よくあるエ□コメ冒頭?【プロローグのみ】
この冒頭のみの作品です。
続きはありませんし、今後書く予定は絶対に有りません。
そこだけはご了承願います。
ピピピピピピピピ!!
ピピピピピピピピ!!
ぼんやりしている頭に、甲高い電子音が響く。
うるさいなぁ……。
そう思って寝返りを売ってからしばらく。
ふと思い出したことがあってベッドから飛び起きる。
「ヤバっ! 今日から学校だ!!」
「行ってきまーすっ!!」
今時珍しい学ランを着込み、急いで登校の準備を済ませた僕は、玄関の施錠をしっかり確認した後に駆け出した。
僕は現在一人暮らし。
両親は仕事の関係で海外を飛び回ってばかりで、この家には数年に一度帰ってくるかどうか。
そんな環境でご近所さんは優しくしてくれて、なんとか生活できている。
今日から僕は進級して、2年生。
後輩も出来ることだし、先輩として遅刻する事はゼッタイ避けたい。
クラスメイトから褒められている運動神経と陸上部で長距離走をやっているスタミナにモノを言わせて、全力疾走だ!
「門が閉じるまでに間に合ってよ、僕の足!」
家と田んぼが立ち並ぶ、なんとも中途半端な町の道をひた走り、学校まで後半分といった所。
………………。
「うん?」
風を切って走っている僕の耳に、妙に気になる小さな音が聞こえた。
遅刻するかも知れない苦悩はあるけど、その小さな音はそれよりも惹かれてしまう。
なんの音だ?
どうしても気になってしまい、発信源を探そうと脇道へ入る。
ズズン!
「きゃあっ!!?」
するとそこには、大きなビルが建てられそうな広い更地がある。
そして大きく、黒く、無数に蠢く触手を生やした、ドロドロした泥の山。
少し離れた更地の壁には、以前クラスの友達から見てみろと言われて見せられたアニメ雑誌で、メカ少女と紹介されていた様な女の子が壁に激突していて、ぐったりと倒れてしまっている。
ピッチリしたボディースーツに、身にまとった兵器然とした機械郡。
でもその機械の一部と銃や刀と言った、武器らしき物は周囲に散らばってしまっている。
「これは……?」
これはなんなのだろうか?
「映画かなんかの、撮影なのか?」
僕の理解を超えた光景がそこにはあり、頭が働かずに突っ立っていた。
「なんでここに民間人が! ぐっ……!! そこのあなた、早くにげなさい…………!」
不意に壁でぐったりしていたおんなの子が、僕に顔を向けてプルプルした腕を上げて声を出していた。
その声には必死さが滲んでいて、映画撮影の域を超えているんじゃないかと思ってしまう。
それでこの後はどうなるんだろうと思っていると、背中が影に覆われて暗くなった。
「なんだ?」
この原因を知ろうと振り返ってみると、あの黒くてウネウネしたやつが、僕のすぐ近くまで迫っていた。
「あ………………あぁぁ……!」
近くまで寄ってこられると分かる。
コイツ相手に話し合いは無駄だ。
それ以外にも、コイツは人間を食べる事を存在意義としているような、人類の敵であるような。
そんな感じが本能から分かってしまい、拒否感や嫌悪感まで湧き上がってくる。
「逃げなさい……!」
でもコイツと僕には圧倒的な差が有ると、僕がいくら長距離走をやっていたとしても、簡単に逃げられる様な相手でもないのも分かってしまう。
「逃げなさい……っ!!」
壁の女の子が痛みをこらえて僕に必死に呼びかけてくれるけど、それでも僕の心が「逃げよう」と思ってくれない。 体が動いてくれない。
「逃げて……!!!」
心と体が動かないんだよ!
