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フラれたショックで侯爵令息から海賊の頭目になったんだが ドタバタワイワイまあ楽しいのかもしれない  作者: 水渕成分


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67 フラれたショックで侯爵令息から海賊の頭目になったジェフリーが王女様と最後を共に出来るとは光栄


「すまない。ではこういうのはどうだ? 最後の魔法力は『拡声』に使う。『拡声』する声は『みんな逃げろっ! これは命令だっ!』だ」


「いいですね。それでアミリア()たちはどうします?」


「魔法力が切れても、他の連中が逃げるための時間稼ぎに出来るだけ回避しよう。でも最後は……」

 ジェフリーはいったん言葉を切る。

「死んでしまうことになっちまうなあ」


 その言葉にアミリアは微笑んで返す。

アミリア()と一緒じゃ嫌ですか?」


「いや、フラれたショックで侯爵令息から海賊の頭目になったこのジェフリー()が王女様と最後を共に出来るとは光栄だ」


「ふふふ。アミリア()も初恋の人と最後を共に出来るのは幸せですよ」


「ああ、ジェフリー()もしあわ……ぬおっ、また撃ってきやがったっ! 『体力回復』」


「甘いムードにさせてもくれないですね。『体力回復』」


 ◇◇◇


「千里眼」

 アドルフは魔法でジェフリーとアミリアの様子をうかがい、ニヤリと笑った。

「レオニー。思ったとおりだ。ジェフリーとアミリア(あいつら)は挑発することで、こっちを引きつけたかったらしい。その証拠に挑発を止めようとしない。こっちが近づかないと困るのだ」


「そうなのですか」

 しかし、レオニーはまだ納得がいかない様子だ。

「そうは言われましても、ことにジェフリーとアミリア(あの二人)には恨みもあります。近づいてひと思いに撃ち殺してやりたい気持ちがあるのですが」


「案ずるな。さすがにジェフリーとアミリア(あいつら)も疲れてきている。殺せるのも時間の問題だ。そうなればもうアトリ諸島に魔法を使える奴はいない。簡単に制圧できる。しかる後にイース王国本土も占領する。そうなればアドルフ()たちの夢が叶うぞ。レオニー」


レオニー()たちの夢……」


「ああ、ホラン・イースの二王国が我が手に収まれば、先進七カ国間の『奴隷貿易禁止』の紳士協定なんてくだらないものは即時破棄だ。七カ国の中の二国が抜ければ協定も有名無実となる」


「アドルフ様……」


「そうなれば人間(ヒューマン)亜人(デミヒューマン)の間は決裂する。それに乗じて魔族(デーモン)が世界を支配するのだ」


「アドルフ様。人間(ヒューマン)のあなたが何故ここまでやってくれるのです?」


「簡単な理由だ。レオニー(愛した女)魔族(デーモン)だった。それだけだ」


「アドルフ様。わが生涯、あなたに捧げます。いえ、何度生まれ変わっても、あなたに」


「ありがとう。レオニー。おっ、ふふふ。ジェフリーの奴、だいぶくだびれてきたようだな。もう何発か撃てば、確実に仕留められるな。あばよ、我が宿敵よ」


 もう何度目かとも分からないが、砲弾は更にジェフリーたちに向かい飛んでいった。


 ◇◇◇


「ジェフリー兄さま。まだ回避できますか? 『体力回復』」


「もう一回くらいはなんとかな。でも、この次飛んできたら『退却命令』出した方がいいな。『体力回復』」


「そうですね。アミリア()もそう思います。ここまで頑張ってきましたが、魔族(デーモン)はともかくアドルフ公爵には通用しませんでしたか」


「悔しいがそうだな。いよいよ駄目か。最後まで諦めたくはないが。すまんがアミリア。手を握ってもらえないか?」


「ふふふ。やっとジェフリー兄さまから誘ってもらえましたよ」


「すまねえ。不器用なもんでな。でも最後くらいは誘わせてくれ」


「ありがとうございます。喜んで」


 ◇◇◇


 次の砲弾の飛翔音が聞こえてきた時、ジェフリーもアミリアも覚悟を決めた。


 今度こそ回避できないかもしれないかもと。


 しかし、着弾とそれに伴う悲鳴は意外なところから上がった。


「馬鹿な。どこから撃ってきたのだっ?」

 驚愕するアドルフ。


「アトリ諸島の方からは撃ってきていません」


「何? どういうことだ?」

 自身が搭乗する艦に砲弾が着弾したことを確認したアドルフ。「千里眼」で砲弾の発射されたと思われるを視認しようとする。


 だが、それは思わぬことで中断された。


「本当に久しぶりね。アドルフ」


 ◇◇◇


 アドルフは絶句した。念話を送ってきた相手は現イース国王エリザだったからだ。


「いや待て」

 それでもアドルフは思い直す。

「以前もエリザが来ていると言われたが、後で検証してみたら来てはいなかったことがあった。だまされんぞ」


「ふっ、そう思うなら『千里眼』で確認してみればいい」


「言われなくてもやってやるわ」


 アドルフが自らに「千里眼」をかけた後、その目に映ったのは、まごうことなきエリザ本人とその脇に控える一人の少年だった。


エリザ()本人であることが分かりましたか? アドルフ。そして、脇にいるのがエリザ()の近習にして、イース王国第一艦隊司令官代理アダム男爵令息です」


「!」

 アドルフはまたも驚愕する。

「イース王国の第一艦隊だと。イース王国本土は今ホラン王国(わが国)の第二第三第四艦隊の攻撃を受けているはずだ。国防の最高責任者の国王が最精鋭の第一艦隊をアトリ諸島(こんなところ)に連れてきていいのかっ?」


 エリザは淡々と答える。

「なるほど。アドルフ(あなた)ホラン王国(貴国)の第二第三第四艦隊がどういうことになったか。ご存じないのは無理ありません。もはやアドルフ(あなた)に連絡の取りようがないですからね。エリザ()のところにイース王国(わが国)のラ・レアルから伝えられた最新の状況をお知らせしましょう」

次回第68話「イースタンプトン港攻防戦終結」

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[一言] 第二第三第四艦隊はどうなった!? 次回にこうご期待 (`・ω・´)ゞ
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