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悪玉の鬼退治  作者: 菜月真直
 後章 悪玉の鬼退治。 完結編。
20/34

四話、


「それで、またノコノコと僕のとこへ戻ってきたわけだね」

 再び遊馬の部屋。

 異世界拠点での仮住居はそれぞれ用意されているけれど、やはりこいつの部屋へと来てしまうのだ。樹木さんの注意とは関係なしに、遊馬と一緒に居たくなるのである。

 というか、他に友達がいなかった。

 まったくもって皆無である。

 遊馬のキッチンで食事中。

 こいつの作ってくれたラーメンを二人で啜っていた。異世界の未開拓地に行けば、インスタントラーメンさえ食べられないのでこれでも御馳走だった。一度の食事で水分と塩分、炭水化物を大量に摂れるから重宝する。

 しかし麺の量が凄まじい。

 およそ五キロ。バケツ一杯分程度の太麺を平らげる。

 小柄な体躯のどこに入るのか、フードファイターを目指しても充分に頂点を狙える逸材であるけれど、目指さないのだから燃費の悪い人間でしかない。

 こいつの金だから、なんでもいい。

 問題は、埋め合わせが大変だということだけだ。

「お前って燃費悪くないか」

「うーんどうだろう。だって太らないし、蜂鬼の神経毒からの回復が抜群に早かったのもこの備蓄燃料のおかげだもん。生体防御的には最強なんじゃないかな」

 たしかに、納得のいく見解。

 蜂鬼の毒を受けたにも関わらず、隔離病棟行きの必要がなかった。

 いまこうして大量の食糧を食い貯めしているのは、解毒に使ったエネルギーを取り戻すためと考えれば妥当である。

 ……隔離病棟。

 あの人、ナキリがいる場所。

「健太郎くんはどうするの? 僕はこれ食べたら用事があるから女王退治はしばらく手伝ってあげられないよ」

「どうするもなにも、どうしようか」

「ナキリ先輩に泣きつけば?」

「お前がやってくれ」

「僕じゃあ効かないよ、健太郎君がやるから意味があるんだってば」

 本当にそうだろうか。

 泣きつけば、彼女はぜんぶ教えてくれるだろうか。

 いやない、絶対ない。

 適当に話題を逸らして主導権をかっさらってくに決まっている。そして二度と蒸し返さないように、自然消滅を目論むのは目に見えていた。

「仕方ないでしょ?」

「……」

「だってもう女王に関する手がかりがナキリ先輩しかない。どうしたって先輩の口を割らせないとこれから犠牲者が増えていくに決まっている」

 それだけは許さない。

 多くの犠牲を払い、女王を捕獲するまでに至ったのに、みすみす被害を広げて、そのうえ逃すなんて許されるわけがないのだ。なんとかして殺す。退治しなければならない。

 女王はこの手で退治する。

「だからこそ、ナキリ先輩と仲良くする」

「……は?」

「いやでもなんでも、仲良くするんだよ」

「いや、いやいやおかしいだろそれ」

「おかしくない」

「おかしいおかしい、なんで仲良くしなきゃいけないんだよ。いいか、あの人はこの女王の件を絶対に自然消滅させるぞ。都合の悪いことはお口にチャックが基本だからな。そんな仲良くしてもボロは出さない」

「でも、やるしかない」

 遊馬はいつになく真剣だった。

 おれに火災のことを教えるとき、同じような目をしていた。それは覚悟というか決して揺れない信念のようなものを感じた。

「行く先は泥沼。そこから抜け出すためには嫌でも汚水に浸からなければならない。とっても嫌なことだろうけれど、人に笑われることかもしれないけれど、前に進まなきゃ目的地には永遠に到達できないんだ」

「遊馬、お前……」

「忘れちゃいけないのは、ナキリ先輩も充分に放火犯の射程範囲に入っていることだ。彼女が死ねば、本格的に身動きできなくなる。このまま蜂鬼は未開拓地へとトンズラ決める可能性がぐーんと上がるんだ」

「……、………」

「ならそうなる前に手を打たないと。いやなことでもやるんだ!」

 ぐうの音も出ないほど正論だ。

 たしかに、彼女から逃げていてはいつまでたっても進まない。和解まではしなくても、近くで様子を見る程度には努力する必要はあるのだ。

 出来ることから、やらなきゃならん。

「悪かった、おれ頑張るよ」

「話しがまとまったところで朗報です」

「朗報?」

「うん、これでナキリ先輩に違和感なく近づけるよ」

 遊馬は小さな紙を差し出す。

 入院催促書だった。

 そこには、『最重要参考人として隔離保護』と書かれている。

「じゃじゃーん、最重要参考人として隔離病棟に移されることが決まりました。ナキリ先輩と相部屋だよ、やったね!」

「なんてこった」

「ちなみに健太郎くんは護衛だよ、自然でしょ?」

「いいのかおれで。女の子ばっかりだろ」

「ハーレム? ハーレム!」

 おれの話は聞いちゃいない。

 それよりも、運命を感じずにはいられない。

 こうして何度離れてもまた出会うようになるなんて。

 運命のイタズラとはよく彼女に会わなきゃいけなくなった。



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