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この世界から出れなくなっちゃった。


そんなわけで、4話です。

拝啓、お母様 お父様 元凶のお姉様。

私は現実世界に戻ることは出来なくなったみたいです。今、仮想世界をさまよっております。

大通りを歩きながら座れる場所を探し、そこに座る。

どうしようもない困難にぼーっとしていると、向かい側の小さな女の子がせわしなく動いているのが目に入った。


 髪の色は金色と茶色の中間くらいでツインテール。人を探しているのか、腰かけに上って背伸びしたり、ジャンプしたりとぴょこぴょこと可愛い仕草であちこち見回している。やがて見えないとわかると、下に降りて同じことを繰り返した。


小学生位の可愛いアバターだ。服も決して質素なんかでは無いのを見るあたり、なかなか上級者なのではないだろうか。


そんな動きを見ながらぼーっとしていると、不意に目が合った気がした。


気のせいか。はたまた、こちらが見てるのが不快だったんだろうか。


目を逸らすと、後ろから肩を叩かれた。


私まだ知り合い居ないし、間違い肩トントンかな。


ふとそちらを見ると、先程の少女が居た。


「あなたで良いわ!こっちに来なさい!」


面倒な予感がする。


これはあれか。何なのだ。分からん。

まるで猛獣のような笑みを見せて手を引くこの少女に、私はなんと反応すれば良いのか分からず手の引かれるまま道の端にある、地面から3段ほど高い場所に連れてこられる。


しかしこの子、ネームプレートが無いのを見るにプレイヤーじゃないのかな?

だとしたら私の知らない間に世界は先に進んでいるようだ。


「しゃがみなさい!」

「あ、はい」

当然のように背中から乗ってきて、肩車状態になる。

これはこれで新鮮なんだけど、説明が欲しいな。


「あ、いた!」

「探し物は見つかりましたか?」

「うん!ありがとね」

バシバシと叩かれる。そこは頭ですお嬢様。叩かれると痛いのです。痛覚は無いけど。


プレイヤーか分からないけど一かバチかで聞くしかないか。

「代わりに教えて欲しいことがあるんですが」

「ほぇ?」

「ログアウトの仕方って分かりますか?」

「…ほぇ?」

「…ログアウトの」

「2回言わなくても聞こえてるわよ」


あなたが惚けた顔するからでしょうが。

「とりあえず設定開きなさい?」

そこからいろいろいじられた。

どうやら、ネームプレートは消すことができるみたいだ。

影も消すことができるらしいが、私は消さない。現実感を楽しみに来たのに、本末転倒な気がしてならない。

とりあえず、この人は悪い人ではなさそう。

でもなんか嫌な感じがするんだよなぁ…言葉にはできないけど、節々から匂う嫌な空気が気になる。

どうもただの親切心で声をかけてくれたお嬢様だが、早くログアウトの方法を教えて欲しい。

はたして、親切心なのかそうじゃないのかどっちなんだ。

「じゃ、ここからここ押すとログアウトできるから」

「その言葉が聞きたかった!ありがとうございました!」

言われたボタンを連打しつつ逃げるように去る。

助かるのは本当なんだけど、急ぎたいので!

最後になんか言ってた気がするけど気のせいだ。

口パクしながら肩揺さぶられたくらいだけど気のせいだ。

グッパイ美少女、グッパイアバターの私!


ふぅ。

頭からこれを外し、ベッドから起き上がり、ひと言。

「これ、面白いけどもうやらな…帰ってる!!」

姉は居なかった。

1人、窓の外の夕日を眺める。

部屋にはカラスの声だけが木霊していた。



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