第1話 ある意味、憂鬱な朝
知らない方は、始めまして。
知っている方は、お久しぶりです。
わたくし、獅子丸と言う、なろうの底辺でチラシの裏を書いている者です。
それでは今作も、大した話でありませんが、お楽しみ頂けたら幸いです。
四月も後半に入ろうとしていた頃。
「ふう・・・」
そんな朝の登校時間、僕は溜め息を付きながら歩いていた。
僕の名前は、山成 優一。
入学したばかりの高校一年生である。
「ふう・・・」
歩きながら、再び溜め息を出す。
学校に着いてからの事を考えると、憂鬱だ。
別に、もう、いじめを受けているとか、そう言うのではない。
僕は、ヘタレで根性なしだけど、一応、誰とでもそれなりに付き合っているから、そう言う心配は無いのである。
では、なぜ憂鬱になっているかと言えば。
「お〜い、優一くん〜!」
向こうから、セーラー服を着た美少女が見えた。
彼女の名前は、道中 美咲と言う名前で。
僕と同じ一年で、しかも同じクラスである。
彼女は、僕を見ると小走りになって近づいて来る。
「どうしたの? 暗い顔してるよ」
僕に近づくと、そう言って、僕の顔を覗き込む様に見た。
僕の顔を覗き込む、彼女の顔を見て僕は慌てて、離れる。
「ななな、何でもないよ!」
彼女は、肩までの長さの髪をしており、顔は目鼻立ちのパッチリしている上、それらのパーツが小顔の中にバランス良く配置されており。
スタイルはスマートだが、ガリガリに痩せている訳でも無く。
出ている所は出ていて、女性らしい体型をしている。
そんな美少女に接近されて、僕は狼狽えてしまう。
「何か心配事があるのなら、私が相談に乗るからね」
そう言って、僕が安心するように微笑みかけてくれた。
その笑顔を見て、僕の胸が高鳴ってしまった。
そう、彼女が僕の憂鬱の原因であるのだ。
なに? 何で美少女に付きまとわれるのが憂鬱かって?
実は彼女は、元々からの女では無い。
何と、元男であるのだ。
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『がやがやがや』
学校付近になると、周囲が騒がしくなる。
僕が通う、私立美峰学園は、元男子校である。
昨今の少子化に抗しきれず共学化しようとしたけど、元男子校である為、女の子が敬遠してナカナカ集まらなかったのである。
そこで苦肉の策として、体と精神の性別が一致しない男子に対しての、優遇策を講じるにした。
対象とする生徒を女子として扱うと言う風に、校則から学校のシステムまで変更した。
それが功を奏し、何とか全国から生徒を集める事が出来た。
そうすると普通、通常の男子が来なくなると思われるけど。
この学校は、かなりの進学率を誇る名門校なので、そうなっても通常の男子が減ることは無かった。
しかし、それは逆に、今までの伝統をかなぐり捨てなければならない程、少子化が深刻と言う事だろう。
また、肉体と精神が一致しない人間に対して門戸を開くのも。
近年の、性的マイノリティの権利拡大の動きを、見据えた物と言う事らしい。
それに、肝心の性が一致しない男子達も、いざ普通の学校に行っても。
女子として扱うには、本物の女子が拒絶し、また、男子として扱うに訳にも行かない。
ある意味、厄介な存在として扱われる。
と言う訳で、そんな生徒も、この学校の存在は願ったり叶ったりであった。
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僕の通う学校は、そんな学校である。
だから、チラホラ見えるセーラー服を着た女子も、実は元男である。
しかし、それにも程度があり、外見が道中の様に、下手な女性よりも美少女と言うのもいれば。
マッチョがセーラー服を来ていると言う、出来れば想像したくない様なのもいる。
しかし、そんな想像したくない様なのは少なく、全体的に見れば、下手な女性よりも美形の方が多い。
やっぱり、こう言う学校に入れる親と言うのは、こんな事に理解がある場合が多いので。
小さい頃からホルモン療法などや、場合によっては性転換手術で、体つきから女性らしくなっている上。
本人も小さい頃から、女らしく、女らしくと言う事を心がけている為。
本物の女性よりも、女らしさにかける努力が凄いらしい。
それは、今、僕の隣で歩いている、道中を見れば分かる。
元男だとは、とても思えない程、全体的にホッソリしていて。
しかも胸と腰が大きく、腰は細い、どこをどう見ても女としか思えない体型で。
隣にいると風に乗って、甘くて良い匂いがしてくる。
これが男だったとは、とても信じられない。
僕は、いつもこの甘い匂いにクラクラしてしまうのだ。
僕は、彼女いない歴、年齢の筋金入りのモテない男である。
・・・自分で言って、虚しくなるなあ。
そんな僕が、小学低学年以降、初めて仲良くなった女の子が元男だとは・・・。
そんな事を考えると虚しくなって、溜め息が出てくる。
「ホントに、とうしたの? 優一くん」
そう言いながら、僕を心配そうに見詰める、道中。
僕を見詰める綺麗な瞳を見ていると、僕の胸は再び高鳴ってしまう。
「ほ、ほ、ホントに何でもないよ〜」
僕は、内心の動揺を悟られないかと、ヒヤヒヤしていた。