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【一旦完結】ジャガーバルト家の義妹  作者: もにーる
第二章 異世界生活編

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2.冒険者ギルド


「いただきます」

「「「「いただきます」」」」


 領主であるラルフの声に続き、みんなで食事の挨拶をする。

 食事のテーブルが長い…ということはなく、普通の家庭にあるような食事風景だ。…気持ち程度机は大きいが。


 四角い机の上には、肉とスープとパン、目玉焼きやサラダ、果物も並んでいる。果物はあの森で取れるリンゴだった。たまにバナナも出る。

 初めの頃…侑人が世話になり始めた頃はステーキ等の肉料理が多く、…むしろ肉料理ばかりであった。朝から重すぎる。しっかり食べる事は悪くはないが、偏りが酷かったのだ。


 侑人は最初、(歓迎の料理かな?)と思ったのだが、朝昼晩…2日目3日目それ以降…ほとんどメニューが変わる事は無かった。


 ジャガーバルト領に来て半月程経ったある日の夜、そのことについて侑人から提案した。


「肉の他、野菜を食べる、しないのですか? 果物も」

「食べないことはないが、ユート殿は肉料理は嫌いか?」

「好きです。だけど、『栄養』…え~と、肉以外、野菜や果物を食べる。食べると、体の調子が良くなるです。女性には、肌がキレイの効果「採用しましょう!」…」


 侑人が全てを言い切る前に、ラルフの妻であるミリアによる一言で即決。みんなの目がミリアに向いた。

 思わず話を止めてしまったミリアは、ハッと気付いて顔を赤らめて「続きをどうぞ…」と侑人に促した。


 マギ語はまだまだ勉強中で、さすがにミネラルやビタミン、食物繊維という言葉はミュリアルにも翻訳できなかった。

 侑人は野菜や果物でしか摂れない栄養があるなどのメリットを噛み砕いて話していった。


「なるほど、ユート殿は物知りだな。俺たちも先生と呼んだ方がいいか?」

「日本では、詳しいじゃなくても、沢山の人、知ってる事です。とても詳しい人、勉強してる人、います。俺に、先生は、恥ずかしいです」

「がはは、ではこうして学ぶ事がある時は先生と呼ぶことにしよう」


 この日から食事の方針が変わり、肉だらけから野菜や果物多めの料理へと徐々に変わっていった。食後に歯磨きをする習慣は無く、うがいをするかお茶を飲むか、または汚れを吸着させるガムのようなものを噛むのが一般的だ。

 ちなみに、マギカネリアでは食事前に女神へのお祈りをするスタイルが基本なのだが、侑人が「いただきます」の説明をするとラルフに採用された。目の前の食材と作ってくれた者への感謝を込めて、という説明が気に入ったようである。

 それとこの日から毎晩、日本での知識やちょっとした豆知識を披露することとなった。そのお陰で侑人が言葉を覚えるスピードが上がっていったのだった。



「ユート殿、修行の方はどうだ? 何か感じるものはあったか?」

「あ~、全然さっぱりです。やっぱり魔術は使えないんですかね…」

「ジョブに関係もするからな。近接職などもさっぱりか?」

「ですね…。今の所手応え?みたいなものを感じることはありません。諦めはしないですけどね」


 朝食をとりながらのラルフとの会話だ。侑人にあの頃のたどたどしさは無くなっている。


 それはそれとして、ラルフの「修行」という言葉。この世界にはやはり、ステータスも魔術も、ジョブもあったのだ。


 侑人が転移してきてから数日後、披露してくれたのはミュリアル。人差し指を立てて「ファイア」と唱えると、ミュリアルの指先に小さな火が現れた。

 手品のように見えるソレに、「熱くないのか」「魔法陣は出ないのか」「他にはどんな魔法が」と、興奮しながら詰め寄った侑人。当然ミュリアルに「危ないから」と怒られていた。

