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最終話 僕だけの女の子

今回で本編は終了します。

 「はあ、はあ、はあ」



 あれから学校中、美咲の事を探し回った。


 校舎裏、図書室、屋上など。


 考えられる所を、探し回った。



 「はあ、はあ、見つからないなあ・・・」



 しかし、一向に見つからない。


 もうすぐ、昼休みが終わろうとしている。

まさか、昼の授業をサボるつもりなのか?


 たまたま出た、校舎のグラウンド側で辺りを見渡す。


 すると、グラウンドの隅に、木が何本か生い茂った箇所があり。

そこは、明らかに視界が悪く、周囲から中が見えない。


 僕は、確信が無いが、居ても立っても居られず。

上履きのまま、グラウンドに駆け出した。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「・・・ぐす」



 茂みに近づくと、微かに誰かが泣く声が聞こえる。


 それに気付くと、僕は足を早めた。



 「ぐすん、ぐすん・・・」



 茂みに入ると、中には、大きな石に座って泣いている美咲がいた。


 傍らには、包まれたままの弁当箱があった。



 「えっ!」



 気配に気付き、美咲が僕を見る。


 美咲の顔は、涙に濡れていたけど。

不謹慎だが、その泣き顔すら、とても美しく見える。



 ”バッ!”



 美咲が僕を見ると、弁当箱を置いたまま立ち上がり、走り出そうとしていた。


 僕はそれを見るとダッシュで駆け出し、美咲を背後から捕まえた。



 「ちょっと待って、美咲!」


 ”ビクッ!”



 普段、名字で呼んで僕が、名前で呼ぶのに驚いた美咲が、立ち止まった。




 「ごめんね、僕がハッキリしないから、美咲を傷つけてしまって」


 「・・・良いのよ、優一くん」


 「でも僕は、美咲に言わないといけない事があるんだ」




 そう言って、一回、深呼吸をすると。



 「美咲は、女の子なんだよ」



 僕は、美咲の耳元でハッキリと言った。



 「美咲の、この匂いも・・・」



 そう言って僕は、美咲の首筋に鼻を近づけ、匂いを嗅いだ。



 「この髪も・・・」



 美咲の体に抱き付いていた右手を緩めると、その手で美咲の髪に指を通す。



 「この肌も・・・」



 次に右手で、美咲の滑らかな右の頬を撫でた。




 「この柔らかい体も、誰がどう見ても女の子だよ!」




 頬を撫でた手で、もう一度美咲の体を抱き締めた。



 「あっ・・・」



 僕が美咲の体を、思いきり抱き締めると、小さな溜め息を漏らした。


 それから、抱き締めた腕を解くと、美咲の両肩を持って、こちらを振り向かせた。



 「美咲、あの時の返事がまだだったね」


 「うん」



 僕は、一度、深呼吸をすると、それから口を開いた。



 「美咲、僕も好きだ!

だから、僕からも付き合ってほしい、恋人になりたいんだ!」


 「優一くん、嬉しいよ・・・」



 そう言うと、美咲は再び泣き出した。


 しかし、その涙は喜びに(あふ)れている。


 僕は、再び泣き出した美咲を、まだ抱き締めた。


 そうして、抱き締めながら、背中を優しく擦ってやった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 それから、しばらく背中を擦っていた僕は、おもむろに美咲の顔を見た・・・。


 すると、美咲は、目を閉じていて、唇を軽く突き出している。


 いくら鈍い僕でも、美咲が何をねだっているのか位、分かる。


 僕は、自分の唇を美咲の唇に近づけていき・・・、そして密着させた。



 ・・・・・・



 そうして、柔らかな美咲の唇をしばらくの間、感じた後、ユックリと離して行く。



 それから改めて美咲を見ると、美咲は頬を赤らめながら、恥ずかしそうに僕を見ている。



 「優一くんとキスしちゃった・・・」


 「うん・・・」



 二人がそんな事を言い合っていると。



 ”キ〜ンコ〜ン、カ〜ンコ〜ン”



 校舎から、午後の授業が始まる、鐘が聞こえてきた。



 「あ〜、間に合わないか・・・」


 「優一くん、ごめんね」


 「ううん、美咲の所為(せい)じゃないよ」



 僕は、傍らの石の上に乗っている弁当箱を見ると。



 「ねえ、昼、食べてないでしょ?」


 「・・・うん」


 「どうせ間に合わないから、ここでサボらない?

僕が、美咲に食べさせるよ。

いつも、美咲が僕にオカズを上げてたから、お返しに」


 「もお、優一くんたら〜」


 「でも、ここにしばらく一緒にいない?」



 僕がそう言うと、美咲が恥ずかしそうに(うなず)いた。



 「ねえ美咲」


 「優一くん、何?」


 「これから、ずっと美咲は僕の物なんだよね」


 「うん、いつまでも、私は優一くんの物だよ」



 僕は、その言葉を聞いて、心の底からの歓喜に打ち震えていた。


 ”この綺麗で可愛く、お淑やかで優しくて。

甘い匂いの柔らかい、抱き心地の良い女の子が僕の物なんだ”


 そう思うと僕は、美咲を抱き締める腕に、力が入るのであった。







                               僕はノーマルだ!! 終わり



これで本編が終了しますが、番外編が、あと数話続きます。


番外編では、本編とは一転して、甘味が多い話になります。

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