
お酒も飲んでないし、まずご飯は食べずにお風呂に入って寝たわ。
家の近くにこんな森擬きもないし、わけわかんない。
でも、今は…
「あー、傘が欲しい」
ほんと傘がほしい…って
「っへ?傘!?」
なぜかわたしの手の中には傘があった。
いつのまに?
わたしさっきまで傘なんて持ってなかったよね?
「……」
うん。もう何も考えたくない。
あー寒い。
濡れたし。
お腹すいた。
「…りんご食べたい」
って、そんなほいほいりんごが落ちてるわけがっ
「って!え?また?いつのまに??」
私の手の中にはりんごがあった。
よくわかんないけどラッキー。
いただきー。
むしゃむしゃとわたしはりんごをかじりながら、傘を差したまま歩いた。
服装は半袖に短パン、寝るときに着ていた服のまま。
「むしゃむしゃ…ん、これってもしや異世界トリップ?」
携帯小説でよくある話の。
「ステータスとか言ったらなに出てくるのかな?ははって、えー!?」
名前:藤堂 紅
性別:女
年齢:19
種族:人族
レベル:1
職業:異界からの迷子
スキル:万物の選択(自分が触れたいものを手の中に転移させる)
「…は?うそ?え?現実?!」
もう無理。ゆっくり休みたい。
「家がほしい」
あまりことにわたしの頭は大嵐。
現実逃避したくて、とりあえず休みたくてぼそっとつぶやいた。
すると、ドンっと大きな豪邸が出てきた。
「ははっ。もう認めるしかないの…?」
わたしは出てきたその豪邸に入った。
当然のように私は誰もいないと思っていた。
しかし、中には豪華な家具と…人がいた。
「え…?」




