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罪龍の終わり  作者: Bar_RSW
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第一話〜豊龍の過去

松原 龍太の過去に登場しているダンサー龍は、実在するダンサーさんをモデルにしております。

同様に清水 豊の過去に登場している重要な言い回し「宇宙よりも遠い場所」は実在するアニメのタイトルの読み方のみをモデルとしています。

大学を中退しアルバイトも長続きしない生活。友達もいなければ両親とも仲が悪かった。中学高校で来なかった反抗期が来たのか、それとも別の原因なのか分からない。しかし、一人では何もできなかった松原 龍太が突如として反抗し始めた時は周りにいた人間の誰もが驚いた。

龍太は仲の良い友達がいなかったものの周りの人からは「龍」と呼ばれていた。周りの同級生も側にいた人も仲良くしようとしてくれている訳ではなかった。世にいう陰キャ側の人間は居てもいなくても変わらないのだ。だから適当にすぐ呼べるニックネームが存在したのだ。龍がパシリとして使われる時は毎回と言っていいほど悪口を言われていた。「死ね。」「消えろ。」「ゴミ。」なんて言うオーソドックスでシンプルな悪口はもう傷つかなくなっていた。自分が言われて一番つらかった言葉は、「生きている価値も存在している意味もない。龍はなんで生きているの?」という一言だった。これを言われた日から、いつか自殺しようと心に決めていた。もういつ自分が死んでも殺されても良いと思っていたから生活リズムも気にしていなかったせいか不眠症にもなっていた。

死にたかった。屋上に向かった。ここから下は天国?それとも地獄?東京の街の真ん中の高いマンションの一階から最上階はキラキラと輝いていた。そしてそこに落ちていく自分はもっと美しいのだろう。「落ちよう。」そう思った瞬間に、ふと大学1年生のときの思い出が蘇ってきた。


思い出〜自殺を食い止めたダンサー龍〜

「このTikToker知ってる?龍っていう人なんだ。」

誰かが話している。

「その龍っていう人、TikTokerって言うよりかはダンサーでしょ?」

自分のニックネームと同じ名前で活動していたダンサー龍がなぜかすごく気になってYoutubeで『ダンサー 龍』と検索した。そこには自分よりも年下とは思えないような高校生ダンサーが現れた。彼はダンス日本一位を取っているような凄腕のダンサーのようだった。自分は「龍」が推しになっていっていき、悪口も真に受けなくなるほどに楽になっていた。


マンションの屋上で思い出したその記憶は何よりも輝いていて、ダイヤモンドの原石達のようだった。と同時に眼の前の落ちたかった穴よりも思い出した記憶の方が輝いていると思った。だからあと少しだけでも自殺は引き延ばそうと考えた。マンションの自分の部屋に戻ろうとしたその時一人の男が自分と同じように落ちようとしていた。咄嗟に「落ちるな!死ぬな!」と叫んだ。自分の声が彼の耳に届いたらしかった。話を聞くとその人は同じマンションに住んでいる清水 豊という人だった。豊が死にたかった理由を聞いた。あまりにも重たく聞くに耐えない過去があった。豊は自分に、つらそうな顔で子供の時からの話をしてくれた。


苦しさの思い出〜父母が死んだその夜に〜

「夜の空は綺麗だろう。まるで宇宙に溶け込んだみたいな感覚になっていくから。」

父の声は私にとって心を支える大黒柱みたいな存在だった。

「そうね。綺麗ね。本当に綺麗…。都会なのにこんなにもたくさんの星が見えるだなんて。」

母の声は私にとって心を癒やしてくれる天使のような存在だった。

「こんなにいっぱいの星はどこから降ってきたの?」

父の優しい声が答えた。

宇宙そらよりも遠い場所」

シンプルな答えに少し笑ってしまった。

「何それ。もっと詳しい場所は無かったの?」

母が答えた。

「そうね。宇宙そら何じゃないかしら。」

そんな他愛もない普通の会話がずっと続けば良いのにって思っていた。でも世の中はそんなに甘くなかった。小学四年生の夏休みに殺された。何者かに。施設に預けられても誰かに慰められようとも心の傷は一切治る気配がしなかった。

「きっとお父さんもお母さんも、宇宙そらよりも遠い場所に逝ってしまったんだ。もう帰ってこれない。」

ふと流れ星が2つ流れた。流れ星は人が死んだ証だ。

「もう帰って来ないならせめてこれだけは言わせて。逝ってらっしゃい。」

それだけ言って泣き崩れた。大学生になった今住める家はどこにも無かった。悲しみが小さくなることも傷が治ることも無い。だから今わたしが行くべき場所はきっと、宇宙そらよりも遠い場所なんだ。


豊が可哀想だと思った龍は豊に言い放った

「家に来ないか?お互いにいつ自殺してもおかしくないんだ。この際もうどんな人生になろうと良いだろう?なあ、一緒に住まないか?」

豊は即答した。

「ああ。あなたがどこの誰なのか知らないがこの際どんな人生になろうとも後悔はない。それにあなたには何か光り輝くものを感じる。だから一緒に住まわせてくれ。」

龍もこの男のためになら何でもしてやりたいと思った。自殺したい『二人』の同居生活が始まった。


第二話へ続く…

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