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【一旦完結】ジャガーバルト家の義妹  作者: もにーる
第八章 王国騒乱編

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17.合コンでの鉄板ゲーム

簡単な前話あらすじ

・王都到着

・希美、乃愛の成長に感動

・何かを企む侑人とバラダット


前もって補足。侑人が大我達の保護に向かっている間にギャバットくんは捕まりました。


「父上…あの…」

「………」

「何故…俺まで牢に…。何があって…この様な「ギャバット」…」

「何も喋るな。視界に入るな。端でジッとしていろ。これ以上お前を意識すると…私はお前を殺してしまいそうだ」

「………」


 城の地下牢で、グスタフとギャバット…ヘルオン家の親子が険悪な雰囲気になっている中、


「…ち、…父上?」

「───」

(反応が無い…? どこを見つめて…)

「父上…、どうしたのですか…? 俺とは関係無いはずの父上が何故ここに? それに、親戚のラムー殿も…」

「───」

(無視されているという雰囲気ではない…。しかし、これではまるで…死…)

「ち…父上…。ラムー殿…」

「「───」」


 フリップがガーハンテと…予想外の再会をしていた。



 地下牢の空気が最悪になっていた頃、大我達のいる客室にノックの音が響いた。


「は~…はさすがにあかんな、はいどうぞ」


 代表として大我が返事をし、立ち上がる。他の8人も大我と同様に立ち上がった。

 扉の外から「失礼致します」とマリンが声をかけ、入室者の為に扉が開けられる。


 部屋に入ってきた侑人の姿を見た9人は、


蓮(この状況でも「は~い」って言いそうになる大我さんって凄いな…)

L(いよいよ移動かな?)

美(王様と会うって考えると緊張が…。胃薬欲しい…)

乃(ユートさんがいるから大丈夫。…大丈夫)

舞(あれ? まだユートさんが対応してくれるのかしら? ユートさんって平民のはずよね? 面識で考えるなら白百合隊の人達でもいいはずなのに…ううん、その方が自然のはず。ユートさんが来た理由って…?)

大(…もしかして、この人ホンマは王族に入っとったりして…? 『貴族じゃないとは言ったけど、王族じゃないとは言ってない』とか言いそうな気がしてきた…)


 それぞれ感想を抱いていた。


「お待たせ。悪いんだけど、ソファーを動かすから皆こっち側に移動してもらえる? 大我くんはここで」

「わ、分かりました」

「ユートさんがこれからの説明でもしてくれるん?」

「いや、これから陛下がここにいらっしゃるから、位置調整をね」

「「「………」」」

「…ここなん? 謁見の間~みたいな所でやるもんやないん?」

「そっちでやるとなると、多分めっちゃ硬い話し合いになっちゃうからね。時間もかかるだろうし、兵士さんや騎士団の人達も大集合する事になるだろうし」

「「「………」」」

「そう…なるんか。分かったわ」

「いきなりでごめんね? もう少ししたら陛下がいらっしゃるから」


 侑人の言葉を聞き、全員の緊張が高まった。

 あまり緊張しないと言っていた大我でさえ、服装を正したり背筋を伸ばしたりとソワソワしている。


「こーゆー場合は…なんやっけ、…直言(ちょくげん)か。直言は避けた方がええか?」

「公式の場では、だね。そういう所を気にせずに済むように、謁見の間じゃなくてここへいらっしゃるんだよ」

「そーゆー意味もあるわけか。注意しとく事って何かある?」


 ソワソワしながらも、しっかり注意事項を確認していた。さすが経験豊富な何でも屋である。


「ん~…、特に無いかな? タイガくんに限らずだけど、失礼な態度は取らないでもらえると助かる。皆なら大丈夫って思ってるけど、一応ね? 文化の違いで意図せずにって場合があるかもしれないし」

