表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フラれたショックで侯爵令息から海賊の頭目になったんだが ドタバタワイワイまあ楽しいのかもしれない  作者: 水渕成分


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/77

61 ンマゾネスの体験談は参考になるか

 フラーヴィアは目を伏せた。

「ごめん。今すぐは応えられない」


「謝らないでください。エンリコ(自分)が好きなのはのびのび生き生きしているフラーヴィア様なんです。無理矢理求めたら、それこそ魔族(デーモン)と同じになっちまう」


「……」


「今日はもう帰ります。でもこれからもフラーヴィア様に受け入れてもらうまで頑張りますからね」


 エンリコはフラーヴィアの前では笑顔だった。


 しかし、フラーヴィアの自宅から離れると肩を落とした。

「ふいー。また駄目だったか」


 見ると「宴」はまだ続いている。真ん中に居座り誰より飲み、食い、大声で笑っているのはンマゾネスだ。


(あー、ンマゾネスさんだ。考えてみると、あの方だってジェフリー(お頭)に惚れてたんだよなー。今はどうなんだろ?)


 ◇◇◇ 


エンリコはンマゾネスに近づく。

「ンマゾネスさん。やってますね」


「ん? 誰かと思えばエンリコか? エルフ語しゃべれるのか?」


「片言ですけどね。いくつかお聞きしてもいいですか?」


「おうっ、何でも聞いてくれや。いや、その前に飲めっ!」


「いただきます」


「おうっ、いい飲みっぷりじゃねえか。もっと飲めっ!」


「いただきます」


「ほれぼれする飲みっぷりだなあ。もっと飲めっ!」


「いただきます」

(いかん。これでは話が始められんぞ)。

「ンマゾネスさん。飲みながらでいいんですが、お話うかがえます?」


「おうっ、何でも聞いてくれや」


「ンマゾネスさん。以前、ジェフリー(お頭)求愛(プロポーズ)してましたよね? その気持ちは今も残ってるんですか?」


「ん? ンマゾネス()求愛(プロポーズ)したのはアミリア王女だぞ。ヘタレジェフリー(お頭)じゃないぞ」


「いえいえ、アミリア王女にも求愛(プロポーズ)されてましたが、その前にジェフリー(お頭)にも求愛(プロポーズ)してたじゃないですか?」


「んー、そうだっけ? はっはっは、昔のことは忘れたよ」


「そっ、そうですか」

(うーん。ンマゾネス(この方)、いろいろな意味で規格外だなあ)。

「では、アミリア王女のことは今はどう思っているんです?」


「んー、アミリア王女は心も体も強いから、嫁にしたかったんだがなあ。長老とンジャメナたちから土下座されて『アミリア王女はヘタレジェフリー(お頭)に一途な思いを寄せ続けているんだから、口説くのは勘弁してくれ』と頼まれて、しょうがねえなあと思っているうちに、まあいっかと思えてな」


「……」

(やっぱンマゾネス(この方)、恋愛でも規格外過ぎて、参考にならないわ)。


「なんだい、そんなこと聞いて。ひょっとしてエンリコ、ンマゾネス()に気があるのか? うーん、悪くはないが、もうちょっと筋肉つけてから、もう一度告りに来い」


 エンリコは苦笑した。

「アドバイスありがとうございます。でも、エンリコ()はフラーヴィア様一筋なんで」


 ンマゾネスは豪快に笑った。

「はっはっはっ、そうかそうか。あの商会の当主のねえちゃんか。うん。あれもいい女だ。もうちょっと戦闘(ケンカ)が強けりゃ、ンマゾネス()の嫁候補だったが、まあいいっ! エンリコッ! 頑張れっ! ンマゾネス()は応援してるぞっ!」


 ンマゾネスはバンと右手の平でエンリコの左肩を叩く。


 その衝撃にエンリコは一瞬顔をしかめるが、すぐに笑顔になる。

「ありがとうございます。頑張ります」


 ◇◇◇


 ホラン王国には嵐が吹き荒れていた。


 現職の国王が病に伏した。


 そればかりでなく王太子も病に伏したのである。


 この緊急事態に摂政に就任したのは赴任先であるマルク群島から夫アドルフと共に帰国したばかりの第一王女レオニーであった。


 レオニーが最初に行ったのは、マルク群島総督から海軍大臣に昇格したばかりのアドルフを更に宰相にすることだった。


 自らの配偶者を宰相兼海軍大臣にすることを不満を持つ者は多く出た。また、魔法力を持つ貴族はレオニーが「国王の娘」ではなく、「魔族(デーモン)」がなりすました偽者であることを見抜いた。


 それらの者に対して、アドルフ・レオニー夫妻が行ったことは「粛清」だった。


 レオニーの「魔眼」によって、精神的支配を受けた者は命だけは取り留めたが、魔法力をもち、精神的支配に服さない者は「粛清」された。


 ジェフリーから「アドルフの腰巾着」と揶揄され、アドルフがホラン王国に亡命した時についてまで行ったブルーノ男爵も例外ではなかった。


 レオニーの正体が「魔族(デーモン)」であることを見抜いてしまったのである。


 アドルフの「粛清」は「腰巾着」にも容赦なかった。


 自分に対する逮捕状が出たと知ったブルーノはホラン王国から隣国のフラン王国に逃走した。


 だが、アドルフはフラン王国にまで追っ手を差し向けたのである。


 追い詰められたブルーノが取れる手段はもう一つしか残っていなかった。


 かつてブルーノ(自分)が足蹴にした生まれ故郷イース王国を頼ることである。


 ◇◇◇


「イース王国を攻撃する」


 ホラン王国の四つの艦隊司令官及び参謀たちを前にアドルフ宰相兼海軍大臣は宣言した。


 その場にいる者はみな表情が凍る。例外は後方にある玉座に腰掛け、静かに微笑しているレオニーホラン王国摂政だけだ。


「恐れながら……」

 自分が言うしかないと思ったのか、第一艦隊司令官が一歩前に出る。

「イース王国を攻撃する口実がございませぬ」




 

次回第62話「アドルフは独裁する」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >「粛清」 ……怖い! さらに新たな戦が!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