第5話 喜んで良いのやら、悲しんで良いのやら
二人が周囲を悶々(もんもん)とさせた後、先生が来て体育の授業が始まった。
体育の授業が始まると、男子達も平静を取り戻しかに見えた。
しかし、始まってからのラジオ体操時、
男子の中に、妙に上体を傾け腰が逃げた、不自然な姿勢の人間が何人かいた様だ。
その張本人達である、池野と道中は、対象生の中で何事も無かったかの様に、体操をしている。
池野のヤツ、分かっててワザとやっているな・・・。
シレッとしながら平然とラジオ体操をしている、池野を見て僕はそう思った。
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そして3時間目の体育が済み、4時間目の授業も済むと、昼休み時間になった。
「優一くん、一緒に行こう」
隣の席に座っている、道中がそう尋ねてきた。
「うん、行こうか」
僕は道中にそう答えた。
「瀬知も行こう〜」
「うん、行こう〜」
道中は、池野も誘うと、池野もそう答えた。
最近は、3人で昼を取るのが習慣になっていた。
道中と池野は、カバンから可愛らしい包みに包まれた、小さめの弁当箱を取り出すと席を立った。
僕も席を立つと、3人連れだって教室を出たのである。
・・・・・・
廊下を歩き、校舎と食堂を結ぶ渡り廊下を通ると、学校の食堂に入った。
いつも、ここで昼を食べていたのだ。
「じゃあ、僕はパンを買ってくるから」
「いつも通りの所で待っているからね」
道中と池野は弁当持参であるけど、僕はいつも購買でパンを買ってくるのである。
二人の方は、先に席に座り場所を確保するのだ。
ここで二人と一先ず分かれると人がゴッタ返す購買へと向かった。
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「ふう〜、あ〜、疲れた〜」
「ご苦労様」
僕が購買で疲れた声を出すと、道中が労りの声を掛けた
僕は、購買で人混みを掻き分けると、目的のパンをゲットする事が出来た。
しかし、人混みの掻き分けて内に疲れてしまった。
「じゃあ、食べようか」
僕も確保してくれた席に座ると、道中がそう言った。
「「「いただきます」」」
3人がそう言うと、二人が弁当の包を解き、蓋を開け。
僕は、買って来たパンの袋を破いた。
二人は可愛い柄の包を解き、ファンシーな弁当箱の蓋を開けると。
見えてきた中のおかずは、量が少ないけど種類が多いので、盛り付けが豊富である。
「二人共、これを自分で作るの?」
僕は、二人に尋ねてみた。
「うん、そうだよ、私は結構料理が好きだから」
「まあ私は、そこまで好きじゃないけど、一応出来るよ」
と、道中と池野は、そう答えた。
何と言うか、イメージ通りの答えで、思わず笑いそうになる。
「でも、朝は時間が無いから、冷凍食品を上手く使うけどね」
続いて道中は、そう言った。
・・・・・・
食べている道中の、弁当箱の中を見ていたら、僕はある物を見つける。
「へ〜え、アスパラのベーコン巻があるんだな」
僕は、自分の好物を発見する。
「ん、優一くん、ひょっとして好物なの?」
「結構、好きかな」
道中が箸を止め、そう言ってきたので、僕はそう答えた。
「ん〜、ねえ、優一くん、食べてみない?」
「えっ?」
「う〜ん、一つくらい良いよ」
「いや、折角、道中が自分で作ったのだし」
「いいよ、自分が作った物で、人が美味しいと言ってくれる方が嬉しいよ」
そう言って、道中はニッコリと笑顔を見せた。
そうして次に、道中はベーコン巻を箸で摘むと、手を下に沿え、僕の前に突き出してきた。
その摘んでいる箸は、道中が口を付けた箸である。
その事に気付くと、僕は狼狽えた。
「いや、やっぱりいいよ」
「はい、あ〜ん」
僕の言葉が耳に入らない様で、道中が今にも僕の口の中に、ベーコン巻を突っ込もうとしている。
「あ〜ん(パクッ)」
仕方ないので、僕は突き出せれたベーコン巻にパクついた。
「おいしい?」
「(コクコクコク)」
尋ねてきた道中に、僕は首を縦に振って答えた。
「良かった・・・」
心底、嬉しいそうにしている道中が、別のおかずを摘むと、自分の口の中に入れた。
”えっ!”
僕は、道中の行為に驚いた。
僕は、道中が口に含んだ箸を口に含み。
今度は、僕が口を含んだ箸を、道中に口を含んだ。
”僕は、道中と間接キスをして、しかも道中も、僕と間接キスをした。
しかし、それ以前に、僕は元男と間接キスをしたんだよな・・・”
僕は先ほどの行為に固まってしまった。
でも、その当の道中は平然として、食事を続けている。
道中は、自分がした事を理解してないのか・・・?
「(ニヤニヤニヤ)」
妙な気配を感じて、その方向を見ていると、今までの経緯を見ていた池野が、ニヤニヤしていた。
どうやら、道中が意識してない行為の意味を、理解しているみたいだ。
しかし、僕はそれ所では無かった。
”僕は、美少女と間接キスをして喜んで良いのやら?
元男と間接キスをしたのを、悲しんで良いのやら?”
とうしたら良いのか分からなかった。