 侑人は他の魔術もそれぞれ見せてもらった。ミュリアルは火と同じように指先に水の玉を出し、次はそよ風を吹かせた。


『…師匠と呼ばせてください!』


 侑人はすぐさま弟子入りした。ミュリアル師匠と呼ぶと長いからと、ミュア師匠と呼ぶことになったのはこの時から。

 早速懸念だったステータスの発音を真似て言葉にしてみたが、何も変化はなく。ワンチャンあるか?と、安全のため水系統魔術の「ウォーター」と唱えるも、何も変化はなく。

 その後すぐに冒険者ギルドへ向かった。身分証明にもなる冒険者カードの発行と、ギルドにある魔道具…鑑定水晶でステータスとジョブを見てもらう為だ。


 侑人と、なぜかフードを深く被ったミュリアル、少し遅れてラルフの3人でギルドへと向かう。ギルドへ辿り着き、『これが冒険者ギルド…』と感想を漏らしながら中へ入るとカウンターが3つあり、2つはそれぞれ女性が、1つは体格のいい男性が座っていた。

 女性2人はテキパキと冒険者の対応をしていて、まさに侑人の想像する通りの受付嬢といった感じだ。その受付2か所に数人の冒険者が並び、クエストの受注や完了報告をしている。

 カウンターの端に座っている男性は頬杖をついてそれを眺めている。男性の前には誰も並んでいなかった。


 侑人はこっちでも大丈夫なのか?と指差しながらミュリアルに聞き、大丈夫と確認が取れたので、男性のいるカウンターへ進んだ。


「すみません、冒険者、登録、できる、ですか?」

「…その歳で登録? それに言葉…まぁいい、お前さんはあっちへ並ばなくていいのか?」


 ミュリアルに言葉を教わりながら、まだ拙いマギ語で登録をお願いすると、男性はそう言いながら目線と親指を向けて、女性2人がいるカウンターを示す。


「はい、こっちで、大丈夫、です。それに、美人は…緊張? 苦手? です」

「…ふふ、ふははは! そうか、分かったよ。登録を始めよう」


 キョトンとした後、笑いながら登録をしてもらった。字はまだ書けなかったのでミュリアルにお願いすると、食い気味に『任せて』と答えた。役に立てて嬉しそうである。

 ミュリアルが記入を始め、しかしピタッと筆を止め、『わたしは?苦手?』と聞いてきた。乙女か。

 美人の話かと察した侑人が『師匠はかわいいから、苦手じゃないですよ』と答えると、へにゃっと笑い続きを書き始めた。

 とても嬉しそうである。そこがかわいい。


「冒険者カードの説明は必要かい?」

「ダメ、師匠の役目」


 フンスッ!と荒い鼻息を漏らすミュリアル、なぜか声が低めだった。


「そうか、師匠ってことはあんたも冒険者か。…ん~? ん~…まぁいい、登録に銀貨3枚だ」

「あ~っと…「それは俺が払うぞニック」」

「ラルフじゃねーか、どうし………ってことはミュリアルか?」

「正解、気付くのが遅い」

「無理言うなよ!? 声色まで変えやがって!」


 遅れて登場した領主に驚き、フードで顔を隠していたミュリアルに気付いた男性。名前はニック、この街の冒険者ギルドのマスターであり、ラルフの元冒険者仲間である。

 シェリルのいたずらは父親譲りだな~と、侑人はその光景を見ながら思い、ラルフに礼を言った。


 結局その後の登録の為に鑑定水晶を使ったのだが、結果は反応無し。ステータスもジョブも分からなかった。

 鑑定水晶は魔力を流して測定を行うものであり、魔力の扱い方も知らない…どころか、魔力を感じ取れもしない侑人には反応しないのは当然であった。

 ラルフやギルドマスターのニックが試すと正常に反応したので、故障ではない事は確認出来た。


 カードに血を垂らして冒険者登録完了、という異世界あるあるを行ったが、こちらも反応しなかった。カードが汚れただけ、血の流し損である。注射も嫌いなおっさんの頑張りを返してあげてほしい。

