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フラれたショックで侯爵令息から海賊の頭目になったんだが ドタバタワイワイまあ楽しいのかもしれない  作者: 水渕成分


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55 アドルフはレオニーと共に生きる 

「そうか。レオニー(おまえ)魔族(デーモン)なのか」


 アドルフはレオニーが拍子抜けするほど、淡々と返した。


レオニー()の言葉を信ずるのですの?」


 逆に驚いたレオニーの問いにアドルフは頷く。

「ああ、そういうことであれば、今まであったことの全てが説明がつく」


 一瞬逡巡したがレオニーは再度問う。

レオニー()を殺すのですの?」


レオニー(おまえ)を殺す? 何故?」


魔族(デーモン)人間(ヒューマン)亜人(デミヒューマン)を相剋させ、その上に立ち、世界を支配せんとするもの。人間(ヒューマン)はそう考え、かつてイース王国王太子リチャードを将に魔族(われわれ)を殲滅せんとしたのでは?」


「それはそのとおりだ」


「では、何故、レオニー()を殺さないのです」


アドルフ()レオニー(おまえ)を愛している。理由はそれだけだ」


「アドルフ様」

 レオニーは涙ぐんだ。

「ありがたきお言葉。されどレオニー()魔族(デーモン)人間(ヒューマン)亜人(デミヒューマン)を相剋させ、その上に立ち、世界を支配せんとする望みは変わりませぬ」


「それが何だというのだ? レオニー()レオニー(おまえ)を愛している。そんなことは関係ない」


「そして、アドルフ様。かつてあなたからクローブとナツメグをかすめ取った男ジェフリーとその一味を何度も殺さんとしてきました。ジェフリー(あの男)、あなた様を馬鹿にしたばかりでなく、人間(ヒューマン)亜人(デミヒューマン)の対立を消し去らんとしている。魔族(デーモン)には大変不都合な男なのです」


「面白いじゃないか」

 アドルフの顔がほころぶ。

アドルフ()ジェフリー(あいつ)にやられっぱなしでは面白くないと思っていたところだ。共に手を取り、仕返しをしてやろうじゃないか」


「あっ、ありがとうございます。アドルフ様」


 その後、一人の人間(ヒューマン)と一人の魔族(デーモン)は何度も愛の交歓を交わし、休憩をはさみ、また何度も愛し合った。


 休憩の間の寝物語にレオニーの過去が次々と語られていった。


 世界を支配するため築きあげた魔族(デーモン)の拠点で長く生活してきたこと。


 その場所を現在のイース国王エリザとその妹アミリアにとって、長兄に当たる当時の王太子リチャードに察知され、急襲を受け、魔族(デーモン)は殲滅されたこと。


 僅かに生き残った残った仲間と共にリチャードの命を狙い、魔弾による狙撃で殺したこと。だが、それがために追っ手がかかることになったこと。


 占い師を装い、潜伏していたホラン王国の王都で、お忍びでやってきた第一王女レオニーと出会ったこと。


 第一王女レオニーが旅芸人の男と駆け落ちすることを望んでいることを知り、魂だけの存在にして、その望みを叶えたこと。その代償に第一王女レオニーの身体を手に入れたこと。


 魂だけの存在となった第一王女レオニーと旅芸人の男は、その後、自らの妖液に溶かし、魔力として取り込んだこと。そのことで第一王女レオニーの記憶をも手に入れたこと。


 しかし、アドルフに出会い、婚約者を持つ身と知っても、何としてもその愛がほしくなったこと。それは今も変わらないこと。


「それはアドルフ()も同じだ。ジェフリーを出し抜いてまで手に入れたエリザ。それを擲ってでも、レオニーの愛がほしかった」

「アドルフ様」


「レオニー。共に生きよう。魔族(デーモン)の世界支配を達成しよう。ジェフリーとその一味を皆殺しにしよう」


「アドルフ様。魔族(デーモン)が世界を支配しても、魔族(デーモン)に味方したあなたは支配階層。共に新しい世界を生きましょう」


「レオニー」


「アドルフ様」


 二人は更にいつ終わるか分からぬほどの愛の交歓を交わした。


 ◇◇◇


 イース王国王都の外港イースタンプトン。過去にない繁栄を見せていた。


 現国王エリザが即位以来行ってきた経済施策が功を奏してきたこともある。


 しかし、最大の要因はアトリ諸島との交易が開始されたことだろう。


 デ・マリ商会はフラーヴィアの要請を受け入れ、イースタンプトン港にあった大きな空き家とそこに隣接するそこそこの大きさの空き家を買収した。


 大きな空き家はデ・マリ商会の商館となった。大規模な取引をしたい各種商人、極秘にアトリ諸島の産物を購入したい貴族はこちらを訪ねる。


 商館もひっきりなしに人が出入りしたが、それの何倍も人々が長蛇の列をなしたのは、そこそこの大きさの建物に設営されたアトリ諸島の産物の直売店だった。


 小袋に入れられたクローブ、ナツメグはもちろんのこと、ガラス製品に金細工はイース王国の人々の心を魅了した。


 そして、ここに少年と貴婦人の二人組が直売店の中に入った。


 ◇◇◇


「驚きました。大人気ですね」


「随分待たされましたけど、お疲れではないですか?」


「大丈夫です。みなさん並んで待っているんですから。私だって待たないといけませんしね」


 初めは小袋に入れられたクローブとナツメグをながめる貴婦人。

「はあ、ここまで見事に製品化したんですか。しかもこの値段で。ナイト博士が驚くのを通り越して呆れたと言ったわけが分かりましたよ」


「樹木の専門家の森エルフが育てたそうです。品質も値段もマルク群島産に勝るとも劣らないそうですね」


「悔しい気持ちもありますが、見事と言うしかありませんね。あ……」



次回第56話「少年と貴婦人の正体は?」

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― 新着の感想 ―
[一言] そういうことだったのか( ˘ω˘ )
[一言] 外港イースタンプトン良い港町 (*´▽`*) でもデーモン怖いですね ><。
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