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フラれたショックで侯爵令息から海賊の頭目になったんだが ドタバタワイワイまあ楽しいのかもしれない  作者: 水渕成分


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39 カカオパウダーは「媚薬」

「ほう。何だ? 奴隷商人()は明日殺されるのか?」


「殺しやしないよ。明日、尋問するからな」


「ふっ」

 奴隷商人はまた冷笑した。

「相変わらずジェフリー(あんた)は甘いな。その甘さはいつか命取りになるぜ」


「ふうー」

 ジェフリーは大きく息を吐いてから言う。

「甘いのはどっちだよ。明日の尋問。ジェフリー()がやるんじゃないぜ。尋問するのはエルフたちだよ」


「な・ん・だ・と」

 奴隷商人の顔面は蒼白になった。

「馬鹿なことを言うな。奴隷商人()は『人間(ヒューマン)』だぞっ! 何で『亜人(デミヒューマン)』のエルフなんぞに尋問されるんだっ? ちゃんと同じ『人間(ヒューマン)』のジェフリー(あんた)が尋問しろっ! 失礼なっ!」


「あのなあ」

 ジェフリーがあきれ顔で続ける。

奴隷商人(あんた)が言うとおり、ジェフリー()は貴族の出だよ。貴族にも時々馬鹿がいてな、必要以上に他領の領民を虐殺する奴がいるんだ」


「……」


「そういう馬鹿を捕虜にするとな。俺ら貴族はそいつが虐殺やったところの領民にそいつを引き渡すんだよ。『お好きにどうぞ。後は任せる』と言ってな」


「!」


「すると馬鹿が言うんだ。『同じ貴族だろう。何で領民に引き渡すんだ』とな。知ったことかよ。同じ貴族とか関係ない。俺らは領民の方が大事なんだよ」


「貴様ぁ!」


「だからな。ジェフリー()も同じ『人間(ヒューマン)』とか関係ないの。エルフたちの方が大事なの」


「貴様っ! それでも『人間(ヒューマン)』かっ?」


奴隷商人(あんた)と同じ『人間(ヒューマン)』だよ。違いは『人間(ヒューマン)』は『亜人(デミヒューマン)』より偉いとか思ってないだけでね。明日行われるのは『処刑』じゃなくて『尋問』だよ。まあ、奴隷商人(あんた)に深い恨みを抱いているエルフたちがどういう『尋問』をするかとかはジェフリー()の知ったことではないけどね」


「許さんっ! 貴様を絶対許さんぞっ! 『姿なき海賊団』頭目ジェフリー・ヴィアーッ!」


「あーうるせー。『麻痺』」


「うぐぐぐぐ」


「口も『麻痺』させてもらった。うるせーし、舌でも噛み切られた日にはエルフたちに怒られちゃうからな。じゃあ、あばよ」


「うぐぐぐぐ」


 ◇◇◇


 その後、ジェフリーは雑談の一環として、一人のエルフに問うた。

「あの奴隷商人たち、どうした?」


「痛めつけてからサメのいる海に放り込もうとしたんですが、先に死んじゃったので、死体を海に放り込みました」


「ふーん。そう。あ、ところでさあ、今度の出航だけど……」

 ジェフリーの話題はすぐに次の者に移っていた。


 ◇◇◇


「それではだな。奴隷商人への尋問で得た情報を含めて、今後の方針について話し合いたい」

 頭目の館に有力メンバーを集まった会議。議長はジェフリーである。

「前から奴隷貿易の港として悪評高かったガシェウの港の奴隷商人を叩き潰す結果になったが、ガシェウ(あそこ)はポルト王国の港だ。『姿なき海賊団(俺たち)』のことを討伐対象にはしてないだろうな?」


 これにはフラーヴィアが答える。

「私たちは別に国軍に戦闘をしかけたわけではなく、やったことは海賊と奴隷商人の私闘です。おまけに奴隷貿易は公的には御法度ですからね。ガシェウ港も私たちが悪いとは言えないですよ。ただ……」


「ただ……何だ?」


ガシェウ(あそこ)はエルフの部族に小銃を売り、代わりにエルフ間の抗争で捕虜になったエルフを買うという形で経済が成立してましたから、これから先どうしたものかと考えているようです」


「うーんまあ、他に輸出できる産物がないから奴隷貿易に走っちまっただろうからな。難しいか」


「ふっ、ふーん」

 ここでドヤ顔を見せるのはエンリコである。

エンリコ()ガシェウ(あそこ)で凄いもの見つけちゃったんだよねー」


「何よー」

 フラーヴィアはエンリコをにらみつける。

エンリコ(あんた)、そんなこと言って、つまんない話だったら承知しないよ」


エンリコ()、見つけちゃったんだもんね。カカオの木が生えてるのを」


「「「「「カカオの木?」」」」」

 出席者全員から声が上がる。


「カカオの木って何ですか?」

 木大好きでガシェウ周辺の森に住んでいたンジャメナが前のめりになって問う。


「え? 知らないの? 5メートルくらいで茶色い細長い実をつける」


「ああっ」

 ンジャメナはポンと手を打つ。

「でもあの木の実はあまり美味しくないんじゃあ?」


「加工の仕方で美味しくなるんですよ。外皮と胚芽は取り除いて、胚乳だけ発酵・乾燥させてパウダーにするんです。こうして出来たパウダーは今貴族や大商人の間では……」


「……」


「『媚薬』として使われています」


「「「「「媚薬!?」」」」」

 その場にいた多くの者が声を上げた。


「その『媚薬』って、どのくらい効果があるんですか? 例えば……その、相手をその気にさせるとか?」

 真っ先に食いついたのはアミリアである。


アミリア(王女)様、そのお気持ち痛いほど分かります。エンリコ()フラーヴィア(お嬢)様には袖にされっぱなしだから。だけど……)

 エンリコはあえて淡々と答える。

「残念ながら夫婦間とか、あらかじめ合意がある関係で気分を盛り上げる効果くらいですね。食べ過ぎると鼻血が出るという噂もありますので、精力増強の効果はあるんでしょうが……」


「そう……」

 心底残念そうなアミリア。



次回第40話「魔族 怨霊に力を与える」

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― 新着の感想 ―
[一言] ハンムラビ法典( ˘ω˘ )
[一言] エルフに尋問させるのもなかなかですね (*´▽`*) お次は魅力的な木、カカオですね!
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