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女子高生がRPGの世界で生き残る方法  作者: 柚緒
クエスト『エルフの村を救え』
12/22

story.12 剣の加護

 アクティアの魔法によりエルシアやリュウと分断され、数メートル吹っ飛ばされたハルは、目の前の揺れる景色に驚いた。なんと、水の玉の中に閉じ込めれて浮いているではないか。息をしようともがくが、水泡が目の前に浮かぶだけで何もできない。



「(苦しい……息が、できない……!)」



 意識がだんだん遠のいていく。まだ、エルちゃんやエルフの人達のために何もできていないのに。



「(必ず宝玉を持って帰るって…僧侶くんやエルフの村の人達と約束したのに…!)」



 苦しみのあまり顔が歪む中、ハルは知らず知らずのうちに腰に提げた伝説の剣の柄に手をかけていた。そして強く握りしめ、祈るようにぎゅっと目を瞑る。



「(『伝説の剣』……どうして、あなたは私を『救世主』に選んだの?)」



 私は、本当になんにもできないただの高校生で。いつも僧侶くんに助けてもらってばかりで。今だって、一人では解決できずに、あなたに頼ろうとしている。



「(でも…それでも、私はエルちゃん達を助けたい。だからどうか、力を貸して!)」



 キン、と甲高い音が短く響く。そのすぐあとに剣の鍔にはめ込まれている紅色の宝玉が眩い光を放ち、ハルを閉じ込めていた水の膜を破り去った。重力のまま地面に落ちたハルは、勢いよく噎せ込んでから伝説の剣に視線を移した。



「……ありがとう」



 小さくそう言えば、紅い宝玉がまたきらきらと光った気がした。ハルはふらつきながらも立ち上がり、エルシアとリュウを探すべく踵を返した。







 激昂したリュウに、ルシファードは少し怯んだものの、すぐに口元を弧の字に描いて嘲笑った。そして剣を構えて畳みかける。その剣筋は見事なものだったが、リュウはそれを軽やかに交わしつつすぐに隙を見てルシファードの頬に重い拳を当てた。ルシファードはその衝撃で後ろに吹っ飛ばされ、木に背中を打ち付けた。



「エルの気持ちを踏みにじりやがって……ぜってー許さねー」

「やっぱり―――あなた、強いのね。」

「!!」



 すぐ後ろで声がして、リュウは驚きつつ振り返ろうとするが、また彼女の透き通った声が邪魔をする。



「あら、いいの?こっちを向いて。」

「な……」

「背中ががら空きよ?」

「しねぇぇぇ!!」



 リュウがアクティアに気を取られている隙にルシファードが気絶したままのエルシアに迫っており、その鋭い刃を彼女の上に振り上げていた。リュウは慌てて彼女を庇おうとしたが、アクティアの攻撃がそれを許さない。



「くそっ……!間に合わな……」



 その刹那―――――リュウの目の前で赤いマントが翻った。続けて刃と刃が交わる音。いきなり躍り出たその人物に、彼は目を丸くする。



「ごめんねリュウくん、はぐれちゃって……!」

「ハルちゃん!」


「……どうやって私の水の結界を……まさか……」



 アクティアが小さくぼやくが、ルシファードは小娘ごときに自慢の剣を止められて気を悪くしたのか、ぎりっと歯ぎしりした。リュウはそんな二人にはお構いなしに、嬉しげにハルに話しかける。



「ハルちゃん、剣使えたんだな!さすがは救世主さまだぜ!」

「いやいや、剣なんて使えないよ!でも、さっきから体がすごく軽くて……なんでもできるような気がするの」

「そいつは心強い」


「クソ……小娘がいきがりやがって……!」



 ハルはリュウと背中合わせになってそれぞれ剣と拳を構え直した。ちらりと横目で頭から血を流して気を失っているエルシアを見て、ハルは眉間に皺を寄せた。そして目の前のルシファードをまっすぐ睨む。



「リュウくんはあの水の魔法を使う女の人をお願い」

「了解っ!」



 リュウはアクティアめがけて駆けだして、そして彼女に殴りかかった。彼女はひらりとそれを避けたが、リュウの拳はそのまま勢いよく地面を割る。アクティアは少し離れたところに着地して、リュウもそれを追い掛けていった。



「へえ……嬢ちゃん、俺とサシで戦おうってのか?」



 じりじりと近寄ってくるルシファードに、ハルは剣の柄を強く握りしめながら額に汗を浮かべる。その時、ふと後ろに誰もいないことに気が付いた。確か先程まで後ろにはエルシアが倒れていたはず。なのに、誰もいなくなっている。


 ハルは次にルシファードの方を向いて、目を丸くしたあと、にやりと笑んでみせた。



「……何がおかしい?」

「私がサシで戦えるわけないじゃん」

「な……」

「ねえ。後ろ、気をつけた方がいいよ。」



 その言葉でルシファードは後ろを振り向いた。彼の瞳に、矢でこちらを狙うエルシアの姿が映る。その翠の瞳は強く輝いており、それがまた恐怖を煽った。



「女の子を怒らせたら――――怖いんだから。」


「や…やめろぉ……!」



 無数の矢が腰を抜かして尻餅をついてしまったルシファードを襲い、彼の服や布を地面に縫い付けた。エルシアは身動きが取れなくなってしまったルシファードにゆっくりと歩み寄り、冷たく見下ろす。



「ひ……ひぃ……!やめてくれ!命は…命だけは……!」

「宝玉を返しなさい。今すぐに」

「わ、わかった……!返す、返すから!ズボンのポケットに入ってる!」



 エルシアはエルフの瞳を手にし、光に翳す。そしてそれを胸にあてて、目を瞑った。



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