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フラれたショックで侯爵令息から海賊の頭目になったんだが ドタバタワイワイまあ楽しいのかもしれない  作者: 水渕成分


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40 魔族 怨霊に力を与える

(ふうっ)

 内心安堵したジェフリーだが、そんなことはおくびにも出さず、話を続けた。

「それでは買う方はカカオの実を買うのがいいかもな。でも、売る方は何を売る? もう小銃は売るわけにはいかないだろう。かと言ってクローブやナツメグもほしがらないだろうし」


「これはどうです?」

 すっかり「人間(ヒューマン)語」が達者になったドワーフの少年ルポポが光る小さな玉をいくつか見せる。


「うわっ、何それ?」

 ンジャメナは飛びついて、小さな玉をしげしげ見つめる。

「きれいっ! これほしいなあ」


「「へ?」」

 その光景を意外そうに見ていたのはアミリアとフラーヴィアである。

「ンジャメナ。それただのガラス玉だよ。宝石でもなんでもないよ」


「いや何故か心惹かれるの。ああ、エルフ全員に分けてあげたい。ルポポもっとないの?」


 ルポポはジェフリーの方をチラリと見てから答える。

「いえ、残念ながら今のこの島の施設の能力ではこのくらいが限界です。原料の砂と灰と石灰はこの島ならいくらでも用意できるので施設を増強してもらえると」


「分かった。分かった。で、ンジャメナ。ガラス玉はガシェウ周辺のエルフたちにも売れそうなのか?」


「それはもう間違いなく売れるはずです」


「分かった。それではルポポはガラス玉製造施設の増強計画を立ててくれ。エンリコ、おまえはカカオの実の加工施設の計画をな」


「「はいっ」」


「じゃあ細かいところは後で詰めるとして……今日の打ち合わせはここまでかな?」


「いや、すみません。一つお願いが……」


 ◇◇◇


 おずおずと手を上げたのはンジャメナだった。

「あのちょっと頼みづらいお願いなんですが」


「何言ってるの? ンジャメナ」

 最初に言ったのはフラーヴィアだった。


「そうですよ。私たちは仲間じゃないですか。遠慮しないで」

 アミリアも言う。


「そっ、その実は……お願いというのはンジャメナ()の姉のことでして……」


「「ンジャメナのお姉さん?」」

 アミリアとフラーヴィアの声はハモる。 

「ではますます助けないと」

「お姉さん、何を困ってるの? 力になりたいよ」


 ンジャメナは続ける。

「今回、この島に来てくれたエルフの方から聞いたんですが、どうもンジャメナ()の姉が未だにンジャメナ()たちのいた森に籠もって、他のエルフの部族と戦っているようでして……」


「! それは大変!」

「奴隷商人は他にもいるからね。お姉さんが奴隷狩りにあって、他で売られたら大変だよ。早く助けないと」


「いっ、いや、そっちの心配はいらないんですけど、ガシェウ港の奴隷商人も殲滅したことだし、姉に戦闘(ケンカ)をやめさせたいと言いますか……」


「ンジャメナ」

 「翻訳」魔法をかけられた長老が問う。

ンジャメナ(おまえ)の姉って、ンマゾネスだっけ?」


「そうです」

 ンジャメナは恥ずかしそうに下を向きつつ答えた。


「そうか。あいつがまだ残っていたのか」

 長老は右手の平で額を押さえる。

「でもまあ、『もう戦闘(ケンカ)はしなくてもいい』と言って、すぐに止めてくれるかどうかは分からないが、言わないともっと収まらないだろうからなあ。すまんが行ってくれるか? ンジャメナ」


「はあ、そうですよね」

 ンジャメナは長老の言葉に頷くと、ジェフリーたちの方を向き直した。

「すみませんが、ンジャメナ()の姉のこれ以上の戦闘(ケンカ)をやめさせるため、もう一度ガシェウ港に連れて行ってもらえないでしょうか?」


「……」

 ジェフリーは絶句した。

(ンジャメナの姉を「助ける」のではなく、これ以上の戦闘(ケンカ)をやめさせる!?)


 このある意味重苦しい雰囲気を突き破ったのはエンリコだった。   

「どっちにしても、うちの島とガシェウ港で交易路作りたいでしょ。まあ行ってみましょうよ。うまくすれば大儲けですよ」


「うんそうだな」

 ジェフリーは頷いた。

(行ってみよう。ガシェウ港には行かなきゃならないだろうし、その足で行けるし。予想外のことが起こるのは今に始まったことじゃねえしな)。


 ◇◇◇ 


 マルク群島の要塞。そこの(あるじ)アドルフ公爵は寝室にあった。


 いつものとおり、妻のレオニーと激しい愛の交歓をかわした後、寝入っていた。


 いや、寝入っているはずだった。


 深夜、アドルフ()の寝顔から寝入っていると認識した妻のレオニーは全裸のまま静かに起き出した。


 そして、物音をたてぬよう、ゆっくりとバルコニーに歩いて行く。


 レオニーがバルコニーに出たことを確認し、アドルフも静かに起き出した。窓のカーテンに隠れ、レオニー()の様子をうかがう。


 レオニーはその金髪を逆立てたまま、手のひらを天に向け、両腕を伸ばす。


 そして、静かに語り出す。

「霊よ。ガシェウの海に漂う、奴隷商人たちの霊よ。聞こえるか?」


 アドルフには何も聞こえないが、レオニーには返事が聞こえたのであろうか。大きく頷く。

「そうか聞こえるか。霊よ。怨霊よ。憎いか? おまえたちを無惨に殺したジェフリーとその一味が憎いか?」

  

(ジェフリーが奴隷商人を殺した?)


「そうか。憎いか。レオニー()も憎い。我が最愛のアドルフ様を苦しめたジェフリーとその一味が憎い。我ら魔族(デーモン)の野望の障害とならんとするジェフリーとその一味が憎い」


(! 魔族(デーモン)?)





 

 


次回第41話「ンジャメナ姉は戦闘バカ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] >ンマゾネス 名前が( ´艸`) エルフの女戦士ですか・・・
[一言] お~面白い展開ですね ^0^/ 意外なところに敵が……。
[一言] あわわわわ……!!
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