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叡智の魔導書(タブレット)に転生したけど静かに暮らしたい  作者: ペロロンチーノ


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子供達と機能確認

翌日の昼過ぎ。


ミーナの家の前が、やけに騒がしかった。


「ほんとに、ここにあるの?」

「光る板って、なにそれ」

「魔道具なんでしょ?」


外から聞こえてくる、子供たちの声。

どうやら噂は、思った以上に早く広まったらしい。


ミーナは少し困った顔で、扉の方を見る。


「……見に来ちゃったみたいだね」


それは仕方ない、

昨日、村の中央であれだけ目立てば当然だ。

好奇心旺盛な子供たちなら、無理もないだろう。


ほどなくして、扉がノックされる。


「ミーナー?」

「魔道具みせてー」


母親が対応し、数人の子供たちが顔を覗かせた。

年はミーナと同じくらいか、少し上。


好奇心と警戒が、入り混じった目。


「……これ?」


一人の少年が、俺を指さす。


「ほんとに、文字が出るの?」

「触ってもいい?」


母親は一瞬迷い、それから俺を見る。


『だいじょうぶです』


『こわくありません』


その文字を見て、子供たちの目が一気に輝いた。


「うわっ!」

「ほんとだ!」

「なにそれ、すげぇ!」


子供たちのテンションが一気に上がる。

一気に距離が縮まった。

さっきまでの警戒は、もうない。


ミーナは、少し誇らしげだ。


「この板さんね」

「道も教えてくれるんだよ」


「えー!」

「便利なんだね!」


そんな中、

少年の一人が、身を乗り出す。


「これ、他にもなにかできることあるの?」


……来た。


一番大事で、一番困る質問だ。


今のレベルでは全部は無理だし、あんまり期待させすぎるのもよくない。

今の自分の中で、できることを、分かりやすく選ぶ。


『いまを、のこせます』


「今?」

「どういうこと?」


言葉で説明するより、見せたほうが早い。


『ためしても、いいですか』


子供たちは顔を見合わせてから、勢いよく頷いた。


「いい!」

「見たい!」


俺は意識を集中し、記録機能を起動する。


《記録モード 起動》


画面の端が、静かに点灯する。


「なにそれ」

「光ってる」


『いまの、ようすを、きろくしています』


よく分かっていない様子で、子供たちはじっと俺を見る。


『なにかうごいてください』


その言葉を聞いて、ミーナが小さく手を振った。


「……こう?」


その仕草、表情、少し照れた笑顔。

全部が、俺の中に保存されていく感覚。


数秒後、記録を停止。


《記録完了》


『みてください』


再生。


画面に映ったのは――

ほんの少し前の、ミーナ自身だった。


「……え?」


画面の中のミーナが、同じように手を振っている。


「え、え?」

「私……?」


「うわっ!」

「動いてる!」

「絵じゃないぞ!」


一気に騒ぎ出す子供たち。


「さっきのだ!」

「どうなってんのこれ!?」


『きろくして』


『また、だしました』


写真。

動画。


この世界には、まだ存在しない“残る映像”。


ミーナは、画面から目を離せずにいた。


「……これ」

「消えないの?」


『はい』


『けそうとしないかぎりずっと、のこります』


その言葉に、ミーナは少しだけ黙り込む。


「……じゃあ」

「お母さんの顔も、残せる?」


母親は驚いたようにこちらを見る。


『できます』


少し間があってから、なにか思うことがあったのか、母親は小さく笑った。


「……じゃあ、お願いしようかしら」


こうして俺は、次々と記録を取ることになった。


子供たちの笑顔。

変なポーズ。

転んで笑われた瞬間。


特別じゃない、村の一日。


けれど、確かに“今”だった時間。


《経験値+3》

《経験値+3》

《経験値+3》


……地味だが、確実に増えている。


役に立ったことが、ちゃんと形になる。


しばらくして、子供たちは満足したのか帰っていった。


「また来てもいい?」

「次は外も撮って!」


『いつでも』


静かになった部屋で、ミーナがぽつりと言う。


「板さん……」

「これ、すごいね!」


こんな映像でもこの世界では希少なものだ。

それで感謝されるのは素直に嬉しい。


すごい魔道具じゃなくてもいい。


ただ、助けてくれたこの子を残せるなら――

それで十分だ。


テーブルの上で、俺は静かに画面を光らせていた。

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