第9話 柔らかい枕
それから、授業が進んで行った。
道中は、それから午前中いっぱいまで、機嫌が良かった。
授業中でも、僕が隣の道中を見ると。
「(ニッコリ)」
僕を見て、微笑んでくれた。
そんな道中を見ると、僕はドキッとしてしまう。
そうなると、僕は恥ずかしくなり、慌てて前を向く。
そんな調子が、午前中いっぱい続いたのであった。
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そんなこんなで、時刻は昼休みになり。
僕と、道中、池野の3人は、食堂へと向かった。
食堂に行き、いつも通りに僕は購買でパンを買い。
道中達は、席を確保しに行った。
そうして今日もまた、道中が自分が口を付けた箸で、僕にオカズを食べさせようとしたり。
それを見た池野が、ニヤニヤと意味ありげな笑みを、浮かべたりしていた。
・・・・・・
昼食が済むと、今日もまた、渡り廊下の所の休憩所で休んでいた。
「・・・と、そう言う事なの」
「え〜、そうなの〜」
道中と池野が、ベンチに向かい合わせに座り、二人でガールズトークをしていた。
僕は、話の内容に付いて行けなくて、ホ〜としている。
そうやって、ボ〜としていると、春の陽気もあって眠気が襲って来た。
「(ふああああっ)」
二人に気付かれ無いよう、僕はアクビをした。
アクビがすると、今度は、まぶたが重くなる。
そうしている内に、僕の意識がいつの間にか落ちて行った・・・。
・・・・・・
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「へえ、そうなん・・・・・」
「(コツン)」
私が、瀬知と談笑していると、突然、左肩に何かが乗ってきた。
「えっ!」
その方向を見ると、優一くんが頭を私の肩に乗せていたのであった。
どうやら、居眠りをしている内に、ズリ落ちて来たみたいだ。
「美咲・・・」
「しっ!」
瀬知が、私に何か言おうとしたが。
私は人差し指と立てながら、瀬知に静かにする様にゼスチャーした。
「・・・・・・」
私の肩に頭を乗せている、優一くんの顔を見た。
優一くんは、気持ち良さそうに眠っている。
”可愛いなあ・・・”
私は、眠っている優一くんの顔を見て、そう思った。
少し童顔の優一くんの寝顔は、近くで見ると、何だかとても可愛い。
そんな可愛い寝顔を見てる内に、思わず彼に手を伸ばしていた。
「(ぷにっ)」
彼の頬に触ると、意外とツルツルした感触があって、気持ち良い。
そうやって、彼の頬の感触を感じると
「(サラリ)」
次に、優一くんの髪を撫でてみた。
彼の髪は、思ったよりもサラサラしている。
「(なで、なで、なで)」
私は、触り心地の良い、優一くんの頭を撫でていた。
向かいでは、瀬知が妙な笑いを浮かべているが。
そんな事に構うことなく、私は、彼の頭を撫で続けた。
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・・・・・・
う、う〜ん、気持ち良いなあ。
何だか、良い匂いがする柔らかい物を枕にしてる。
僕は、その感触に思わず、頬ずりをした。
頬に、柔らかな感触を感じていたら、頭を撫でられているのに気付いた。
僕を撫でる、その手は、ヒンヤリとして柔らかくて気持ち良い。
それに、指が髪を梳いて行く、その感触も心地良い。
それらの感触を感じながら、ユックリと目を開けていく。
目を開けると、目の前には、嫌らしい笑いをしている、池野の姿が見えた。
「優一くん、起きた?」
それと同時に、僕のすぐ隣で道中の声が聞こえた。
すると、いまの自分の状況を理解した。
僕は、道中の肩に頭を乗せながら、頭を撫でられていたのである。
「わわわわわ、ご、ご、ご、ごめん!」
僕はその事に気付くと、慌てて離れた。
「ふふふっ、優一くん、気持ち良かった」
「そうそう、頬ずりしてた位だものね〜♪」
道中と池野が、狼狽えている僕に、そう言った。
僕は、二人の言葉を聞いて、顔から火が出る位に恥ずかしくなった。