story.20 囚われた龍神族
村の者が全員囚われた。先ほどそう告げたリンリーに、リュウは動揺を隠せずに身を乗り出し、バンと強くテーブルを両手で叩く。
「嘘だろ!?長老も、モンファおじさんもシュンメイ兄も…みんなやられたっていうのかよ!?」
「長老は定例会で留守だったのよ。男たちもみんな狩りで出払っていた。村に残っていたのは女こどもだけだったの…きっとそこを狙われたんだわ…女たちが人質にとられて、みんな身動きが取れなくなったの…」
――――龍神族 火の一族には守らなければならない掟がある。それは『女こども、仲間を第一に考え、行動すべし』というもので、火の一族が他の龍神族の一族よりも仲間意識が強い一つの要因だった。
「…リュウのおじさんおばさんも、私を逃がすために捕まってしまったわ……ごめんなさい…」
「リンリーが謝ることじゃねーよ。お前だけでも無事で良かった」
「リュウ……」
「…でも、どうして魔王は龍神族の人達を捕えようと思ったのかな?」
ハルが頭の上に疑問符を浮かべながらそう言うと、リンリーは少し俯きながらその問いに返した。
「私にもよくわからないわ。だけど、魔王の手下たちは、龍の魔力を奪い取る、だとかなんとか…恐ろしいことを言っていたわ」
リンリーは震える拳をぎゅっと強く握りしめ、何かを決心したように強い眼差しでリュウを見つめた。そして少ない手荷物の中から、丸い金色の水晶玉のようなものを取り出した。
それを見た瞬間、リュウは目を丸くして叫ぶ。
「龍玉…!?」
「な、なんでリンリーちゃんが…!?」
「リュウ、貴方が村を出る時に餞別として渡したのはレプリカよ。まぁ、あれも高価な宝石だったけれど……本物を渡すわけないじゃない。どうせすぐに食べ物に目が眩んで手放すに決まってるんだから」
「「「(ご名答)」」」
「此処で貴方に出会えて良かったわ。……これは、私が持っていても意味がないもの。」
リンリーは眉を下げて少し切なそうな表情をした。しかしすぐにまた面をあげ、リュウに龍玉を差し出した。
「これを貴方に託すわ。お願い、私たちの家族を助けて。」
「……リンリー…」
リュウは力強く頷いてから、龍玉を手にした。
しかしリュウが龍玉に触れた瞬間、外から地鳴りのような唸り声と共に地面が強く左右に揺れた。ハルたちは驚いて思わず立ち上がる。
「な、なに!?」
「地震!?」
酒場中がパニックになる中、僧侶は窓から外を見つめて珍しく額に汗を浮かべながら呟いた。
「いや、違う…あれは……」
「僧侶くん、どうしよう!?揺れが止まらない…!」
「全員潰されたくなかったら外へ出ろ!!この揺れじゃ此処はもたねぇ!」
僧侶の叫び声に、次々と酒場にいた人々が慌てて外へ走り出て行く。ハルたちもお年寄りや小さな子どもを連れた女性を手伝いながら外へ避難する。
そして、信じられない光景を目の当たりにした。
「な、なに…あれ…」
細長い胴体、赤い毛、赤い鱗、鋭い牙と爪。エルシアはそれを見上げて、顔を青くしながら一歩後ずさった。
「なんで…こんなところにドラゴンがいるのよ…!?」




