皇帝の勝算
「『梟』も落ちたか」
ただ、娯楽を愉しむように、届いた報告に耳を傾ける。目の前に磔にされた少女を臨みながら、薄気味悪い笑みを浮かべた。
「飛ぶ鳥落とす勢いとはこのことか。なあ、『隼』」
「くだらん戯言はよせ。それより、いいのか」
「駒の手数が少ない、と?」
「貴様の思惑などどうでもいい。だが、『烏』も一枚岩ではない」
罠とわかっていて尚、この場所へと向かっている、それは明白だ。『祈憶姫』を求めて、という点でもそうだが、彼ら『アンタレス』が何を成そうとしているのか、大方想像はつく。
「……警戒をしろ、そう言いたいか?」
片眉を上げて、訝し気に英雄を見やる皇帝。言外に、みなまで言うなと咎められる。しかしそれを受けても尚、『隼』はため息を吐くばかりだった。
「『祈憶姫』と石。その両方がなければ悲願は果たせまい。『烏』をどうしようとアレスの勝手だ。だが、奴が今どれほどの物か、もはや俺にもわからない」
「――鼠の調整は済んでいる。仮に貴様まで落ちることになろうと、余にはさして問題ではない」
「『鷹」は論外か」
「アレは『烏』以外見ていない。そこそこ使える駒だったが、それも計画が成れば用はない」
当人が聞いていればさぞ絶望しただろうと鼻を鳴らして、『英雄』はもう一度皇帝に進言する。
「計画はほぼ成っている。アレスは大人しくしていろ、奴は俺が片付ける」
「当然だ、貴様にそれ以上の価値はない。……『祈憶姫』これと同等よ」
磔にされた囚われの姫。天井から下がるその十字架を、顎で指した彼の皇帝は最後に一つ付け足して言う。
「もっとも、それもすぐ塗り替わる」