「確かにな。もし誤解があったっぽかったらすぐにゆーてくれ」

「了解。こちら側から失礼があった時も遠慮なく教えて」

「了解や。あとは…今のうちにトイレ行っときたい人とかおらん? 大丈夫そうか?」

「「「………」」」


 大我に問われた事で意識してしまい、大丈夫ではなくなった数名が手を挙げ、マリンにトイレへと案内されていった。

 トイレに行った数名は、バラダットが部屋を訪れる前にちゃんと戻れた。



 注意事項の確認を終え、トイレも済ませ、静かに…ソワソワしながら待っていた大我達のいる部屋に、バラダットがやってきた。


 ノックの音と同時に立ち上がって国王を迎える大我達。と侑人。

 大我達9人は部屋の扉側から見て左側のソファーに、侑人はローテーブルを挟んだその対面…バラダットが座る予定のソファーの後方にいる。


「お待たせした。迎えてくれて感謝する、掛けてくれ」

「…ありがとうございます」


 バラダットに促され、大我達はソファーに座った。さすがの大我にも緊張が見える。

 バラダットもその対面にあるソファーに座り、大我を見つめた。


(ガーハンテとは全然ちゃうな。貫禄っちゅーか威厳っちゅーか、さすが王様って心の底で納得させられとる感じや)

「さて、まず初めに名乗らせてもらうとしよう。ルクセウス王国国王、バラダット・フォン・ルクセウスだ」

「初めまして、バラダット・フォン・ルクセウス国王陛下。私はこの者達の代表、来栖(くるす) 大我と申します。大我とお呼びください」

「タイガだな、了解した。よろしく頼む」

「こちらこそよろしくお願い致します」

「…この度は、我が国の貴族が大変迷惑をかけた。国の代表として、心よりお詫びする」


 挨拶が済むや否や、バラダットは謝罪を口にし、頭を下げた。侑人もバラダットと同じく頭を下げている。


(国のトップが頭を下げる…。謁見の間を使わんかった理由にはこれも入っとったんやろな…。驚くどころか侑人さんも一緒に頭を下げとるっちゅー事は、最初からこうする予定やったんかもしれん)

「頭をお上げください。陛下を責める者など、私達の中には1人も居はしません。陛下には私達を保護していただきました。私達にあるのは感謝の気持ちだけです」

「…そうか。そう言ってもらえて気持ちが楽になった、ありがとう。ただ、余は『保護が完了した』という所で話を終わらせるつもりはない」

「………それはつまり」

「うむ。王国として、タイガ達がニホンへ帰る為に最大限の協力を約束する」

「ホンマ!…失礼しました。ありがとうございます陛下」

「とはいえ、ニホンへの帰還がいつになるか、まだ分かっておらぬ。そうなると、その日までのタイガ達の生活の心配をせねばならん。その為の話し合いをさせてもらいたいと考えておる。…が、この様な形で話を続けるつもりはなくての?」


 話の途中から、バラダットはガラッと雰囲気を変えた。表情も柔らかくなっており、国王感が薄まっている。


「聞くところによると、ニホンには…」

「………」

「各家庭に風呂があるのじゃろう?」

「………あり…ますね…」


 何を言われるのか、何を言われたのか。

 バラダットの発言について考えつつ答えていた大我だったが、


(…あ~、そーゆー事か?)

「ただ、全ての家に風呂があるとは言えません。無い場所には無い、無い家を探す方が困難、という認識です」


 狙いに当たりが付いてからは饒舌になっていた。


「なるほどなるほど。こちらにも…マギカネリアにも風呂がある事は知っておるか?」

「はい。ガーハンテから情報を集めている時に聞きました。昔に召喚された勇者…日本人が伝えたものだと。…あの家にはありませんでしたが」

「そうか。…この城には風呂があっての?」

(((お風呂!)))

「良ければこちらの世界の風呂を体験してもらおうかと思っておるのじゃが、どうかの?」

((異世界の…しかもお城の…))

((お風呂体験…))

「…魅力的な提案ですが、ご迷惑ではありませんか?」


 本当にいいんですか?的なワンクッションを置く大我。実に日本人的な返しだ。

 その言葉を聞いた女性陣は、大我に対して首を横に振ったり、魅力的な提案に目を輝かせたり…手を合わせたりもしながら、バラダットの次の言葉に全集中している。


 侑人の思っていた通りの反応であった。



 風呂に入らない事と入れない事では、かかるストレスがかなり違ってくる。

 風呂もシャワーも無かったガーハンテの別邸。事実上の監禁状態で外にも出られず…水浴びさえ出来なかった。

 外出と水浴びを許されたとしても、時期は水の季節。日本でいえば春の初頭。気持ちよさよりも苦痛を感じてしまっていただろう。


 数日とはいえ、体を拭く以上の手段が取れなかった。

 そこへ…久々に風呂に入れるとチラつかされれば、女性陣の期待が顔や動作に出てしまうのは当然の事だった。


「迷惑などではないとも。こちらから提案した話であり、既にその予定で準備をしておるからのう」

「そうでしたか。…(チラッ)」

(((コクコクッ!)))

