ジーク・ホウデン
「――ッ!」
「……っ!」
打ち出されるように踏み込んだ二人は、各々の武器を振りかぶる。ジークの刀が大上段から振り下ろされ、それを身体をのけ反らせ、顎スレスレに躱す。その一瞬の隙を突き、すれ違いざまに銃弾をぶち込む。
「ぐっ……!」
始めての苦鳴。非殺傷弾の衝撃が、容赦なくジークを叩きつける。スライディングで攻撃を躱したノアは、そのまま立ち上がり旋回、照準を付けつつ発砲。身悶えする背中に容赦なく弾丸を浴びせる。
「……ぁが⁉」
遅れながらもギリギリで刀を割り込ませたジーク。が、防げたのは連射の内の二発のみ。残りは全て身体で受けた。めり込んだゴム弾を払い落して、飛び退ったノアの下へと疾駆。放たれる牽制を叩き落として懐へと。
「せぁぁぁあああ!」
「……っ!」
地面を伝い火花を上げる切先が、ノアの胸元へと迫る。迫って、
「――ッな⁉」
甲高い金属音が連続で響き、そして結果が訪れる。見れば、ノアの胸部を薙いだはずの刀身は、彼の靴裏で防がれ、逆に自身の腹部に銃口が押し付けられていた。
「……ふ、ふふ」
「……ツボに当てたつもりはないけど?」
そして、その痛みにすら歓喜するように、ジークは口角を上げる。怪訝そうにそれを見つめるノアはそのままバックステップ、ジークは刀を握り直す。
「これだ、お前は、『烏』はこうでなくては……!」
圧倒的なまでの暴力。一切の行動を許さない技術。まるで、先ほどまでとは打って変わったノアの戦い様は、もはや別人の領域だった。
歓喜に震えるジークを横目で見ながら、ノアはシリンダーのキャップを開け、弾を一発仕込んでおく。そうして、サイトの中心にジークを収める。
「そろそろ、決着だ」
「奇遇だね、僕も丁度そう思ったところだ」
ひとしきり興奮に浸ったジークは、その刀を機械鞘へと納刀。ノアも腰を落とし、たった一点だけを見つめる。
思えば、ここまで真剣に『七核』と戦うのは、初めてだったかもしれない。無論、『鷲』や『梟』、『鳰』との戦いが真剣でなかったということではない。ただ、これほど、何かを感じることは、初めてだった。
だからこそ、終わらせる。
剣気が、闘志が迸る。その瞬間、二人同時に飛び出す。
「ぉぉぉぉおおお‼」
「終わりだぁぁあ!」
刀が鳴り、銃が吠える。
迸った銀光。そして、それを塗りつぶす大爆発。
響き渡った轟音。そして、舞い上がる粉塵を切り裂くようにして、折れた刃が突き刺さった。
「……ごふッ」
捥がれた翼に目を見開いて、『鷹』のジークは地面に伏した。
◇◇◇
「馬鹿……な……」
「そういわれても、僕は困る」
跳躍から地面に降り立ったノアは、頽れるジークの横へと歩む。
「何故……何故俺は……」
一体、自分の何がいけなかったのか。どれが、何が敗因か、それだけが思考を埋め尽くす。そんな様子のジークに、ノアは一つだけ口にする。
「……僕は、負けられないんだ」
「……」
「――でも、ジーク。君も、強かった」
「……な」
目を見開いたジーク。この期に及んで戯言を、とでも思ったのだろうか、伝わらなかったかと肩を竦めたノアは、アテナに目線で指示を送る。
「お疲れ様です、師匠」
「ありがとう」
果てに突き刺さったジークの刀。ひと振り目のそれを彼の鞘へと納めてやる。それに、何を思ったのか、ジークが口を開いた。
「……『隼』は、本気でお前を殺すつもりだ」
「……案じてくれるのかい?」
「お前は、俺が倒す。簡単に死ぬな」
「な……」
思わず、硬直する。思いがけない好敵手の言葉に、ノアは頬を緩める。
「当然だよ」




