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叡智の魔導書(タブレット)に転生したけど静かに暮らしたい  作者: ペロロンチーノ


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初めてのユーザ登録

少女はしばらくの間、俺をじっと見つめていた。


森の中で、突然光る得体の知れない板を拾ったのだ。

警戒しない方がおかしい。


「……魔道具、なのかな」


そう呟きながら、俺を持つ手に力が入る。

どうやら捨てられることはなさそうだが――このままでは何も始まらない。


俺は必死に考えた。


喋れない。

音も出せない。


なら――文字だ。


ホーム画面から、メモアプリを起動する。

真っ白な画面。


意思を込めて、文字を打ち込んだ。

打ち込む文字が通じるかは分からない、それでも試すしかない。


『みえますか』


少女の目が、ぱっと見開かれた。


「……え?」


続けて文字を入力する。


『おどろかせてごめんなさい』

『あなたをたすけたい』


少女は俺を遠ざけながら、一歩後ずさりし、周囲を見回す。

誰かがいる様子はない。


「……この板が、喋ってる……?」


正確には喋ってない。

だが、伝わったなら十分だ。


少女は恐る恐る俺を見下ろし、小さく息を吸った。


「……あの、私……村に帰れなくなって……」


――当たりだ。


彼女の表情は、不安でいっぱいだった。

涙を必死に堪えているのがわかる。


迷子。

しかもこの森は、さっき翻訳した獣の声的にも安全とは言えない。

彼女からしたら怪しい魔道具でも、頼るしかないのだろう。



『なまえをおしえて』


『ミ、ミーナ……』


ミーナ。

まだ幼い。十歳前後といったところか。


『ミーナのむらまで、あんないできます』


「……ほんと?」


半信半疑。それでも、縋るような目。

どうやら翻訳は打ち込んだ文字に自動適応されるようで、問題なく通じている。


問題は――俺の機能だ。


簡易地図はあるが、

ユーザ登録がされていない。


今の俺は、誰の物でもない“野良タブレット”とでも言う存在。


その時、設定画面の端に小さな警告が表示された。


《案内機能の使用にはユーザ登録が必要です》


《登録方法:魔力の供給》


……やっぱり来たか。


『すこしだけ、まりょくをながしてください』


文字を見て、ミーナは戸惑う。


「ま、魔力……? いっぱいは、無理だよ?」


『すこしでいい』


『いたくない』


少し考えたあと、ミーナはこくりと頷いた。


俺にそっと手を置き、目を閉じる。


掌から、温かい何かが流れ込んできた。


――これが、魔力。


画面が淡く光る。


《ユーザ登録を確認》

《ユーザー名:ミーナ》

《魔力適性:低》


《地図機能 拡張中……》


「……わっ」


俺の画面に、森全体の地図が表示された。

簡易だった線が、道として繋がっていく。


さらに――


《目的地を設定してください》


俺は迷わず、文字を打つ。


『むらのなまえをおしえて』


『リーフ村……』


入力と同時に、地図の一角が光った。


《目的地:リーフ村》

《案内を開始します》


画面に矢印が表示され、進むべき方向が示される。


「……すごい……」


ミーナの声は、震えていた。


『このみちを、まっすぐ』


『あぶないときは、しらせます』


ミーナは俺をぎゅっと抱え直し、歩き出した。


その瞬間。


《経験値+20》


前よりも多くの経験値な貰えた。


役に立った。

ちゃんと、助けられている。


スローライフには程遠いが、

こんな幼い子を助けるのも悪くない。


迷子の少女を村へ送るだけ。

そう思っていた。


だが俺はまだ知らなかった。


この「最初のユーザー」が、

俺の異世界生活を大きく変える存在になることを。


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