そんな言葉を口にする事すら、僕の心と体は許してくれない。
そんな僕へ、まるで女の子に見せつける様に異様なほどゆっくり迫る。
僕が動けないのが分かったのだろう。
女の子が、
「ええい! ワタシのユニットが壊れてなければ……! 動いてよ、このポンコツ!!」
なんて悲痛な声を上げる。
その声が耳に入るのと同時に、僕の体が僕の意識に反して勝手に動く。
僕の頭……視線はメカ少女から落ちて散らばった機械を視認。
そっちへ向けて、僕が理想としているけど出来なかった疾走フォームで駆け出す。
なんだよ。 僕でも綺麗に走れるじゃん。
場違いな感想を持っていると、アッという間に機械までたどり着いていた。
「待ちなさい! それは本人だけしか身に着けられないのよ! それにユニットは女の子専用で、男の子じゃあ無理なの!!」
女の子がなにか言っているけど、体は勝手に動く。
まるで装備方法を知っているかのように、両肩のユニットパーツを身に着ける。
「うそ……!?」
まだ動くか肩ユニットの推進機構を吹かしながら軽く動かしてチェックしつつ、銃だって僕は知らないはずなのに、なんだかガチャガチャ言わせながら触ってまだ使えるか確認する。
「ワタシのユニットなのに、なんで……!!?」
今度は銃は左手で保持して、刀……っぽいのをひと振りして具合を確認する。
確認するだけじゃなくて、刀身の腹に僕がキ……キキキキ、キス…………をすると、刀が淡く光りだす。
「知らない! なんなの、ブレードユニットが光るってなんなのっ!?」
そこまでやっていると、いくらゆっくり動いている黒いウネウネだって、10歩の距離も無い所まで寄ってきていた。
でも僕の心に焦りは無い。
そもそも僕の意思は体に伝わっていないから。
…………もうなにが起きても知らん。 と吹っ切れたとも言える。
「あ……逃げて! ユニットを使えたとしても、素人じゃあ絶対に勝てないからっ!」
女の子もアレが近付いてきたのが分かったのだろう。 また逃げろと言っている。
でも僕の体は、逃げようとしていない。
むしろ。
「ふっ……!」
腰を気持ち落として姿勢を安定させて、銃に入ってる弾を撃ち尽くして、黒いのの動きを止める。
「ダメ、逃げてぇ!!」
それから肩ユニット(とやら)の噴出炎を勢いよく出し、銃を放り投げてから淡く光る刀を両手で握って構えて。
…………なんか全然理解できないけど、僕の体も眩しい位に光りだして。
そのまま飛びかかる!
「いやあァァァァアア!!! …………あ?」
…………うるさい。
なんて思っている内に黒いのの脇を通り抜けていて、体と刀身の光が治まって、なんか体が格好良く刀身の血振い(付いてるのは黒くてドロドロしたのだけど……)を勝手にしていた。
体が振り返ると、黒いのはなぜか粉みたいに散り散りになって飛び散り始めていて、これで死んだんだなってなんとなく分かる。
「え? あなた、学ランなのに胸が張ってる……もしかして女の子だったの? でもここに走ってきた時は……え? ええ?」
僕が黒いのが完全に死んでいるか警戒している間に女の子が何か言っているけど、でも僕自身はそれを聞く余裕は無い。
なぜか黒いのを切ってから、異様に眠いんだ。
こうして立っているのさえ、本当に大変なんだ。
「え? フラフラしてる? ちょっと、大丈夫なの!?」
壁の女の子は少し回復したらしく、ちょっと苦労しているけど立てる様になったみたいで、こっちを心配そうに見ている。
「ダメ。 眠い。 意識飛ぶ」
カタコトな言葉を出すだけで精一杯。
いまにも、ほら。
黒い粉が完全に飛び散ったのを見届けおわった瞬間からはよけいに。
目の前に眠気をさそうふわっふわな羊たちが〜……――――
「あ、ちょっと! 起きて! 起きなさい!」
む〜り〜……。
たっぷり寝たあとの朝なのに、睡魔に負けてしまう僕には思うことがあった。
あの変な黒いのに遭遇してから、ずっと自分の意思とは関係なしで勝手に体が動いて、今また勝手に眠くさせられて。
なんでこんな理不尽な目に遭うんだ?
と言うか僕は確か……。
あー、これは学校は遅刻確定だ。 ヤバいなぁ…………。 これは欠席になっちゃうよなぁ。
いやだなぁ。
ユニットを装備すると(きだけかどうかは知らん)日本人離れした髪のい色になる設定があるかも。
それで普通なら髪の色だけ変化ところだけど、不思議パワー(伏線を埋めるならそれ)でTSと。
あと、黒いのは周囲に異空間を作り出す能力が有る。
なので基本、バトルは暗闘扱いとなってます。
その異空間でいくら物を壊しても、壊れた影響が残るのはユニットとそのユニットを身に着けた人の怪我位。 もちろん空間内で命を落とせば、空間解除されても遺体がリアル空間に。
あ、血振いってのは、時代劇とかで殺陣が終わったあとの所作。
刀に付いた血のりを振って落とす動き。
これを知ってたのは、長距離走の練習中に剣道部が格好良い動きの研究〜とか言って、やってたのを見ていたから。