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「……いつまで隠れているつもりだ」


 狙撃手、キーブス・ジャッジは獲物の愚鈍さにため息を吐く。彼は『烏』に一度敗北を喫している。様々な要因があった。場所、風向き、補助機器の開発の遅れ。だがそれを理由に言い逃れをする気はない。その時勝てなかったのなら、それは自身の実力が足りなかっただけのこと。


 だが、今回に至っては、少々勝手が違う。奇襲はした。が、それは当然のこと。皇帝に銃を向ける反逆の徒に、正々堂々は関係がない。任務が遂行できればそれでいい。それは、『烏』も重々承知のはず。こそこそ隠れたとしても、キーブスは待ち続ける。


 だというのに、一行に姿を見せず、捉えられるのは彼らの検知信号だけ。その索敵を行うはずだったドローンも、一機を残して全て落とされている。


(バット)の精度はそこまで高くはない……。『烏』、怖気づいたか」


 バイポッドで自立する狙撃銃とは別に、傍らの無線機で獲物の位置を探る。自動索敵などと謳ってはいるが、その実敵を検知するまではこうして手動で指示をする必要がある。

 仕組みはよくわかっていない。開発部からは旧国の遺物とだけ伝えられている。


 だが、そんな些細なことはどうでもいい。


 必要なのは、皇帝の正義を成すことだけ。


 キーブスはグリップを握る右手に力を籠める。


 スコープの先には立ち並ぶ建造物の群れ、その一角の商業区が映しだされている。大まかな場所は分かっている。彼らはそこから動けない。キーブスがいる屋上は、帝国が管理する役所の一つ。それも表向きは一貴族の所有する商会だ。


 先ほどこちらに移ってきた。『烏』には未だ視認されていない。次、姿を現した時、二丁の銃口がその頭蓋を吹き飛ばす。


 そう、完璧な勝利への道筋を立てていた時だった。


「――っ⁉」


 突如スコープの先で煙が上がる。爆音が立て続けに轟き、思わずスコープから片目を外した。


「なっ――!」


 目線の先、灰色の煙が一体を包み、遅れてそれがスモークだと理解する。だが――


「――バカめ、自分で居場所を晒してどうする――!」


 即座に照準、索敵を同時に開始し、煙が消えるのを待つ。しかし


「――⁉ バットの信号が……?」


 操作したはずの機械から、敵発見の信号はおろか、受信レベルが最低まで落ちていた。そこでやっと、粉塵の中にキラキラと反射する物質が混じっていることを確認する。


「チャフか……!」


 だが、それで終わる『梟』では決してない。その程度の小細工で、彼の照準は鈍らない。例えその一瞬で逃げおおせたとて、近くにいることは変わりない。落ち着いて、敵を探す。


「――っ!」


 そして、蒼い戦闘衣をスコープに捉え、キーブスはほくそ笑む。


 絶対必中の弾丸が、二点の間を切り裂いた。

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