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フラれたショックで侯爵令息から海賊の頭目になったんだが ドタバタワイワイまあ楽しいのかもしれない  作者: 水渕成分


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48 アダムはジェフリーの大事な友達

「うぐっ」

 クレア公爵は懐から短刀を取り出し、己が喉を刺さんとする。しかし、その短刀はウォーレンの手でたたき落とされた。

クレア公爵(父上)エリザ(女王陛下)は自裁は許さぬとおっしゃられたのですぞ」


「うっ、うむ」

 クレア公爵は力なく頷く。


「事態は既に動き出してしまった。これからイース王国(我が国)に出来ることは? クレア卿、辛いでしょうが冷静に答えてください」


 エリザの問いにクレア公爵は声を絞り出す。

イース王国(我が国)最強の第一艦隊が出航してしまった以上、第二第三艦隊は出航させるわけにはいきませぬ。国防が成り立たなくなります。今できることは『攻撃中止。即時帰港』の命令書を持たせた最速のラ・レアル一隻に追いかけさせることのみです。間に合うかどうかは厳しいですが」


 エリザはゆっくりと立ち上がった。その場にいる全員の注目が集まる。

「未検証ですが、アトリ諸島の海賊は我が最愛の(ひと)ジェフリーが率いているという噂です。そして、我が妹アミリアもそこにいるという噂も。あの二人なら撃退してくれるはずです。厳しい戦いになるでしょうが」


 ◇◇◇


「はっ、放せっ!」


「全くアダム(このガキ)っ、最後まで手こずらせやがって、おとなしくサメのエサになれっ!」

 ヒューゴーの命令一下、アダムはシップの甲板から海に放り出された。


「『麻痺』魔法のせいで体が動かねえくせに最後まで口だけは達者だったな」


「ふふ。いいんじゃない。頭だけははっきりしているということは『麻痺』で動けないアダム(あのガキ)は何も出来ずにサメに食われる自分を見ている羽目になるんだから」


「ははは。そうだな。生意気なガキにふさわしい最期だ」


 だが、アダムは生きていた。


 あっという間に波間に飲まれたが生きていた。


(『身体強化』『精霊の守り』)

 近習として、優れた魔法の使い手でもあるエリザ女王に直に教えを受けてきた。サメなどは問題にしない魔法力がある。


(全くヒューゴー(公爵令息)の使う『麻痺』魔法っていうからどんなに凄いのかと思ったら大したことなかったな。むしろ、かかったふりするのが大変だったよ)。

 アダムは「千里眼」の魔法をかけた。

(ありがたい。アトリ諸島までまだ距離がある。うまくすれば第一艦隊より早く着けるぞ。アトリ諸島にジェフリー様がいるというのはあくまで噂だけど、今は信じるしかない。全力で泳いでいくまでだ)。

 

 ◇◇◇


「お頭っ!」

 頭目の館に駆け込んできたのはンジャメナだった。


「ん? 何だ? ンジャメナ」

 腰掛けたままのジェフリーの右腕にはンマゾネス、左腕にはアミリアがしがみついていた。


 一瞬またかと思ったンジャメナだが、今はそんなことを言っている場合ではない。


「港近くの海岸にイース王国の紋章をつけた若い男性が漂着しました。『人間(ヒューマン)』です。貴族らしい服装をしています」


「んー。どれどれ」

 ジェフリーは「千里眼」の魔法を使う。

「あっ、アダムじゃないかっ! 何でアトリ諸島(こんなところ)にっ?」


「ンジャメナ」

 ジェフリーは両腕にンマゾネスとアミリアをぶら下げたまま真剣な表情になった。

アダム(こいつ)は、ジェフリー()の大事な友達(ダチ)だ。長老に言って何としてでも助けるようにしてくれ」


「はい。そう伝えます」


 ◇◇◇


 ゆっくりと頭目の館の扉が開き、長老が顔を見せる。ジェフリーはすぐに「翻訳」の魔法をかける。


「お頭。あの『人間(ヒューマン)』の若者。アダム君」


「おう、どうだ。長老。まさか死ぬようなことはないだろうな?」


「命に別状はない。理由は分からないが相当長い距離を飛ばして泳いできたそうで体力を使い果たしているだけだ。既に滋養強壮の薬草粥を飲ませた。それで寝させようとしたんだが」


「何かあったのか?」


アダム(本人)が一刻も早くお頭に会って話したいことがある、それを言ってからじゃないと寝られないと言うんだ」


(ふーん)。

 ジェフリーは考えた。アダムは真面目な奴だ。そこまで言うなら何か理由があるのだろう。

「よし会ってみよう。但し、長老の眼から見て無理していると感じられたらすぐ止めてくれ」


 ◇◇◇


 アダムは涙ぐんでいた。

「ジェフリー様。本当にアトリ諸島(ここ)にいてくださったんですね。会えて良かった」


「おいおい。泣くようなことか」


「いえ、ことは重大なんです。アトリ諸島(ここ)にイース王国の第一艦隊が向かっています。目的は『姿なき海賊団』の殲滅と住んでいるエルフたちの奴隷化」


「馬鹿なっ!」

 さすがのジェフリーの顔色も変わる。

「先日のように攻めてくるのが海賊というのなら分からんでもない。だが、何で国軍が乗り込んできてご禁制の奴隷狩りをしようとするっ? 司令官は誰だっ?」


「司令官は海軍卿クレア公爵が嫡子ヒューゴー。但し、同船している女魔族(デーモン)(たぶら)かされ、冷静さを失っているように感じられます」


魔族(デーモン)!?」

 ジェフリーはその言葉で全てが腑に落ちた。

「そうかい。そういうことかい。アダム。第一艦隊の編成は?」


「シップ一隻にガレオン五隻。シップには最新鋭のキャネロード砲を搭載しています」


「キャネロード砲? 長射程と破壊力を併せ持つという、実用化したのか。分かった。ありがとう、アダム。もう休んでくれ」




 


次回第49話「死んだエルフたちは無念の思いをンマゾネスに託す」

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― 新着の感想 ―
[一言] 第一艦隊は精鋭ですね! どう対処するのでしょうか (。´・ω・)?
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