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フラれたショックで侯爵令息から海賊の頭目になったんだが ドタバタワイワイまあ楽しいのかもしれない  作者: 水渕成分


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70 ジェフリーとアドルフ 一騎打ちでなければならない

 周りは騒然とする。


 通常の考えでは戦況が有利な側から一騎打ちを申し出るなど考えられない。不利な方が戦局の逆転を狙って申し出るものだ。


 しかし、何かを吹っ切ったようなジェフリーはなおも怒鳴った。

「アドルフッ! いいのかっ? 貴様っ! このままじゃホラン王国の将兵が死ぬだけだぞっ! 何とかしたいんなら出てこいっ!」


 動揺はアトリ諸島の者ばかりでなく、ホラン王国艦隊の者にまで広がる。


 理解不能な言動。


「ふっふっふ、はあっはっは」

 それでも指名対象者であるアドルフには伝わったらしい。不意に笑い出した。

「お呼びとあらば仕方がない。行ってくる」


 さすがにレオニーはあわてて制止する。

「どうして、ジェフリー(相手)の挑発に乗るのです? これは『罠』でしょう?」

 

 それに笑顔で返すアドルフ。

「案ずるな。確かにジェフリーは姑息な男だが、これは『罠』ではない」


「どうして『罠』ではないと分かるのです?」


「ジェフリーはこれ以上敵味方の死傷者を出したくないだけなのだ。相変わらず軍人に向かない奴だ。さてじゃあ行くか」


「待ってください」

 レオニーは納得していない。

レオニー()にはジェフリー(あの男)のことが信じられません。レオニー()もついていきます」


「それがレオニーの望みならそうするがいい」


 ◇◇◇


 ホラン王国艦隊旗艦の艦首にアドルフ・レオニー夫妻がその姿を表すとどよめきが上がる。


 アドルフは右手で射手たちを制し、射撃を止めさせる。


 それを見たジェフリーもアトリ諸島側の射撃を制止する。


 さすがにエンリコは心配し、アミリアに声をかける。

「大丈夫なんですかい? アミリア様。せっかく勝ってたのに一騎打ちに持ち込んで」


「大丈夫」

 アミリアは笑顔で返す。

「ジェフリー兄さまが考えに考え、悩みに悩んで決めたこと。それに間違いはない。だけど……」

 ここでアミリアの目が光る。

「あの魔族(デーモン)が何らかの形で一騎打ちに加わったら、アミリア()は全力でそれを排除します。その時はエンリコ。あなたも力を貸して」


 大きく頷くエンリコ。


 ◇◇◇


 両軍のざわめきの中、アドルフはゆっくりとその歩を進め、ジェフリーと対峙する。


 アドルフの後方にはレオニー、ジェフリーの後方にはアミリアが控える。


 アドルフはやはりゆっくりと帯剣を抜く。ジェフリーもそれに合わせて剣を構える。

「久しぶりだな。アドルフ。またこうして貴様と戦えるとは夢のようだぜ」


「ふん」

 アドルフは冷たく鼻を鳴らす。

「あいにくアドルフ()にはジェフリー(貴様)のような甘い感傷に浸る趣味はないのだ」


「相変わらずつまんねえ奴だな。アドルフ(貴様)は」


 ◇◇◇


 先に相手に斬りかかったのはアドルフの方だった。強い剣撃だが、ジェフリーはがっちりと受け止める。

「うれしいぜ。アドルフ。本気で殺しにかかってくれてるな」


「ほざけっ! その軽口、すぐにきけなくしてやるわっ!」


 二合三合、二人の剣は互角の力でぶつかりあう。最高級の技能を持つ者同士の戦いに周囲の者はただ固唾を飲んで見守ることしか出来ない。


 そして戦いを繰り広げる中、ジェフリーの心中にある感情が湧いてきた。


 「楽しい」だ。


(楽しい。ガシェウで怨霊たちと戦った時もそう感じたが、やはりアドルフとの戦いは格別だ)。


 ガツンガツン


 ぶつかり合いは続く。

ジェフリー()は楽しい。そして、きっとアドルフもそう思っているはずだ)。

(修練を積み、成果が出る。それを繰り返し、高みを目指す。それをやってきた者同士のつながりは今もってあるはずだ)。


 ジェフリーはまた口を開いた。

「なあアドルフ。俺たちはどこで道を間違って、こうなっちまったんだろうな?」


 ◇◇◇


「!」

 アドルフの手が一瞬止まる。だが、それは「一瞬」に過ぎず、すぐに剣撃を再開した。

「ふん。それはアドルフ()ジェフリー(貴様)からエリザを奪い取った上に、捨てて、レオニーと結婚したことへの嫌みか?」


「ああ」

 ジェフリーはアドルフの剣撃をしっかりと受け止めながら答える。

アドルフ(貴様)がどんな手段をもってしても、エリザを我がものとしたかったというのなら分からんでもない。だが、その後、エリザと婚約破棄したのは何故だ?」


「気に入らんな」

 アドルフの剣撃に一層の力が入る。

ジェフリー(貴様)のその上から目線。実に不快だ。剣の実力も腹の底では『実は自分の方が上』だと思っているのだろう。そして、エリザから愛されるのも当然とも思っていたのだろう」


「!」

 当惑するジェフリーだが、受け止める手は緩めない。

「何を言っている? 近衛魔道師団での評価はアドルフ(貴様)の方が上だったではないか」


「白々しいことを言うなっ! アドルフ(こっち)ジェフリー(貴様)との試合は必死だったんだっ! 当時のヘンリー国王やエリザにいいところを見せるためになっ!」


「……」


「それをジェフリー(貴様)は何だっ! 勝っても負けてもヘラヘラ笑ってやがって」


「いや、それはジェフリー()はそういう人間だから……」


「気に入らんっ!」

 またもアドルフの剣撃に力が入る。

アドルフ()ジェフリー(貴様)だけは許せなかった。だから策を講じてまでエリザも手に入れた。そして、ジェフリー(貴様)は出奔した。アドルフ()は初めてジェフリー(貴様)に勝ったと思った」


「……」


「だが、ジェフリー(貴様)が出奔してもエリザの心はジェフリー(貴様)に向いたまま。アドルフ()は空しかった。そんなアドルフ()を、アドルフ()だけを愛してくれたのがレオニーだ」


「……」


次回第71話「ジェフリーとレオニーも一騎打ちでなければならない」

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― 新着の感想 ―
[一言] レオニーは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ!(迫真)
[一言] 一騎打ち始まりましたね! それぞれの譲れない思い。 楽しみです☆彡
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