表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/47

蠢いて

「――っ!」


 一体何機あるんだと、ノアは内心で咆哮する。頭上に浮かぶ奇妙な形状の機械。自動索敵飛翔機(バット)、ドニは”ドローン”と呼んでいたか。逃げ込んだ商業区に、飛翔用のプロペラを高速回転させ、そのセンサーをこちらに向けてくる。


 落としても落としても、まるで蟻のように次から次へとノアを捉えに来る。その癖、肝心のキーブス・ジャッジは狙撃ポイントからは動かない。おびき出し、仕留められる所で葬り去る算段。


『のう、『烏』。何故(アレス)の裁きから逃れようとする』

「どこだ、キーブス!」

『ふ……探してみろ。こちらは貴様を待っている』

「なっ――!」


 何処からか響く彼の声。しかし、次には霧となって消えてゆく。もはや、ノアに隠れることは許されなかった。


 かといって、迂闊に身をさらすわけにはいかない。周囲の索敵機は全て落としたはずだが、どこに潜んでいるか、どこでキーブスが見ているかわからない。そもそも、位置を特定できたとして、ノアには何ができる。


 ノアの装備は狙撃手を相手にするにはあまりに貧弱。そろそろ予備の弾薬も品切れに近い。ノアの一番の強みである近接戦闘が使えないとなると、もはや八方塞りもいいところだ。無線妨害、或いは、カウンタースナイプができる人員が必要。


「狙撃銃か……」


 ノアが得意とするのは近接戦闘、中距離射撃。だが、概ね全銃器を扱えるノアは、ある程度の距離であるならば狙撃も可能。少々、苦手な方向ではあるが故に、ヴィルヘの問いでは断ったが。だが、何をしようにも物資が足りない。一人で飛び出したはいいものの、結局ノアには助けが必要だ。


 一発、銃声を轟かせて、足元に落ちる機械を踏みつける。どうやら、向こうの辛抱はとうに切れたらしい。


「隊長……」


 望みの全てを彼に賭け、ノアは物陰から飛び出した。


 ◇◇◇


「はぁ……はぁ……」


 冷たい床を足裏に感じながら、いつ脱げたのかわからない素足をひたすらに動かして、インネはそこを彷徨っていた。


 どこを見ても、似たような景色。冷たい合成金属の床、淡い光を落とす照明。自分がどこにいるのか、どこを目指していたのか、もはやわからない。牢屋を抜けて、階段を上がったまではよかった。そこから、出口を探しているうちにすっかり迷子になってしまった。


 時間がない、もう、いつインネが消えたことが露見してもおかしくない。実は既に気づかれており、インネが泳がされているだけの可能性も十分にある。しかしどうあれ、一刻も早くここを抜けなければ――


「――どうした、『祈憶姫』」

「――ッ⁉」


 たったそれだけ、それだけのはずのに、背筋が凍り付くような気配を感じて、インネは慌てて振り向く。


「拘束が足りなかったようだな――『隼』」

「やっ――⁉」


 瞬間、背後から何者かに羽交い絞めにされ、身動きを奪われる。音もなく、気配もなく、それはインネを捕らえる。


「アレス、もういいだろう。アレに入れて置け」

「……そうだな。だが、その前にもう一度聞こう」

「……っ?」

「鍵はどこだ? 『祈憶姫』」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