リアルとゔぁーちゃる。はじまるよ!
初めまして、処女作です。
違います。名前じゃ無いです。
ふわりんごです。名前は語感で決めました。
防振り面白いですよね、あの世界観たまらない。
そんなわけで初めてみました。
え?名前出しちゃいけないの?どうなの?
ポリゴンを撒き散らしながら突如として現れた少女に、鳥たちが声を立てながら逃げていく。
張り詰めた空気。
自然を肌に感じる。
見渡す限りは木以外はなさそうだ。
この場違いの少女の頭の上にはマグロという奇怪な名前が浮いている。
「ここ、どこ…?」
そう呟きながら、目の前の木をかき分けて進んでいく。
何故踏み鳴らされたであろう道らしきものがすぐ右にあるというのに、そんな場所へと行くのかは謎である。
7月19日。
高校生にもなると、さすがに1人で飯を食おうが何をしてようが そこにいる、そこにいた人 の認識で終わり、誰も話しかけてこないものだ。クラスのグループ化も済んだこの時期、私は見事寡黙な人というキャラを獲得した。
おそらくこれは自分から話していくべきなんだろうか…と思った時には時すでにお寿司、もとい遅し。
これはおかしい。黒髪ロングだし、自分で言うのもなんだが顔は悪くない。むしろ可愛い部類だと思う。身長も153cmと、マスコットと思われてもいいくらいだ。
しかし何やら不穏な空気がクラスを伝う。
曰く、高嶺の花だから触れてはいけない。
曰く、先生であろうと命令ひとつでクビにできる。
曰く、家は名のある名家で、不快にさせると後々天罰が下るらしい。
そんなわけないじゃん!
話しかけてくれたら答えますし、親はリーマンに主婦。私は一人暮らししてるけど。例え私が怒っても、被害は その時蹴った石くらいだろうよ。
そんな過大評価された私は、見事『高校ひとりでがんばりま賞』を授与したのだった。心の中で。
これが高校デビュー失敗ってやつなのかな。
そんな憂鬱な思いから解き放たれるべく、密かに複製した 屋上の鍵 を片手に弁当とブランケットという、ドキドキ!学園生活キット(私調べ)を侍らせつつのんびりと向かうのだった。
キラキラな青春の香りをドアで遮断しつつ、私は入口の日陰で今日の弁当を堪能している。
そんな時だった。
デデデ、デーンっというベートーベンの運命が右ポケットから鳴り響く。
これは…面倒なやつだ!
姉からのメールが届いたことを知らせる。
画面を見ると、
「最近流行りのものが手に入ったから今日着くようにアンタの家に送ったわ。一緒にやるわよ」
嫌な予感が当たった。
姉は面倒事を押し付ける天才だ。
私の嫌がることなら率先して私に回し、楽な仕事だけを綺麗に選び抜くエキスパート。
これは単に流行りに乗るだけではなく、面倒事を押し付けるつもりであることは見え透けている。
「しかし…最近の流行りって?」
あいにく私は外界には縁のない人類。
スマホは一応持ってはいるが、メール以外は触らない。
私自身が暇を愛する人という自覚はある。
趣味の欄に書けちゃうくらい。認められないだろうけど。
つまりどういうことかと言うと、やりたくないし面倒くさい。
これも全て高校生活に友人という存在がいたら代わるのだろうか。
少なくともスマホはもう少し使うかもしれない。
無事昼休みが終わり、それに気が付かず寝過ごし、まるで何かを成し遂げたような堂々とした面構えで自分の席に戻る。
…いや分かってる。理由を話せばぼっち卒業の第一歩を踏めることを。
素直に、寝過ごしましたと言えばいいことを。
「おかえりなさい、授業を続けます」
私は知っている。すました顔で授業再開を告げた、まだ20代前半のイケメンと評判の先生の手が微かに震えていることを。
私が先生の社会的な生命を握っているために…と、勘違いしているために遅刻の理由すら聞けないことを。
戻ってきてすみませんでした。
学校を終えるチャイムと同時に教室を出て、私のすることはひとつ。
姉が言っていた荷物を受け取るため、まっすぐ家に帰る。
…なんてことはする訳が無い。
確かに姉は怖い。
が、逆に考えよう。
受け取らなければ勝ちなのだ。
流行りかなんだか知らないけれど、私は絶対に受け取らないぞ!私はオマエの奴隷じゃないんだ!
「とか、考えてるんじゃないかな?」
ポンと、肩に手を置かれる。
「え?」
顔を上げるとそこには、
「誰から逃げるだって?」
貼り付けたような笑顔をしている姉の姿があった。
「おにょい!?」
こ、これは!戦略的てったいたい痛い痛い肩外れる!
大人しく姉の車に乗せられ、縮こまることしか出来なくなった私。
そんな時、救世主が窓から!?
「次回、ヤツには誰も勝てなかった…なんてね、ハハっ」
「アンタ遂に頭おかしくなったの?」
姉は相変わらず姉だった。
私ごとき勝てないのは分かっていたんですけどね。
どうも携帯電話にはGPSとやらが付いているらしい。地図で位置もバレていたみたいだ。
最近の携帯はこれだから。
姉が最近ハマっているらしい、韓国語の曲を聞きながら無心で前を見つめる。
日本人なら日本語大切にしろよ と、思ったが言ってから叩かれるのであれば虚無の領域に達するしかない。大人しく、目指すは無所有処。心を無にすることに徹した私だった。
車から(当然のように私が)荷物を運びこみ、散らかっているゴミを袋にまとめ、あれこれ指示を出す姉にビールをお酌し、やっと一息ついたところでようやく本題に入る。
「なんで家に来たの?」
「アンタが荷物受け取らないだろうなって思って」
いやいや、受け取ったかもしれないじゃん。
「受け取ってないでしょ?」
「申し訳ありません」
45度深々と謝罪する。当然のように使われる最敬礼も、昔姉からイジメられていたからこその鍛え抜かれた技。本当はやりたくない…でも頭が勝手に下がっちゃう!
「さてさて、ちょっとそこに立ってみて?」
何をする気?
よく分からないまま、目の前に立たされる。
姉は荷物をガサゴソと漁り、何個かの道具を出す。イヤホンと、頭につける…もの…?
「ソイソイっとソイソース♪」
訳の分からない歌を歌いつつ、私に装着していく。
街中で見かけるVR…を、更に薄型にしたようなものを頭に付けられ、イヤホンをする。
ソファーに投げ捨てられてから、姉が何やら言っていた気もするけどイヤホンをしてるせいか聞き取れない。
「カス…の方を………リア……みつか…から!」
何を言っているのかさっぱりだ。
そして頭に軽い衝撃が走り、
「起動します」
という機械の声と共に世界は一変した。