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フラれたショックで侯爵令息から海賊の頭目になったんだが ドタバタワイワイまあ楽しいのかもしれない  作者: 水渕成分


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45 レオニーは異常性欲侯爵令息を誘惑する

「そっ、そんなあ」

 執事は泣き崩れ、男はもうそのまま振り返りもせず立ち去った。


「大丈夫だよ」

 少年ウォーレンは優しく執事の肩を叩いた。

「もう女エルフの奴隷は買ってこなくてもいい。そんなことはもうこのウォーレン()がさせないよ」


 執事は泣き顔のまま問う。

「ウォーレン坊ちゃま。そのお言葉信じてもいいのですか。実は私、次々になぶり殺される女エルフたちが不憫で不憫で。でも兄上(ヒューゴー)様には逆らえずに……」


「分かっているよ」

 ウォーレンは笑顔を見せる。

「そんなことはやっちゃあいけないんだ。エリザ女王陛下もその忠臣である海軍大臣(父上)も言っている」


 そして、ウォーレンは思った。

(何とかヒューゴー()には改心してほしかったが、もう駄目だ。もういつ屋敷内に埋められたたくさんの女エルフの骨が見つけられてもおかしくない。ことが露見すればヒューゴー()の処刑だけでは済まない。責任感の強い海軍大臣(父上)は間違いなく死をもって償わんとするだろう。そして、クレア公爵家(この家)は取り潰し。家臣たちは路頭に迷う)。

(もう遅いかもしれない。でも、この事実を一刻も早く明かし、寛大な処分を願い出るしかないっ!)


「執事っ! 馬を一頭貸してくれないか? 出来るだけ早い奴を頼む。心配すんな。必ず何とかするから」


「はっ、はい」


 ウォーレンは馬を駆る。王宮を目指して。一刻も早くこの事実を明かし、兄の愚行を止めるために。不憫な女エルフをこれ以上出さないために。家臣たちを路頭に迷わさないために。尊敬する父が死を選ばぬように。


 ◇◇◇


「けっ」

 ウォーレンの兄ヒューゴーは自室に入る前につばを吐いた。

「うぜえんだよ。ウォーレン()の奴も執事も。女エルフをいたぶるのはヒューゴー()の趣味なんだ。他人の趣味に口出しすんじゃねえよ」


「全くそのとおりよね」


「!」

 ヒューゴーは誰もいないはずの自室から声がしたことに驚愕した。


 声がした方向を見ると金髪碧眼の女が妖艶なナイトウェアを身にまとい、寝台に腰かけていた。

「はじめまして。私の名前はレオニー」


「ふん」

 ヒューゴーはそっぽを向いた。

「娼婦を呼んだ覚えはないぞ」


「あら、呼んでない女と情を交わすのはお嫌?」


「嫌ではないが」

 ヒューゴーは咳払いをしてから続ける。

「今のヒューゴー()は機嫌が悪い。レオニー(おまえ)を茨で鞭打つかもしれぬぞ」


「ふふふ。そんなものよりずっと気持ちよくさせてあげるわ。そして、ヒューゴー(あなた)の夢も叶えてあげる」


ヒューゴー()の夢? それは一体?」


「ふふふ。そんなことよりまずは……」


 ◇◇◇


 ウォーレンが王宮にたどり着いた時は深夜だった。

「海軍大臣クレア公爵が次子ウォーレンだ。真夜中にすまないが、至急クレア公爵()に取り次いでほしい」


 この城の女主人エリザ女王の意向が行き渡っているのであろう。衛兵は嫌な顔一つせずにその意を受け、海軍大臣への取り次ぎをせんとした。しかし……

「申し訳ありませぬ。クレア公爵(お父上)は業務でイースタンプトン港に行ってらして、しばらくお帰りにならないとのこと」


「む」

 ウォーレンは考え込む。この足でイースタンプトン港に行きたいところだが、もはやウォーレン(自分)はともかく馬が持つまい。かと言ってこの場で朝を待ち、新しい馬を借りるのも時間が惜しい。どうするか。


 ウォーレンはゆっくり口を開いた。

「エリザ女王陛下の近習、ギムソン男爵が子息アダムを呼んでほしい。クレア公爵が次子ウォーレンが至急会いたがっていると伝えてほしい」


 ◇◇◇


 アダムは取るものもとりあえず駆けつけてくれた。

「ウォーレン。どうしたんだ急に。こんな真夜中に」


 同い年とはいえ、無役の公爵の次男と女王の近習の次期男爵。一見難しい関係だが、二人は親友だった。


「アダム。すまない。おまえしかこのことを言える人間はいない」


「どうしたと言うんだ?」


 ウォーレンは実の兄ヒューゴーの所業を余すことなくアダムに話した。


 ご禁制の奴隷購入を続けていること。購入した奴隷である女エルフを自らの性的嗜好の下、次々死に至らしめていること。女エルフの遺体が十体もクレア公爵の居城の敷地内に埋められていること。


 城主であるクレア公爵は海軍大臣の職務で殆ど帰城できず、この事実を知らないこと。エリザ女王が奴隷貿易に厳しい目を向けているにもかかわらず、兄ヒューゴーは奴隷としての女エルフ購入をやめようとしないこと。このままでは遠くない将来ことが露見し、責任感の強いクレア公爵()は死を選び、公爵家は取り潰しになり、家臣たちとその家族は路頭に迷うであろうこと。


 衝撃的な話にアダムは絶句した。しばしの沈黙の後、重い口を開いた。

アダム(自分)ウォーレン(おまえ)が虚言を弄す人間ではないことを知っている。だが、この現実は予想外に酷すぎる。多くの人はウォーレン(おまえ)が公爵家の家督の座を狙って、ヒューゴー()を追い落とそうと策していると思うだろう」


 ウォーレンは頷いた。

「そのとおりだ。だからこの話は今までも出来なかったし、誰にでも出来る話ではない」


 


 

次回第46話「レオニーの策謀は冴える 困惑するアダム」

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― 新着の感想 ―
[一言] お家が潰れることは免れたいですね ><。
[一言] 頑張れウォーレン!
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