「なはは…、まぁそうなるわな。…お言葉に甘えさせていただきます」

「それは良かった。本物の風呂を知る君達が満足してくれるかどうか、という不安もあるがの?」

「風呂を語れる程ではないと思いますが…」

「ほっほっ。知識も経験も確実にそちらが上のはずじゃ。…そこでなんじゃが、実際に風呂を利用した後、使い心地を聞かせてほしい。改善点などもあれば、遠慮なく言ってもらいたい」

「使い心地と改善点…。分かりました、もしあればお伝えさせていただきます」

「ほっほっほっ、よろしく頼む。…ただ、風呂の準備にはもう少し時間がかかる。そこで…コレを持ってきたのじゃが、時間が来るまでどうじゃ?」

(なるほどな~、侑人さんが尊敬しとるゆーとったんがよー分かる気ぃするわ)

「もちろんお相手させていただきます。皆もええか?」


 大我が後ろへ振り返り、声を掛ける。戸惑いながらも全員が首を縦に振った。


「それじゃ、ルールの説明は俺がするね」


 侑人はそう言いながら、バラダットから受け取ったトランプを配り始めた。



「「「………」」

「「「………」」

「それでは…オープン」

「お~…あ~! 負けたぁ!」

「ほっほっほっ、運が味方したわい」

「お、おめでとうございます陛下…」

「硬いですよミキさん。さっきのタイガくんみたいにハイタッチとかしてみたらどうです?」

(なんて事を言うんですかユートさん!?)

「そうじゃな、儂だけが勝ったわけではないからの。おめでとうミキ」

「えっと…ありがとうございます…」


 バラダットと美樹が、控えめなハイタッチを交わした。



 現在、大我とバラダットの話し合いが行われていた客室では、トランプの定番ゲーム…ポーカーが行われている。

 王族が持っているトランプだけあって、街で…マギカネリアで一般的に使われているトランプよりも薄く品質が良い。


 ただ、今行われているポーカーは地球で知られるルールとは少々異なる。ペアポーカーと呼ばれるゲームだ。


 1人に配られる札は5枚。役は地球で行われる通常のポーカーと同じ。ジョーカーも使用されている。

 この辺りまではまぁ、一般的なワイルドポーカーのルールの範囲だろう。


 ペアポーカーの特徴としては、上記に加えて手札の交換が出来ない事。プレイ人数が偶数である事。参加者は輪になってプレイする事。そして、ペアとなった相手との計10枚の手札の中から役を作る事が挙げられる。

 同じ数字の役が出た時には、役に選ばれなかった残りの手札5枚で勝敗を決める。稀にだが、そこでも同役同数字と被る場合がある。その時には、マークの強さによって勝敗を決めたり、そのまま引き分けにしたりといったローカルルールがある。ハイカード同士なら引き分けだ。


 ペアの決め方は、別に用意された「ペアカード」と呼ばれる4枚のカードを引いて決められる。「右」「左」「対面」「自由」の4種類だ。

 「右」か「左」のカードが出た時には、机の上でカードを回して起点となる人物を決めてペアになる。

 「対面」か「自由」が引かれた場合、席替えが行われる。席替え時、どちらが移動するかは自由。また、ペアとなった相手の左右どちらに座るかも個人の自由。なので、「右」や「左」を引いても毎回同じペアになる事はあまり無い。

 マギカネリアにおける合コンでの鉄板ゲームなのだ。


 …ただ、「自由」でのペア決めでは揉める場合がある。合コンの場では特に多い。理由はまぁ…意中の相手が被ったり、断られたり、余り者同志が気まずくなったりといったものがある。

