表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
144/243

12.色々見えてしまった

時間を変更して投稿。


簡単な前話あらすじ

・シャーロット視点の襲撃事件

・フルポーション窃盗未遂

・お部屋で反省中


「なるほど…」


 ジュードから『鑑定眼』の話を聞き終えた侑人は、少々考え込み…口を開いた。


「まずは、シャーロット様を怒らないであげてください」

「…ふむ」

「あの時、俺には鑑定された感覚はありませんでした。もし鑑定されていれば気付いていたでしょう。鈍いつもりはありませんしね。…推測ですが、『鑑定眼』には魔眼の使用とは別に…副作用というか、付随効果みたいなものがあるんだと思います」

「付随効果…?」

「例えば、『魅了眼』には魔眼の使用時以外でも周りを惹き付ける力があると聞いた事があります。『千里眼』は常人より視力がいいと聞いた事があります」


 情報元は師匠と親友からである。


「…『鑑定眼』にも、本来の能力以外に何かしらそんな力があると?」

「もしかしたら…ですけどね? 『鑑定眼』の話は…正直あまり覚えていませんが、感覚的に強さが分かってしまう力があるのかもしれません。緑とか赤とか黒とか、その人の周りに色が見えるのかもしれません。『透視』…みたいな事が出来るのかもしれません。他に…」


 おもむろに懐から取り出した紙に適当な数字を書いて額に当てる侑人。インディアンポーカースタイルである。


「こんな感じで、頭の上に戦闘力…っぽい数値が見えるのかもしれません」


 ちなみに、侑人の書いた数字は「5」だった。

 戦闘力5…。この場に元ネタを知っている桜華がいれば吹き出していただろう。…もしくは冷静にツッコミを入れられていただろう。


 …ジュードはクスリともしなかったが。


「…仮に、あの子が意図せずユート殿の強さを見てしまったとして、「違う」と言った理由が分からない。クロ殿はユート殿なのだろう? 何が違ったのだろうか?」

「あはは…。厳密には少しだけ違うんです。その違いがシャーロット様には分かってしまったのかもしれません。それで偽物と言われたのでしょう」

「そう…なのか…」


 違いについて侑人から語られる事はなかったが、ジュードはとりあえず納得した。


「シャルへの気遣い、感謝する」

「いえ、怒られて悲しそうでしたので」

「まぁ…な。とりあえず、この件であの子を怒らないようには気をつけるとするよ」

「ありがとうございます。違いについては、後でシャーロット様本人に聞いてみましょう。…教えてもらえるなら、ですけどね?」

「ユート殿が全く見当違いな事を言っている可能性もあるしな?」


 会話に参加してきたラルフ。…ハラハラが限界突破したのかもしれない。


「確かになくはないですね。答え合わせを楽しみにしておきましょう」

「………、頼もしいよホント…。シャーロット様の事は解決したとして、そろそろソフィア様の診察をだな…」


 ラルフ、軌道修正をしたかったらしい。


「そうですね。後回しにしてしまってすみませんでしたジュード様」

「いや、あの子の事も気に掛けてもらって、私としては嬉しいよ。すぅ~…はぁ~…。では、よろしく頼む」

「はい。では…、まずは姿を変えます。『CC』」


 侑人が『CC』と唱え、ドレス姿の…チョーカーと眼鏡とカバンを身に付けた状態のリュートへと変身し、


「…改めて見ても不思議な感覚だ。目の前で見ていたのに、存在自体が変わってしまったかのような…」

「その感覚は合っていると思いますよ? 簡単に言えば、全くの別人へ変身する魔術ですので。…ちょっと複雑ですけどね?」


 ジュードに驚かれながら、これから行う事の説明を始めた。



「まずは、ソフィア様に対して鑑定のようなものを行います」

「鑑定…。シャルの魔眼でも調べてもらったのだが…いや、必要な事なのか」

「ですね。これをしないと何も始まらないと思いますので」

「了解した」

「では、失礼します」


 ソフィアの眠るベッド。ガリガリに痩せ細ってしまっている少女の眠るベッド。そのすぐ側にある椅子に座り、リュートは『眼』を発動した。

 その途端にリュートの雰囲気が変わる。緩急の緩の時間が終わり、スイッチが切り替わった様に真剣な表情となった。


(名前…年齢…各数値…。状態異常は…『衰弱』だけ。ジョブは…読めない。スキルも…おかしくなってる。これじゃ確かに対処出来ないな…()()()()には)

