第16話 どうして、そうなるの!
そして、連休が終わった翌日。
「ふあ〜っ」
連休ボケをした僕が、アクビをしながら登校していると。
「お〜い!」
道中が、こちらを向いて、小さく手を振っている。
それから、小走りに僕の方に来ると。
「おはよ〜、優一くん♪」
「ああ、おはよ」
道中は、ご機嫌な様子で、僕に挨拶をした。
最近、道中の笑顔にも慣れたとは言え、時々、その魅力に動揺する事がある。
今朝がそうである。
タダでさえ、元男とは言えど、美人の道中が輝く様な笑顔を見せると、当然そうなる。
「じゃあ、一緒にいこ」
「う、うん」
ご機嫌な、道中の言葉とは対照的に。
僕は、煮え切れない様な言葉を返したのだった。
・・・・・・
校門に差し掛かると。
「美咲、山成、おはよ!」
「瀬知、おはよ!」
「おはよ〜」
池野とが挨拶をしながら、合流した。
「池野」
「何?」
「どうして遊園地に行くのを、急にキャンセルしたんだ」
「ああ、あれね、急に親戚が来る事になって〜」
「急用ならしかたないが、言い出しペだからな・・・」
「ごめん、ごめん、この埋め合わせは今度するから〜」
遊園地に来るのをキャンセルした事に付いて、聞いてみた。
仮にも、言い出したのは池野だからな。
「それでさ〜、美咲、遊園地はどうだったのよ〜?」
「えっ!」
「二人で、行ったんでしょ、で・え・と」
「・・・」
デートと言う単語を聞いた途端、道中は赤くなった。
「ちょ、ちょっと、それは違うだろ!」
「で、どうだった、美咲」
僕の言葉は、無視ですか?
「う、うん、ここじゃあ、何だから、昼休みに良いかな・・・」
「よし、じゃあ、昼休みね」
僕の存在など無視して、そう言う事が、いつの間にか決まってしまった・・・。
・・・・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・・・・・・
昼休みになった。
相変わらず食堂で、道中の自覚しない天然な行動と、池野の茶々に振り回られていた。
そうして食事が済むと、渡り廊下脇の休憩所に行き、外に面したベンチに座った。
「それで、デートはどうだった?」
「えー、と」
「デートじゃないって!」
相変わらずデートと言う池野に、僕は抗議する。
「ハグした? キスした? それともそれ以上?」
「えっ!」
それを聞いた道中は、顔がまるでトマトの様に真っ赤になった。
何、それ? 何でそうなるの?
「ハグはしたなかな・・・」
「えっ(ニヤリ)」
「ちょっと、待てーー!」
道中の予想外の答えに、池野は好奇心全開の笑顔になり。
僕はと言うと、道中の答えに、思わず突っ込んでいた。
「えっと、遊園地に行く途中でバスに乗ったけど。
道が悪くて、石に乗り上げたらバランスを崩して、優一くんに・・・」
「ほうほう、それで気持ち良かった?」
「(こくり)」
道中は、真っ赤な顔のまま頷いた。
「だから、あれは事故だって・・・」
「それで、山成の方もどうだったの、美咲の感触は?」
「いや、道中は良い匂いがして、柔らかで抱き心地が・・・。
って、そうじゃなくてだな〜」
「はい、はい、結局、美咲の抱き心地が良かったんでしょ〜」
僕は、池野のペースに乗せられたおかげで、言わなくても良い余計な事を言って、墓穴を掘ってしまう。
・・・・・・
池野の質問で、僕は、かなり疲れてしまった。
しかし、池野は更に質問を続ける。
「それで、遊園地ではどうだったのよ?」
「うん、まず最初に、優一くんに、おねだりして一緒にメリーゴーランドに乗ったの」
「おねだりしたのね〜♪」
「な、何なんだよ、その顔は!」
道中の言葉を聞くと、池野は、僕に向かって嫌らしい笑いをした。
「だだ、二人で乗ったのだけなの?」
「・・・お姫様抱っこされたの」
「それは、違うーーー!」
「ひゅ〜、ひゅ〜」
更に、道中がトンでもない事を言うと、慌てて僕が否定するが。
しかし池野は、二人を冷やかし出した。
あれは、道中が着ているのがワンピースで、馬に跨がると不味い事になるので横座りで乗ったんだよ。
そしたら、メリーゴーランドが動くと後ろに倒れそうで危ないから、僕が後ろで支えていただけだろ!
それからも、池野は道中に色々質問するが。
池野は事実から少しずつズレた事を言うので、その度に、僕の精神は少しずつ削り取られていったのである。