 その為、途中から「ペアカード」が「右」「左」「対面」の3枚に減らされる事は珍しくない。



 今の所、この場では「ペアカード」は4枚のまま…仲良く進行中である。


「陛下に並ばれてもーた」

「ミキの手札に助けられたからのう」

「いえいえそんな…」


 カードを配り、ペアを決め、席替えが行われたり行われなかったり。

 10枚の手札から5枚を選んで役を作り、勝利したペアがそれぞれ勝ち点1を獲得。

 最初に勝ち点が7になった者が優勝。


 侑人もディーラー兼プレイヤーとして参加中だ。…ディーラーとはいっても、カードを配って「オープン」と言っているだけだが。


「お、対面っちゅー事は…陛下とペアですね。よろしく頼んます」

「こちらこそよろしく頼む。タイガとペアになった時は強い手が揃う気がするからのう」


 ゲームのお陰で、バラダットに対する大我の口調は砕けつつあった。

 ここに来るまでに持っていたはずの苦手意識はもうなさそうだ。


「負けてられないね。よろしく胡桃ちゃん」

「は、はい! LEO様!」

「マイさん、よろしくお願いします」

「よろしくユートさん。乃愛ちゃんはそろそろルール覚えられたかしら?」

「ユートさんのを見てて、なんとなくですけど…」


 乃愛はポーカーのルール自体をよく知らなかったので、侑人の後ろに付いて見学中である。


「お、じゃぁ次で交代してみる? 後ろに付いててあげるから」

「えっと…、やってみます」


 次のゲームからは、侑人が乃愛のサポートに回った。

 ディーラーは侑人がそのまま継続。侑人が獲得していた勝ち点はそのまま乃愛に引き継がれた。


「(あ、やりました澪さん。澪さんの持ってたコレで揃いました)」

「(ちょ…ちょっと待って…。これって…)」

「(…うん。ミオちゃんの思ってる通りだよ、すごい強運…)」

「(え…? こっちじゃないんですか? こっち?)」

「(うん、これで役になってるから大丈夫だよ)」

(なんか強そうやな…)

「それじゃいきますよ~。…オープン」

「うわ! 嘘やろ!?」

「ほう…、久しぶりに見たな…」

「え…え?」

「乃愛ちゃん、これ二番目に強い役」

「この場合は、9じゃなくてAで成立するんだよ」

「そうなんですね。9じゃなくて残念って思ってました。配られたのがこの5枚だったので…」

「マジでか…」


 ビギナーズラックが仕事をしたらしい。それでもロイヤルフラッシュは仕事し過ぎ感が半端ないが。


「これは勝てそうな予感。よろしく乃愛ちゃん」

「よろしくお願いしますLEOさん。勝てそうって言うには早いかなって…」

「初めてのペアですね。よろしくお願いします陛下」

「そうじゃったな。よろしく頼むよマイ」

「うぅ…役が…。ごめんね蓮くん」

「そういう時もありますよ希美さん。気にしない気にしない」

「美樹さんナイス~♪ これは強いですよ~!」

「あはは…」(胡桃ちゃんはギャンブル向いてなさそうね…)

「あれ? こっちとこっちだとどっちが強かったっけ?」


 初めてのルールにも徐々に慣れ、バラダットとだけでなく各所で仲が深まっていた。



「ふむ、ここで追いつかれたか。久々に熱くなっておるわい」

「負けませんよ?陛下。…と、ノアちゃんが言ってます」

「え…」

「ほほう?」

「言ってないですよ!?」

「ほっほっほっ、分かっておるとも。ユート殿は意地悪じゃのう?」

「ですです! 意地悪です!」

「あはは、ごめんごめん」

(…別の見方をすれば、それだけノアとユート殿の仲が良いとも取れるがの?)

(乃愛ちゃん、こんなに明るくなって…。あ、考えてたら涙が)

(おーい…、三つ巴の3人目が空気になっとるでー…。まぁええけど)


 王都到着前にしていたはずの緊張はどこへやら。ゲームは進み、乃愛もすっかり馴染めていた。


 現在、バラダット、乃愛(+侑人)、大我の3人が、勝ち点6で並んでいる。リーチがかかっていたバラダットに、乃愛大我ペアが追いついたのだ。


「「「………」」」


 カードが配られ、新たにペアが決まり、いよいよ三つ巴の形となった。同時優勝は無くなったが、これで勝敗が決するかどうかはまだ分からない。残り2組のペア次第で延長戦も有り得る。


 各組が10枚の手札から役を選び、侑人が「オープン」と告げた。



 盛り上がった戦いは、乃愛希美ペアがフォーカードを揃え、乃愛の優勝という形で締め括られた。


ブックマーク・評価、ありがとうございます!


次回投稿予定日は6月28日(金)です。

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