(…ごめんなさい、念の為に見させてもらうね──)

(そういう事…なのかな? あの人の…いや、直接聞くまで置いておこう)

(陰謀論は無いって分かったのは収穫だったけど、………見ちゃった皆さん、改めてごめんなさい)


 ソフィアの過去を見た事で、何者かの手によって眠らされているわけではない事が分かった。

 …収穫ではあったが、同時に…色々見えてしまった。乳母さんによる授乳シーン、メイドさん達の…ソフィアとの入浴シーン、王太子妃らしき人物の入浴シーンまで…。

 軽々しくジュードに謝れない内容な上に、見た手段もまた話せない。リュートは「ごめんなさい」を飲み込んだ。


 同時に、他にも見えたものがある。

 ソフィアの誕生を喜び、成長を見守る両親や国王の笑顔が見えた。

 …眠り続ける娘に、涙しながら話しかけるジュードの姿も見えた。

 「私がちゃんと産んであげられなかったから…」と、…自身を責める女性の姿も見えた。

 …寝たきりのソフィアに話しかけながら世話をする使用人達の姿も見えた。

 …起きない姉を心配するシャーロットの姿も見えた。


(君が起きるのを皆が待ってるよ、もう少しだけ待ってね。それじゃ、ステータスをもっと深く──)

(………なるほど。確かにこれならステータスの数値も納得かな。…欲を言えばオーちゃんの意見も聞きたいけど)

(ポーション…じゃなく上級ポーション。…上級ポーションじゃないと回復が追いつかないのか。なら順番は…)

(眠り続けてる原因はこれか。対処法がいいか…いや、それだといつか再発する可能性がある。根本的な治療をした方がいいか。だとすると…)


 ジュードとラルフが静かにリュートを見守っていると、リュートは紙を取り出してベッド横の小さな机に置き、ソフィアと紙を交互に見ながら何かを書き始めた。


 リュートが取り出した紙は、斜め掛けにしている小さなカバンから。…正確には『インベントリ』からだ。

 城へ呼ばれる事を想定して、『インベントリ』を誤魔化す用のカバンを身に付けていたのだ。抜かりの無い少女である。


「お待たせしました。では、ソフィア様の治療方法をお伝えしますね」

「………待て待て待て!? もっと前から説明しろ!」


 …やはり抜けているのかもしれない。



 ラルフにツッコミを入れられたリュートは、その言葉通り…もっと前から説明を始めた。


「ソフィア様は『ジョブ不形成症』という病だと聞きました」

「その通りだ。ジョブとスキルがちゃんと表示されないという現象で、解決方法も未だ見つかっていない」

「では、まずその説明から始めましょう」


 ジュードは冷静を貫いていたが、頭の中は大パニックだった。

 リュートがソフィアを鑑定していた時間は精々5分。その程度の時間で何が分かったのか、…何を知ったのか、…治療方法があるのかと、期待よりも…若干の畏怖を感じていた。


「まず予備知識としてですが、700年前…勇者オーカがいた時代、誰もがステータスからジョブを変更する事が可能でした」

「………そう…なのか?」


 予備知識の情報濃度が高過ぎる件。

 この場に学者がいれば、話を中断させて深堀りを始めていたかもしれない。


「ある日からそれが出来なくなったみたいですけどね。詳しい原因は分かっていません。…嘘のような話に聞こえるでしょうけど、その前提で話を聞いていただければと思います」

「わ…分かった…」

「ありがとうございます。…『ジョブ不形成症』という病はその昔、『先天性結合症』と呼ばれていました」


ブックマーク・評価、ありがとうございます。


次回投稿予定日は12月25日(月)です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