story.19 宝玉の行方を追え
リュウの頭のたんこぶが収まってきた頃、一行は商人の町グリオンに到着した。
町の大通りは様々な物を売り買いする人々で賑わい、今まで人のいない森の中を通ってきたのも相まってハルは大きく感嘆の声を上げた。
「すごーい!!みんな見て見て、人がたくさんだよ!!」
「ハル、迷子にならないでよ」
エルシアが釘を刺すが、彼女は見たことのない露店の品々に夢中だった。その間、リュウはいそいそとスケッチブックを取り出して何やら描き出し始めた。エルシアはそれを覗きこみ、そして眉間に皺を寄せる。
「……何、それ」
「何って、宝玉だよ宝玉!」
「これのどこがよ」
エルシアはリュウの描いた宝玉『龍玉』のスケッチに酷評をつけたが、リュウは全く気にせずにスケッチを片手に聞き込み調査を開始してしまった。僧侶も露店を周りに行ったのか、いつの間にかその場にいなくなっていた。
「集団行動力ってものが微塵もないわね、このパーティ……」
「エルちゃーん!みてみて!」
興奮したようすでかけ戻ってきたハルは、手に綺麗な造花でできたブローチを持っていた。きらきらと光に反射して光るそれにエルシアは小さく首を傾げる。
「どうしたのよ、それ」
「向こうで配ってたの!お店の名前が入ってるから宣伝代わりなんだろうけど…可愛いから貰ってきたんだ~!はい、エルちゃんの分もあるよ!」
確かに造花のブローチは綺麗だったが、それ以上にハルがわざわざ自分の分のブローチまで取ってきてくれたことが嬉しくて、エルシアは小さく微笑んだ。
「あ…ありがと…」
「どういたしまして!……あれ?僧侶くんとリュウくんは?」
「リュウは謎のスケッチを片手に宝玉の手掛かりを探して聞き込み調査、僧侶は知らないわ」
「もー二人とも、勝手にうろちょろしたら迷子になっちゃうよ!」
「あいつらもハルには言われたくないと思うわよ」
自分のことは棚にあげるハルにエルシアが溜息をついていると、向こうから僧侶のドスのきいた声が聴こえてきた。
「おい。もう少しまけろっつってんだよ。」
「で、ですがお客様、これ以上は」
「まけろ。」
「ひぃい…!!い、命だけはぁ…!」
「何やってんの僧侶くん!?」
あろうことか店の人の胸倉をひっつかみ睨みをきかせてまけることを強要していた僧侶に、ハルの顔にたちまち縦線が入る。慌てて僧侶を回収し、ハルは腰に手を当てて強く言った。
「僧侶くん、だめだよ暴力は!」
「うるせぇな。どっかの大食らいのせいで食費が嵩張ってうちの家計は火の車なんだよ」
「…お母さん……」
「あぁ!?今なんつった」
「ぎゃー!!」
こめかみをぐりぐりと拳でえぐられて、ハルは悲鳴をあげた。エルシアはその一部始終をまたジト目で傍観しつつ、そう言えばリュウはどこにいったのかと辺りを見渡した。すると後ろで女の子の大きな声がし、ふとそちらの方を向けば、聞き取り調査をしていたリュウに見知らぬ女の子が抱き着いているではないか。
驚いて固まるエルシアをよそに、彼女はリュウの背中に回した腕に力を込めて嬉しそうに笑いながら言う。
「リュウ!!やっぱりリュウだわ!!」
「あ……!?お前…リンリーか!?」
どうやらリュウの方はその女の子を知っているようで、露店巡りから戻ってきた僧侶も交えて酒場に入り、自己紹介をすることとなった。
「初めましてリュウのパーティの皆さん。私はリュウの幼馴染で、リンリーと言います。よろしく!」
女の子はリュウとは少し違う桃色の瞳にハル達を映し、長い黒髪を後ろで二つに結った三つ編みを揺らしながら頭を下げた。続いてハルも自分のこととエルシア、僧侶のことを紹介した。
するとリンリーはエルシアのことを見つめて、目を輝かせながら彼女の特徴的な尖った耳を触り始めた。
「すごーい!!わたし、エルフなんて初めて見たわ!本当に耳が尖っているのね!」
「ちょ…ちょっと!見せ物じゃないのよ」
「あ…ごめんなさい。今まであまり村の外に出たことがなくて、珍しくてつい…」
「…ま、まぁ…別に…いいけど……」
リンリーが申し訳なさげにいうと、エルシアは頬を染めつつ視線をそらしながらつぶやいた。続いてリュウがリンリーに訊ねる。
「なんでお前、村の外に出てんだ?一人前になるまでは外には出ねぇんじゃなかったのか?」
「………」
リュウの質問を聞いた途端、リンリーはそれまでの明るさが嘘のように俯き、黙り込んでしまった。ハルやエルシア、僧侶もふしぎに思って彼女を見つめる。
やがて何かを決心したかのようにリンリーは顔をあげて、リュウの目をまっすぐに見つめた。
「リュウ……落ち着いて聞いて欲しいの。」
「…?何かあったのか」
リンリーの様子にリュウも異変を感じているらしく、眉間に皺を寄せながら次の言葉を待つ。彼女は少し間を置き、そして告げた。
「龍谷村の皆が――――魔王の手下に連れて行かれたわ」
「…!?」
「え…!?」




