初めてのVRせいかつ。
木々を掻き分け、前へ進む。
岩。崖かな。
引き返して後ろに進む。
明らかにあるけど言わんばかりの道があるが無視無視。わかりきった道は後で行くのがいいんじゃない。
しばらく歩くと、岩が見えた。丘?登れるみたいだけど、その前に。
岩のはずなのに取っ手が付いてる。
とりあえず開けてみる。
割とすんなり空いた。そしてどうやら1度通ると岩を通り越して進めるらしい。
境目あたりをぴょこぴょこ と、楽しんだ後。
扉を開けると、中は空洞になっており、外見とは釣り合わない高さの天井。上を見上げるのに首が痛くなるくらいには高い。
真ん中にぽつんとチェス盤くらいの大きさの台が置いてある。
近づいてみると、そこには明らかに手を填めてくださいと言わんばかりの手の形がある。
とりあえず重ねてみると、
「認証しました」
マップのようなものが開かれ、ここの情報が明らかになる。
岩宿の地下室 という名のこの場所には、これだけ広いのにも関わらず誰も居ない。不便な場所だし…仕方ないか。
ヘルプには、ここにもう一度ワープできるようになる…らしい。ここの位置と縦に長い道だけマッピングされてるあたり、歩いた場所しかマッピングされていない?
この小さな(と言っても体育館くらい)場所を見て回る。
ぐるりと1周。何も無い。
あったのは木の剣と聖剣アロンダイトくらい。
そう、木の剣とせいけ……
「うえぇぇええ!?」
なにこれ名前かっこいい。固有名詞ステキ。
初心者応援サービスですか?
でも☆の数は0。木の剣よりも少ない。
ステータスも低いし、効果もなし。
あと何よりレベルが足りなくて装備が出来ない。50からしか出来ないみたい。
これは…
「要らないかなぁ」
期待させちゃってもう。
何かには使えそうだけど、さっぱり分からない。
みんな持ってるタイプの剣だろうけど、固有名詞に惚れちゃったので許す。
一応ストレージに入れておくけど、後々使えるようになったらまた外に出そう。
説明文に、強化素材とか書かれてた気がしたけど知らない知らない。
はてさて、もうここに用事は無い。
1度外に出て、横に行ける道へ行くか、それ以外か。
私としては道なき道を進んでいきたい。剣あるし、戦い方も知りたい。
なにせ今のままでは、ここに降りたばかりのか弱い女の子 ですから。
せめて少しは戦える...いや、目指すなら1人で戦える程度の女の子にでも。
どうせ学校以外にやることないし。暇だし。なんならこのゲーム繋がりでもしかしたらお友達とやらが出来るかもしれないんだから!
…とか思っちゃったりしつつ、しっかり横の歩ける道へ進むのだった。
のんびり歩きつついろんな能力に目を通す。
まずはマップ機能。
歩いた道全てをマッピングしてくれるのかと思いきや3分ほどで消えていくみたい。
ただ、名前の着いた場所の点は見えている感じからするに、マップの使い方としてはこの点を付けて回ることなのかなと思ったり思わなかったりラジバンダリ。
次にストレージ。
これは武器や防具や素材全て含め、9999種集めることが出来る…らしい。
並べ替えることも出来て、欲しいアイテムの検索欄なんかもある…らしい。
そう書いてあるからそうなんだろうな。うん。
この説明文は便利すぎる。知恵のおばあちゃんと呼ばせていただきます。異論は認めちゃう。
でもって。ジョブ一覧見てみたけど、割とちゃんと考えられててびっくりした。
職業名を上と下に分けて、それぞれに役割があるみたい。
例えば剣士。
剣 と 士 に分ける。
剣の部分の効果は、剣と名のつく武器の速度と威力が増す。
士 の部分の効果は、ダメージが少し受けにくくなる。
男の子に纏わる名前はダメージを減らすタイプで、女の子に纏わる名前は体力を回復する効果が付く。
ややこしいけど、ここまでジョブが多いと覚えるよりもこの機能の方が覚えやすいし楽かも?
