一話 護衛依頼
「指名依頼?」
受付嬢がとんでもないことを言いやがった。
指名依頼なんかやりたくない。めんどくさいし、長期の場合が多いからな。
「断る。やりたくないし、時間がない」
受付嬢が困った顔でこちらを見てきた。
「実は……」
最悪だ。この指名依頼が皇帝直々のものだなんて……どうするか。
「わかった、引き受けよう」
皇帝からの指名依頼を蹴るなんて、どうなるかわからないことをやるつもりはない。
「依頼の詳細は?」
皇帝直々だ。S級の依頼だろう。
「皇子殿下の護衛です」
は?
「ほんとに言ってんのか、その依頼」
なぜ本来ならA級に任せる依頼を俺に?
気になるが、今は後回しだ。
「いつだ?」
せめて数日は欲しいが。
「明日ですね」
はぁ……なんでだよ。
今から準備して、カイナにも言わなきゃだな。
「わかったよ」
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小さな家のドアを開ける。
「ただいま」
そう言った瞬間、横の部屋からぴょこっと顔を出してきた。
「おかえり、お兄ちゃん。ちょっと遅かったね」
「あぁ、ごめんな。ちょっとギルドの人と話してて遅くなった」
ニコッとした顔をこちらに向けて。
「大丈夫だよ。ご飯できてるから食べよう」
あぁ、かわいいな。
「すぐに行く。ちょっと待っててくれ」
さて、護衛任務について説明しなきゃな……。
「いただきます」
美味しそうだな。カラッと揚がったものをゆっくり口に運ぶ。美味いな。
「すごく美味しい」
誇ったような顔をするカイナ。
「そういえば、お兄ちゃん。ギルドで何話してたの?」
うっ……言わなければならないな。
「実はな、護衛の指名依頼が来てな。しばらく帰れないんだ」
カイナが少し落ち込んだ顔をしている。
うぅ……胸のあたりがチクチクする。
「わかった。なら、お利口にお留守番するね」
「本当にごめんな」
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朝早く、まだ人があまり起きてない時間に俺は起きた。
「急な依頼だったからな……色々買い揃えなきゃな」
支度をある程度して、静かにドアを開ける。
「行ってきます」
さて、まずは回復薬を買いに行かなければな。
今の時間にやってるところとなると……あそこだな。
しばらく歩いたのち、少し古い木製の店に着いた。
「ばあさん、回復薬買いに来た」
カウンターにいる婆さんに声をかけた。
「ヴェダかい。どのくらいのが欲しいんだい?」
護衛依頼だからな。そんな大きな戦闘はないだろう。
「中級の回復薬を3つくれ」
ばあさんは少し驚いた顔をした。
「中級だけでいいのかい?」
いつも最上を1つは買うのに、今回買わないからってことか。
「あぁ、大丈夫だ。今回はそんな危険な依頼じゃないはずだからな」
ばあさんは納得したように頷き、
「そうかい。なら代金は金貨3枚だ」
やっぱりポーションは高いな。
もうちょい安くしてくれてもいいのに。
「ありがとな」
そう言いながら店のドアを開けた。
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集合場所は北側の門か。随分と珍しいところに集合させるな。
おっと、見えてきた。
「ここだな」
白と金色の目立つ鎧ですぐにわかったが……変だな。
護衛にしては人数が多い。皇子だからか?
「そこの冒険者、何をしている」
なんだこいつ。やけに威圧的だな。
「指名依頼をもらった冒険者なのだが」
騎士は怪しんだ目でこちらを見てくる。
「冒険者証を見せろ」
こいつ感じ悪いな、まったく。
「これでいいか?」
俺はポケットから冒険者証を出した。
「あぁ、問題はないな」
さて、これ以上絡まれる前に行かなきゃな。
「だが、こんなガキがS級だとは……ギルドも落ちたものだな」
自然に足が止まった。
こいつ舐めてるな。
自分と相手の力量差もわからんのか。
俺の中で苛立ちが積もっていく。
「問題がないのなら通らせてもらう」
気分が悪くなる。なんでこんな面倒なやつに……。
「早く退いてもらえないか。通行の邪魔だ」
こいつ、まじでなんなんだ。
「貴様が退けば良いのではないのかな」
あぁ、めんどくさい。俺は一歩踏み出し――
「邪魔って言ってんだろ」
魔力を少し解放しながら、低く殺気を込めた声。
それにより騎士は顔面蒼白で震えている。騎士は一歩下がってくれた。
「ありがとな。退いてくれて」
はぁ……疲れた。なんであんなん相手しなきゃならないんだよ。
ふぅ、依頼の細かいところまで聞きにいくか。
「すいません、依頼の詳細を聞きにきました」
俺は馬に乗った偉そうなじいさんに声をかけた。
「ん? あぁ、今から説明しようって……ヴェダだったのか」
なんだ、どこかで見たことあると思ったらザレフじゃないか。
「久しぶりだなザレフ。亜龍討伐作戦以来か」
亜龍討伐作戦……思い出したくもないほどにめんどくさい依頼だったのを覚えてる。
「そうだな。それで説明を……って、指名依頼で聞いたんじゃないのか?」
このじいさん、知らないふりしやがって。
「そんなんじゃないのはわかるだろ。騎士の量が異常だ。何かあったか?」
渋ってるな、この顔は。
「はぁ……まぁいいか。率直に言おう。龍が出た。しかも亜龍じゃなく、本物の」
「帰る」
「もう無理だぞ」
くそジジイが。
初投稿です
楽しんで読んでくださればありがたいです




