四話 決断
目の前に広がる、見たくもない光景。
カイナが騎士たちに取り押さえられている。
やめろ。カイナに触るな。
なんだよ、この鎖……全力で引きちぎろうとしても壊れない。
なんでだよ
カイナが処刑台に押さえつけられる。
頼む……奪わないでくれ。大切な家族なんだ。
やめてくれ……。
「お兄ちゃん」
気のせいかもしれない、この距離から聞こえないはずなのに、そうはっきりと聞こえたきがした。
皇帝の代役が大きく手を挙げ、振り下ろした。
その瞬間、世界が崩れ落ちた気がした。
「あぁああぁあぁ……!」
拳を握り、何度も地面を殴る。
肉が裂けても、血が流れても、それでも殴り続けた。
見かねた騎士が俺に手刀を放つ。
意識が遠のく。
誰か……カイナを……救ってくれよ……。
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重い瞼がゆっくり開く。
石でできた天井が目に入ってきた。
体に力が入らない。
目を開けるだけで涙が溢れ、同時に、自分でも信じられないほどの怒りが湧いてくる。
「……許さない」
唇を強く噛み締めた。
「皇帝も、その血族も、関係者も……いや、考えるのもめんどくさい。帝国ごと消す」
今すぐにでも殺しに向かいたい。
だが、実力が足りない。
力だ。
圧倒的な力が欲しい。
どうする?
魔物を狩り続ける。
殺して、殺して、殺しまくって、誰にも届かないほどの力を手に入れる。
「……ははははは」
やるしかない。
やらなきゃダメだ。
見ていろ、帝国。
お前らの喉元に、必ず噛みついてやる。
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朝、騎士が迎えにきた。
「ほら、出てこい。釈放だ」
へぇ……随分と早く出してくれるんだな。
「ありがとよ」
次に会う時は、敵としてだろうがな。
よし。まずはこの帝国から抜け出すか。
復讐する国にいては都合が悪い。
だが、簡単にこの国から出してくれるとは思えない。
俺じゃなくカイナを処刑したということは、まだ“使える道具”と判断されたんだろう。
早く逃げなければ。
家に帰って、必要な金と最低限の道具だけでも回収しないとな。
そう思いながら歩き出す。
懐かしいと思ってしまう自分が、少しだけ腹立たしい。
木のドアを開ける。
「チッ……」
荒らされている室内。
家具は壊され、食器が散らばり、生活の痕跡が踏みにじられている。
「ここを荒らした償いも……いつかさせなきゃな」
金を回収し、バッグに詰められるだけ詰めた。
木のドアを開けながら、静かに呟く。
「じゃあな。またこの家にくる日は……帝国が地図からなくなってる時だな」
固く決心したように、歩き出す。
次に考えるのは移動方法だ。
一番安全なルートはカルヤ国に向かう道だろう。
だが、あそこは開けすぎている。
もし追っ手が来るとすれば、あそこでやり合うのは不利だ。
ならどうするか。
まだ整備されていない黒の森を突っ切るしか方法はなさそうだ。
だが、あそこは危険すぎる。
……いや、考えるまでもない。
安全なルートから行くしかない。
わざわざ見つからないように、人より怖い魔物相手に時間を使っていられるか。
方向性は決まった。
「よし、行くか」
楽しんでください




