ルーシー・シャットアウト
武器は、他者の命を奪う。
銃は、その人の未来を穿ち砕く。
兵器は、望まぬ虐殺を生む。
それは紛れもない事実であり、拭えないそのものの特性。だが、それだけではないと両親は語った。
『銃は、確かに命を奪う物かもしれない。けれどねルーシー、それは使い方なの』
『私利私欲に己を堕とせば、それはただの殺戮兵器になる。だが、誰かの為に、誰かを守るために銃をとれば、それは誰かを救う武器になる』
ノブリスオブリージュとは少し違う。だがそれでも、帝国の民の為にと銃を作り続けた彼ら。そして、その道を示す為に、ソラリス制圧作戦へと従軍。そして散っていった。
ルーシーは、それを悲劇とは呼ばない。それが彼らの生き方で、せめてもの贖罪だということもわかっている。今の帝国は、確かに平和だ。だがそれは、偽りの平和。ただ他を拒絶した、閉鎖的な平和。それを、間違った形で変革しようとしている皇帝を、見過すわけにはいかない。
ルーシー個人にさほど力は無い。この細腕では数時間銃を構えただけで疲れ果ててしまう。だがそれでも、淑女たるもの弱音は上げない。
「『歌劇団』突入ですわ!」
◇◇◇
突如現れたた武装集団に、帝国兵は狼狽えない。流石、情報と配置、訓練が行き届いているとノアは敵ながら元鞘に関心する。その程度は知れたこと、問題はその先だ。
「現れたか、叛逆の徒ら」
部隊長らしき人物が、『歌劇団』を前に銃を向ける。だが、そこで情報と人員が異なることに気づく。
「……『烏』はどうした? 貴様らは――」
「撃ちますわよ――!」
その発言の一切合切を無視して、淑女はその引き金を引く。声の主の格好と、その声音に意表をつかれた男は寸刻遅れて身を躱す。
「くそ、撃ぇ! 躊躇うな!」
「「「「――――!」」」」
刻の声を発した兵士たちは、命令通り一切の躊躇なく発砲を開始する。
城の門前、帝国大通りを舞台に、帝国史初めての、反乱が始まった。
「師匠、出ますよ」
「――行くよ」
そして、アンタレスが一斉に飛び出した。
「なッ――⁉︎ 『烏』だ! 奴を近づけるな――!」
こちらに気づいた部隊長が、自身の銃をこちらに照準。部下も一斉にこちらを睨む。が、
「――そうはさせませんわ!」
『歌劇団』の一人がその隙を突き、敵の懐へと飛び込む。敵部隊は分散、そこを突っ切る――一瞬の躊躇、足を止めたノアに、ルーシーは叫ぶ。
「行ってくださいまし! 『秩序者達』‼︎」
「――ルーシー、死ぬんじゃねえぞ!」
弾丸渦巻く戦場を、アンタレスの五人は走る。城門を突破したノアは、そこで背後の足音が薄いことに気づく。見れば、ヴィルヘとドニが、その足を止めていた。
「……何か?」
「ノア、お前は姫様を取り戻せ」
「儂らはあの嬢ちゃんを加勢するさ」
轟く銃声を背中に、二人は残る三人を見つめる。それは、信頼と覚悟の、託す者の瞳。
「ヴィルヘ、ドニ爺、いいのか?」
「なに、老骨が出しゃばっちゃいかんと思ってな」
「ルーシーだけに任せるには荷が重いだろう」
おそらく、建前。否、ルーシーに関しては事実か。この場に敵が集まってる今が好機。この隙に『七核』全てを打倒して、皇帝の顔を拝みに行く。
「ほれ、突っ立っとらんで――行け、ノア」
また、立ち止まったノアの背中を押すように、ドニが言う。隣のアテナは、既に前を向いていた。そうしてようやく、彼らの覚悟を受け止めたノアは、言を交わさず前を向く。
「――必ず、インネを助けます」




