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妖の子育て日記  作者: 雪りんご。
序章 
1/2

赤子

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」


今日も赤子の大きな泣き声が屋敷中に響き渡る。


「うわぁぁぁぁぁぁん!!

 ってぇ、泣きたいのはこっちだボケ―――!!」

大きな男が赤子を投げつけようとする。


「って、炎龍!!やめなさい!!」

一人の女に一瞬で氷付けにされる炎龍。

「ごめんなさいね、こんな野蛮な奴ばっかで」

赤子をあやす女。


「野蛮で悪かったな!!」

「あら。もう、氷をとかしちゃったの?

 もう少しあそこで反省してればいいのに」

嫌味をこめて言う女。


「生憎だな。俺の性質は、『燃やす』ってのを忘れたか!!」

(うざいわね…こいつ)

心底うざそうなのを顔にだす女。


「だいたい…砂雪!お前、世話できんのなら最初からしやがれ!!」

「あら?してもいいわよって前も言ったじゃない。

 ―――――ただ、そのかわりに家事を全部やってね」

「断る!!」

「そう、ならこの子の世話をして」

ばっさりと切る砂雪。


「そう言ってやるな、砂雪」

部屋の奥で静かに座す大きな白銀の髪の狼(?)。

「氷狼様、ならアナタがみてくださいな。

 私とて忙しいのですよ?」

「砂雪も知っておろう。ワシは前回その赤子に…」

「…泣かれていましたね、そういえば…」

ばつが悪そうに視線を逸らす砂雪。


「ならせめて、この子に真名を付けてあげてくださいな」

「ワシに、この赤子の真名をつけろ…と?」

「えぇ」

氷狼の問いに微笑み返す砂雪。


「そうじゃな…」

真剣に考え込む氷狼。


「そういえば」

今まで黙っていた炎龍が、おもむろに口を開く。


「なんじゃ?」

「城下で聞いたんだが…」

歯切れの悪い炎龍。

「珍しいわね、アナタが言葉を選んでいるなんて。

 槍でも降ってくるじゃないかしら」

茶化す砂雪に対して、真剣な眼差しの炎龍。

どうやらただごとではないようだ。


肩をすくめ、おとなしく聞く体制に入る砂雪をみて話し始める炎龍。


「城下のはずれで、一人の赤子が生まれたんだとよ」


(至って普通の話ね…)

「その赤子はなんでも、生まれた瞬間から胸のところに片翼の翼に鎖が巻きついた刺青…みたいなのがあったんだとさ」

(片翼の翼…)

(鎖が巻き付いている…)

砂雪と氷狼が見る先にはあの赤子。


「って、城下のはずれって、ここじゃないの!!」

「瞬の話そのままではないか」


「だぅ?」

振り返る赤子。

その胸には、炎龍の話にあった片翼の翼に鎖が巻きついた刺青。

「…チッ、ばれたか」

そう言い残すと、炎龍は全力疾走で、部屋をあとにした。


「逃げたわね、炎龍…。あとで、憶えておきなさいよ…」

砂雪を中心に、ブリザードが起こる。


「さて、氷狼様。そろそろこの子に名前をつけてあげてくださいな。 

 幸せがくるような…そんな名前を…」

「そうじゃな…」

より一層真剣に、考え込む氷狼。


永世(えいせい)…でどうじゃろうか?」

「永世…ですか?」

頷く氷狼。


「この世に永遠はないが、この時代だけでも…。

 一瞬だが、その一瞬だけでも幸せが来るように…。そんな意をこめて」

「永世…いい名前ですね。―――――――さぁ、永世。今からアナタの真名は、永世よ」

砂雪の言葉に、元気な返事を返す永世。

「だぅ!!」


こうして、妖たちによる子育ての生活が始まった…

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