 最終的に侑人は手作りの冒険者カードを作ってもらうことになり、「ありがとうございます」と言って頭を下げ、後日カードを取りに来ることとなった。

 冒険者ギルドから去っていく3人を、並んでいた冒険者と受付嬢が手を止めて眺めていた。


 領主宅への帰り道、師匠となったミュリアルから冒険者について聞いた。


・ランクはABCではなく★の数1~7で表される。ランク1なら駆け出し。ランク3が一人前と言われており、冒険者にはその数が一番多い。ランク5からは一流と呼ばれ、昇格のためには二カ所のギルドマスターの承認と試験が必要になる。ミュリアルとラルフの冒険者ランクは、一流扱いの★5ランクだ。


・ランクの1~7はカード上に★で表示され、右下の端から2列で並んでいる。下が一般的な冒険者ランク、上が戦闘ランクだ。戦闘ランクはマスターの一存で決められる。

 これによって「なんだ、ランク1のひよっこか。教育してやるぜ!」と言いながら返り討ちに遭うようなバカが減ったとのこと。伝え方は2-4や4-5、3-1という言い方をする。前が冒険者ランク、後ろが戦闘ランクだ。戦闘ランクはあくまで目安だと注意された。


・もしも他人の冒険者カードを拾った場合には、ギルドに届ける事が推奨されている。


・冒険者カードを紛失すると大銀貨3枚(30,000リオル)で再発行が可能。登録の10倍である。(気をつけよう…)と侑人は思い留めた。


 ミュリアルの説明と注意事項を聞きながら歩みを進める。『ありがとうございます、ミュア師匠』と礼を言うと、師匠と呼ばれたからかムフー!と笑顔だ。

 めちゃくちゃ嬉しそうであった。


 そういえばと思い、貴族の爵位についても聞いてみた侑人。すると小説などでよく聞く男爵や伯爵とは言わず、一爵二爵と呼ぶとの事らしい。

 全部で三爵まであり、それぞれに準が付く計6段階。準三爵が一番下、一爵が一番上で、こちらも★の数を徽章きしょうに記すそうだ。侑人はその辺もちぐはぐさを感じた。


 ★の数が少ない方が貴族としての権力が上。冒険者と貴族で★の数え方が違うのは、その昔…仲が悪かったかららしい。

 侑人は『覚えやすいし、いいか』と適当であった。

 ちなみにラルフの爵位は三爵である。爵位を上げようとは思わないのか?と侑人が尋ねると、


「爵位が上がって徽章を作り直す税金が勿体ない。そんなものより領民の為に使いたいからな。そんな簡単に爵位が上がるわけもないし、…何より面倒くさい」


 とのことだった。その内容はミュリアルによってかなり噛み砕いて伝えられたものだ。


 爵位が上がれば更に豊かになるのでは?と思った侑人だったが、最後の言葉が本音だろうと納得した。この姿勢が領民に慕われているのであろう…と。

 (いい人だな…)と、侑人はラルフの所に来られた事を改めて感謝した。

 この世界で冒険者となった夜、庭で最後の煙草に火をつけ、気持ちを新たにした。



 侑人はその日からミュリアルに魔力なるものを流してもらったりしたが、反応はなし。剣や棒、弓なども試してみたが、どれもしっくりこなかった。

 ジョブを持っていれば何かしら感じるものがあると聞いて試せるものは試したのだが、ピンとくるものは1つもなかった。

 それでもこの世界で生活する為に行動を起こした。冒険者として活動するために、ランニングや筋トレも始め、いくらか体力もついた。


「ごちそうさまでした。それじゃまずは日本語の勉強から始めましょうか? 行きましょうミュア師匠」

「はい! ユート先生!」


 朝食を終えた2人の勉強と修行の1日が始まった。


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