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第7話:黒い龍の身の上話

「先代さまは死んだよ。たぶん寿命だったんだと思う。僕に黒曜という名前を与えてくれて、巫女と共にこの国を守りなさいって言われたけど、詳しく聞く前に死んじゃったんだ」


「要は引継ぎも無しで先代の龍が亡くなってしまった、ということか」


「うん。僕、それからここでずっと待っていたけど、巫女にも会えなかった」


 長い間、この祠に訪れる人が居なかったことから察するにその間、巫女が山を訪れることも無かったのだろう。


「最初は見よう見まねで先代さまのやっていたことを僕もやってみようと思ったんだけど……その内にだんだん力が制御できなくなって、雨を降らせるつもりが嵐になって、嵐を止めようとしたら今度は日照りになって……」


「じゃあ何もしなきゃいいじゃねぇか。余計なことするからそんなことになるんだよ」


 辛辣な言い方で飛翔が口を挟んだ。黒曜は萎れた花のように体を丸めて萎縮する。


「僕もそう思ったけど、今度は力を使わないとどんどん体が苦しくなってきて。でも力を逃がそうしたら大地を揺らしてしまって……本当にごめんなさい」


 黒曜は頭を下げて丁寧に謝罪した。

 天候不良や災害が自然に起きたものではなく黒曜のせいだったということには驚いたが、黒曜は悪い存在ではなさそうだ。

 見た目は大きな龍だけどちゃんと話が通じるし、本来は伝承にあるように、この国を守護する神のような存在なのだろう。


「今はもう苦しくないの?」


 私の問いかけに、黒曜は縮こまっていた自分自身の体を伸ばして確認すると頷いた。


「うん、君が力を制御してくれたから。もう大丈夫。助けてくれてありがとう」


「そんなに特別なことをした覚えはないけど、苦しくないならよかった」


「……君の名前はなんていうの?」


「理央よ」


 黒曜は私の名を聞くと、うれしそうに尾をゆらゆらとさせた。


「理央……君が先代さまの言っていた龍の巫女なんだね」


「えぇ。正直、ここに来るまでまったく自信が無かったんだけど、どうやらそうだったみたい」


 いつの間にか暗雲が消えて、雲の切れ間から光が射していた。

 どうなることかと思ったけど、上手くいってよかった。


 力を制御できるようになったらしいし、これからは黒曜がこの国を守護してくれるだろう。

 私の役目も果たせたし、後は麓で待っているであろう翠蓮と合流して宮殿に帰るだけだ。


 ……そう思ってたんだけど。


「どうして黒曜が付いてくるの?」


「だって、理央が傍に居ないと力が制御できないし」


「そんなの聞いてないんだけど⁉」


 これはどういうことかと飛翔や青蘭の顔を見るが、彼らもそんなことはまったく知らなかったようだ。


「それに僕、理央と一緒に居たいんだもん。ね、いいでしょ?」


「そんな大きな龍が付いてきたら皆びっくりしちゃうから! 無理! 絶対無理!」


「じゃあ、龍の姿じゃなければいいんだね?」


 そう言って彼はくるりと一回転すると、褐色肌に金色の瞳を持つ黒髪の少年の姿になった。


「青蘭さま……どうしましょう?」


「龍の姿で付いてこられるよりは良いんじゃないか?」


 これは受け入れるしか無さそうだ。私たちはとりあえず彼を連れて山を下りることにした。

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