第15話 まるでデート?(後)
”はあ〜、疲れた”
バスを降りると、遊園地の入り口までの道を歩いている。
しかし僕は、遊園地まで来るバスで、スッカリ疲れてしまった。
バスが石に乗り上げる度に、道中に抱き付かれたからだ。
道中のいつもの甘い匂いと、頬に当たるサラサラの髪、それに柔らかい抱き心地。
それらを思い出すと、何だか恥ずかしくなってくる。
「〜〜♪」
一方、道中はと言えば。
若干、頬が赤いとは言え、何だか機嫌が良い様に見える。
”何んで、機嫌が良いのだろう?”
僕は、そんな道中を不思議に思いながらも、一緒に入り口に向かっていた。
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「わあ〜!」
遊園地に入ると、道中が中の雰囲気に驚きの声を上げた。
気分を高揚させる音楽に乗せて、様々な乗り物に動き。
それを見当てに人の波が、様々に流れていた。
そこには、非日常的な光景があった。
「あれ、道中は、こんな所に来た事は無いの?」
「う〜ん、小さい頃はあったけど。
ホルモン治療を始めた頃辺りから、色々あって、それから行って無いの」
「じゃあ、お互い、久しぶりに楽しもうか」
「うん♪」
そう言って、道中は心底嬉しそうな笑顔を見せた。
それを見た、僕も何だか嬉しくなった。
”・・・って、別に変な意味は無いからな”
道中の笑顔を見て、嬉しくなってしまった僕は。
それに気付くと、心の中でそう突っ込んでいた。
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「・・・ねえ、優一くん、一緒にあれに乗って欲しいんだけど、良いかな?」
そう言う、道中が指差した方向には。
「へっ・・・」
メリーゴーランドがあった。
「私・・・、あれに乗りたいけど。
一人で乗るのは恥ずかしいから、一緒に乗って欲しいの・・・」
「いやいや、二人で乗っても恥ずかしいと思うけど・・・」
「お願い・・・、ダメ?」
「うっ!」
道中は、両手を合わせながら、上目遣いで、僕にお願いをしてきた。
その甘える様な視線に、僕は”ドキッ!”とした。
「しょ、しょうがないなあ・・・」
「うん、ありがとう♡」
僕は、道中の甘える様な視線に、思わず了承してしまった。
「ねえ〜、早く行こう〜」
「はあ〜」
結局、僕は道中と一緒に、メリーゴーランドに乗る事になった。
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・・・・・・
それから、色んな乗り物に乗った後。
「ねえ、ねえ、今度はあれに乗ろう〜」
「・・・、ごくり」
散々、引っ張り廻された挙句、次に道中が指差したのは。
立ったまま乗るので恐怖心を煽る上、その状態で、背面2回転なんかをする。
この遊園地でも、目玉のジェットコースターだった。
・・・僕は、こう言う絶叫系が苦手であった。
「さあ、乗ろう♪」
「ちょ、チョット待った〜」
僕を引き摺りながら、道中は、コースターの方に向かった。
・・・・・・
「きゃあ〜♪」
「うぎゃああああああっ」
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「あ〜、面白かったねえ」
「はははっ・・・」
ジェットコースターに乗った後、疲れたので、一旦、ベンチに座って休憩する事にした。
最初の、恥ずかしかった思いをしたメリーゴーランドから、いくつ乗ったのだろうか?
「(ニコニコニコ)」
ふと、横に座っている道中を見ると、とても明るく見える。
「道中」
「ん?」
「今日は、いつもと違って明るいね」
「うん、瀬知は来られなくなって残念だけど。
優一くんと一緒にいられるから、嬉しいんだよ」
そう言いながら、僕に、とてもまぶしい笑顔を見せた。
僕は、その笑顔を見て、落ち着かなくなってしまう。
「で、でも、いつもそうだと良いんじゃないか・・・」
「・・・うん、でも、それは、こんな場所で、特別な人と一緒にいるからだと思うよ」
「特別な人?」
「あわわ、べ、別に深い意味は無いのよ〜」
「そうか・・・」
慌てて、道中に言ってみると、意味深な事を返されたので尋ねてみるが。
逆に慌て出して、話をはぐらかされてしまった。
・・・・・・
そうやってしばらく、ベンチに座って休んでいたら。
「ねえ、優一くん。
もう大分休んだから、次の乗り物に乗ろうよ〜」
「ああ、もう少し休ませてえ〜」
「お願い、行こうよ〜」
道中は、甘える様な言い方で、僕におねだりしてきた。
もう少し休みたかったのだが、しかたがないので。
僕は、次の乗り物まで一緒に行く事にする。
僕は一日中、こんな調子で、道中に引っ張れたのであった。