しばらく遠くの山しか見えない草原を歩いていると狼が居た。
注目してみると、『デミウルフ』という名前が上に浮かび上がる。しっかり名前があるみたい。
Lv.3と出てるあたり、恐らくザコなのでは無いかと予想しちゃう系女子ですどうも。
木の剣を片手に、後ろからおそるおそる
「ガウっ!」
バレたぁぁ…。早いって。
まだ距離はあるけどしょうがない!
「えい!」
記念すべき一刀目!
木の剣で叩く!
HPのバーが出てきて、1/4ほど削れた。
「ガウッ!!」
その黒く鋭い爪で足を引っかかれる。
私の左下あたりに出てる体力バーが少しだけ削れた。
これは…勝てる!
「うりゃりゃりゃりゃ!」
殴って殴って殴って!
そして…
「やった!」
デミウルフを倒し、レベルが2になった。
デミウルフの牙、というアイテムも手に入った。
爪で攻撃してきたのに牙が手に入っちゃった。
体力は削れたけど、回復出来るものもないし無視で行きましょう。多分職業の役割で回復してくれる。
またのんびり歩いて気が付く。
この回復、遅い!
1分で1かな?そのくらいの回復だけど今の体力満タンが125あることを考えると
「あと30分くらいかぁ…」
敵に会わないようにしないと。
だいぶ歩いた。30分ほど。
あれからデミウルフも10体ほど倒した。
レベルアップして、Lv.5になった。
デミウルフは一撃で倒せる様になり、ダメージもなくなった。
それと、爪が3つと牙が7個になった。
爪で攻撃してきたら牙で、牙で攻撃してきたら爪なのかな?
…最初に牙で腕を噛まれた時は怖かった。
腕から取れないのは反則です!
目が怖いし、もう二度と会いたくない。
それはともかく。
街が見えてきた。
真ん中に大きなお城があり、良い具合に中世な感じを漂わせている。
道はこのお城を囲む壁にある門のひとつに繋がっており、仕方なく私は進むことにした。
兵士が人な訳ないし、大丈夫か。
身なりだけ兵士NPCを通り過ぎて、入る。なんでゲームも知らない普通の女の子がNPCなんて知ってるんだ!ですって?
いや、名前にそう書いてあったので。身なりだけの兵士NPCって。
このゲーム変わってる。
その城門をくぐり抜けると大勢の人たちが行き交っていた。露店で販売する人、冒険者のような身なりで談笑している人、城門からのメインストリートには石が敷き詰められ舗装されており、それに沿って建物が並んでいる。
そして先程から見えていた大きなお城が見下ろして歓迎している。
でっかいけど遠いなぁ。王城まで行くのには気が遠くなりそうだ。
入口にあるワープポイントに触れ、のんびりと道を歩く。
どこも活気があり、様々なものが売っているのが分かる。
プレイヤーもちらほら見えるあたり、なかなか便利な街かもしれない。
名前を見る限り、ここが王都で間違いないみたいだけど…。
来たところで何するか決めてなかったな。
ここは街中にあるたくさんのワープポイントを全て登録しておこう。
多いな。
もう25は登録した気がする。
洞窟の時と違い道の端に置かれており どこかに入らないと、なんてことは無いのが助かるけど。
この王都を見学も兼ねて、小さな小道を進んだり屋台の串肉をウルフを倒して手に入れたお金で買ったりした。
びっくりなのはしっかり味がついているということだ。
あなたの脳内に直接語りかけています…
みたいな事なのかな。
小路にいたネコ…しっぽが3本のことを除けば普通のネコ…を追いかけつつ、狭い路地を何個もぐるぐる行き、ワープポイントを確保していく。ワープできるに越したことはないからね。
しばらくして、そろそろ疲れてきたなと。
もういいかなと。終わり方が分からないなと。