気分転換
三題噺もどき―にひゃくごじゅういち。
珍しく雨の日が続いたが、今日は久しぶりに晴れた。
どうやら、今日以降は日の目ばかり見る羽目になるそうだ。
別に天気がいいのはありがたいのだが。よすぎて暑いと言うのは勘弁してほしい。
外は天気が良すぎて服装の調節が難しい。
「……」
かと言って、雨が好きなのかと言われるとそうでもないのだが。
ジメジメするし、髪は広がるしうねるし、濡れるし、いいことはない。頭が痛くなることもある。
だが、雨の日に響く音は嫌いではないのだ。むしろ好きだと言ってもいいぐらいだ。
水の音というのは、聞いているだけで、不思議と落ち着く。
「……」
今こうして、家の近くを流れる川の隣を歩いているのも。
もしかしたら、無意識に癒しを求めていたのかもしれない。と、はたと意味の分からない気づきをしてみた。
だがまぁ、確かに、少ないとしても、安らぎは得ている。
聞こえるか聞こえないかぐらいの、ささやかな水の流れる音。
それに混じって、木々が揺れる音。
ときおり、何かが飛び立つ音もする。
「……」
ここの川は、自然保護なんちゃらに指定されている。らしい。どっかの看板にかいてあった。
少し外れれば、車が大量に走る道があるのに、保護も何もないと思うが。
―そんなでもこういう自然が残っているのは、案外珍しいのかもしれない。他の町を知らないから、知った口はきけないが。
「……」
川の横に作られた遊歩道を、ひとりで歩いていく。
その道沿いに、桜の木が並んでいるのだが。
これがまた、綺麗に咲く。この時期は時に、歩くには持ってこいの道だ。
若干まばらに咲いているのは気にはなるが、それはそれで可愛げがあっていいのかもしれない。
何事も、完璧よりはぬけがあった方が、可愛いものだと思う。
桜相手に可愛げも何もないが。
「……」
その桜の下の方には、実は菜の花も植わっている。
その黄色が、やけに目にうるさいが。ま、これはこれで。
―もっとうるさいのがいるからなぁ。
「……」
じつは、ちょっとした広場としての役割も兼ねているこの場所。
桜も咲いて、菜の花も並んで。きっと花見日和なのだろう。いい感じに晴れてもいるし。
ここぞとばかりに、家族連れや、若者の姿が見える。
「……」
何で若者と思ったが、そうか。もう、卒業式とか終業式とか終わっているのか。春休み中かな。
今一時は、制服を脱ぎ捨て、各々短い春休みを楽しんでいるのだろう。
こんな所しか遊ぶ場所はないからな、この辺り。
大き目のショッピングモールはあるのだが。この辺に住んでいるのであれば、もう行き慣れてしまって飽きているだろう。
ならばもう、外に出て、ジャンクフードでも食べながら、写真を撮ったりしている方がまだましなのだろう。
「……」
それは、別にいいが。
もう少し静かにできないものだろうか。
家族連れはいいのだが……いやうるさいにはうるさいが。仕方ない。ああいう小さな生き物は言うこと聞きやしないんだ。まだ可愛げもあるし。
だがなぁ、大きな生き物がはしゃいでいても、可愛くもなんともない。
見ていて呆れてくるのだ、ああいうの。別におしとやかにしろとまではいかないが、落ち着きは常に持っていて欲しい。
そんな大きな声で、喋り散らすんじゃない。
「……」
せっかく晴れたから、気晴らしにでもと思って歩いていたが。
なんだか疲れてきたな。余計な疲労をしてしまった気がする。
歩くの事態は大した疲れには繋がらない、たまにしているし。夜はよく歩いている。
「……」
体調というか、体力というか。
そういうのが、メンタルに左右されすぎるところは、直したいものだ。
こんなだから、一向に他人と仕事ができないのだ。
「……」
他人に何かを求められる仕事は出来ない。
責任がのしかかるのもできない。
何かを求める仕事もできない。
その場しのぎの対応が必要なものも無理。
「……」
……何で仕事の話になったんだ?
そういう事ばかり考えこむからよくないんだと、散々言われたのに。
しなくて済むなら、願ったりかなったりなんだが。できないから、こうなっているんだが。他人に知った口きかれるのはムカつくと、このことで教えられた。
「……」
やめたやめ。
なんだか一気に疲れた。
もう、気分転換の意味もない。
「……」
そういえば、少し前に父方の親戚から、ミカンが送られてきたんだ。
旬とかあまり詳しくないから、おいしいのかどうか怪しいところではあるが。ま。変なものはさすがに送っては来ないだろう。
送られてきてすぐに食べていた父曰く、まずくはないらしいから。
それでも食べて、ゲームでもして。
そっちの方が、いい気分転換になりそうだ。
お題:桜・ミカン・制服