第7.5 その頃公爵家では
うーん....。猫が登場しない回です。
公爵家の執務室には大量の書類が積まれており、今年で60近い公爵は放心しながら書類を処理していた。
少しすると執事のラースが入室してくる。
「フェリス様。また手が止まっていらっしゃいますよ」
「そうはいうけどのぅ...。」
この国で公爵を拝命しているフェリスは、戦争においても無敗を誇っている。そのため、他国にその無敗の戦闘力から戦鬼と恐れられている。しかし、そんな戦鬼ですら恋してやまなかったミケがいなくなったことで大打撃を受けていた。
ミケが死亡して以降、書類処理をしているとミケを思い出し手が止まるということが繰り返し起きている。執事であるラースが見つけるたびに苦言を呈しているがあまり効果はないようだった。
そのせいで普段であれば小一時間あれば片付くような案件ですら終わらないような状況に陥っていた。
しかし、実際はミケが死亡してから4日間はもっと酷かったのだ。
まず初め一日目は年寄りであるにも関わらず自室で泣き続け、泣き止んだと思えば食事が喉を通らず何も食べないことが続き、ラースとメイド達が半ば無理矢理食べさせたのだ。
それだけ、ミケは彼にとって大きな心の癒しとなっていたのだ。
「だってのう、今まではあの愛しいミケが膝の上にずっといたのに,,,,」
「はぁ、こんな姿を天国のミケちゃんが見たらどう思うのでしょうね?」
フェリクスはハッと顔をあげて書類をテキパキと処理しだした。
ラースは応急処置ではあるものの、あまりにも書類が止まってもらっては困るので渋々だったがミケを引き合いに出して仕事をしてもらうことにした。
ただ、応急処置であるのは間違いないので明日にはミケのことを思い出して、また手が止まるのであると考えるとラースは頭が痛くなるのだった。
「それとフェリス様、冒険者ギルドから気になるご報告が上がっております。地下水道の清掃依頼を受けた下級冒険者が複数人、まだ帰っていないという報告がございました」
「なるほど、もしかすると誘拐とかもあり得るな。それにもし用事があったとしても公爵家が出している依頼をほったらかすとは思えん」
公爵家から出している依頼ということは、すなわち国が出している依頼である。下手したら国に目をつけられる可能性があるため、よほどのことがなければ依頼をばっくれることはない。
そして国が出している依頼だけあって掃除でも給金はとてもいいものだ。
しかし、その依頼を受けたまま連絡もなく帰ってこないというのは冒険者の身に何かが起きていることになる。
冒険者は基本的に自己責任だが、戦闘技能を持った人間であるため、もし彼らに何かがあったとすると、戦闘力が低い領民が巻き込まれてしまったらひとたまりもないのだ。
それを危惧してラースはある程度の調査をした内容をフェリスに提出して今回相談することにした。
見落としがないようにじっくりとラースの渡した書類にフェリスが目を通していると、気になることが書かれていたのだった。
(ん?第三区画の依頼を受けたものだけが帰ってきていないのか)
公爵領は広いため、地下水道の依頼はいくつかの区画に分けて依頼を発行している。
区画によっては公爵側の都合から清掃の依頼を受注した者しか入れない箇所もあった。そこから彼らが消えた現象について二人はあらかた予想がつき始めたのだった。
「第三区画には確か、討伐をして活動を終えたダンジョンがあったはずだな?」
「その通りです。もしかすると活動が再開した可能性があります」
「なるほど。とすると帰ってこられないのは理解できる。この依頼を受けているのはほとんどが下級の冒険者だ。ただ、いくら下級冒険者といっても第三区画の依頼を受けた全員が帰ってきていないのは少しおかしい」
「ですので今回相談に参ったのです。領民に危険が及んではいけませんし。早いうちから騎士団から調査隊を派遣するのはどうでしょう」
確かに第三区画にはダンジョンがあった。しかし、この公爵領を下賜された際にフェリス自身がダンジョンを攻略して討伐し終わっているものだった。
ただ、このダンジョンは活動が再開していたとしても下級冒険者でも帰ってくることくらいはできる難易度だったはずなのだ。ある程度の不注意があったとしても、全員が帰ってきてないのはおかしいのだ。
「そうだな。ただ、討伐した時は死霊系の魔物が多かったはずだから儂も行こう」
「わかりました。騎士団に通達しておきます」
作者「猫が登場しない回なので筆がいまいち乗らないデース。私に癒しを...。」
作者「はっ!そういえばここにはミケが!」
作者「ん?立て看板?なになに、『ただいま出張中。ミケより』...。」
作者「うえぇぇえぇん。私の癒しがぁぁあぁあああ!!!」
本編、後書き通して猫が登場しないなんて....。