15.最強なのは天然兄弟
ジークとメイは、花壇のそばのベンチに並んで座っていた。
春の風がやさしく吹き、ふたりの距離はほんの少しずつ近づいている。
その背後――中庭に面した廊下を、イチとニーがのんびり歩いていた。
「……でさ、またやられたんだよ。
今朝の報告書、全部真っ白。」
「えー、また? それ、メイちゃんの漂白魔法?」
「うん。たぶん、くしゃみした拍子に暴発したっぽい。
ジーク殿がいなかったから、誰も止められなかったんだよね。」
「やっぱりジーク殿がいないとダメなんだなぁ。
あのふたり、相性いいよね。」
「うん。っていうか、ジーク殿、絶対メイちゃんのこと好きでしょ。」
「だよね。あの目線、完全に“守りたいこの笑顔”って感じだったもん。」
「うんうん。あれはもう、恋だよ恋。」
「……あ、でも本人たちには内緒ね?」
「もちろん。気づいてないふりが一番効くから。」
ふたりはそのまま、何も気づかずに廊下の奥へと歩き去っていった。
中庭のベンチでは、ジークとメイが固まっていた。
「……聞こえてた?」
「……ばっちり。」
「……俺、そんな目してた?」
「……うん。でも、ちょっと嬉しかった。」
ふたりは、そっと目を合わせて微笑んだ。
「……あれ、聞こえてるよね?」
ナナ姉が、ひょいと柱の陰から顔を出す。
「……完全に聞こえてますね……!」
アインが顔を青ざめさせていた。
「イチとニー、あれ絶対気づいてないよね?」
「ええ、あの感じは確信犯じゃなくて、
ただの“素でやらかしてる”やつです……!」
「……あの子たち、天然すぎて逆に最強ね。」
「まずい……! ジーク殿とメイ様に、あんな直球な会話が……!」
アインが慌てて飛び出そうとするのを、ナナ姉がひょいと袖をつかんで止めた。
「もう遅いわよ。
ほら、あのふたり――手、つないでる。」
「……っ!」
アインがそっと覗くと、
ジークとメイが、照れくさそうに手を重ねていた。
「……ああ……」
アインはその場にへたり込み、天を仰いだ。
「……また弟たちが、知らぬ間に一歩進んでしまった……」
ナナ姉はにっこり笑って、アインの肩をぽんぽんと叩いた。
「ふふ、でもよかったじゃない。
“愛”って、時に天然の風に乗って届くものなのよ。」
「……風、強すぎます……」
「……奇跡だな。」
王が窓の外を見ながらつぶやいた。
「イチとニーの天然が、ここまで役に立つとは。」
「ふふ、あの子たち、やるときはやるのよ。」
王妃が微笑む。
「……で、ナナの重婚は?」
「却下だ。」
「即答ね。」
「当然だ。」
王は深く息を吐き、空を見上げた。
「……まあ、これで少しは静かになるか。」
「そうね。
でも、“家族”って、そう簡単に静かにはならないものよ?」
「……それもそうだな。」
王は、どこか嬉しそうに笑った。




