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フラれたショックで侯爵令息から海賊の頭目になったんだが ドタバタワイワイまあ楽しいのかもしれない  作者: 水渕成分


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34 魔族の精神的支配を受けていた時は……

「さて……」

 アミリアはあらかじめ定められた席に着座した。


 テーブルをはさんだ反対側には攻撃してきた「マルシェ海賊」の頭目が座っている。


 念のため手かせ足かせをされているが、その目からはもはや全く戦意が感じられなかった。


 それでもアミリアの側には後方に多くの者が控える。アミリアが今現在最も信頼を置く存在であるフラーヴィアと自称その恋人であるエンリコ。ンジャメナはジェフリーの加療に従事中の長老の代理だ。他にも護衛のため腕利きの「姿なき海賊団」団員もいる。


「尋問を始めましょうか」


「ああ」

 敵の頭目はアミリアの言葉に力なく頷いた。


「では最初にあなたの名前と率いている海賊団の名前を教えてください」


「名前はアフマド。海賊の巣と言われるマルシェで一つの海賊団を率いている。通称は『黒髭のアフマドの海賊団』と言われている」


「なるほど。聞いたことがあります。ではアフマド。何故あなたは私たちの島を攻撃したのです? その目的は?」


「分からないんだ。気がついたら旗艦のガレオンが横転していて、甲板から放り出され、海に落ちた。あわてて泳いでこの島に着いたところを捕縛された。逆に教えてくれ。ここはどこだ。あんたたちは何者なんだ?」


「尋問しているのはこちらの方です。アフマド。あなたたちがこの島を攻撃した目的を先に教えてくれないと、こちらのことも教えられません」


「何も何も分からないんだ。どんなことでもいいっ! 教えてくれっ!」


 ここでンジャメナがアミリアに耳打ちをする。

(どうやら嘘は言っていないようです。魔族(デーモン)に精神的支配されていた間のことは何も覚えていないのでしょう。このままでは何も分かりませんから、こちらの情報を教えましょう)。


 頷いたアミリアは会話を再開する。

「よろしい。アフマド。ここはアトリ諸島。私たちはジェフリー頭目の率いる『姿なき海賊団』。私は副官のアミリアです」


「『姿なき海賊団』だとっ!」

 驚きのあまり、アフマドは手かせ足かせを付けられたまま立ち上がろうとする。

「考えられんっ! 俺たちが『姿なき海賊団』と戦闘(ケンカ)するなんてことはありえないんだっ!」


「アフマド。その理由は?」


「俺たちだって効率ってもんを考えているんだっ! 一番おいしいのは商船(キャラック)だっ! 戦闘(ケンカ)が弱い上に、カネもブツも持っているからなっ! 次が国軍だ。戦闘(ケンカ)は強いが、カネは持っている。一番駄目なのが俺たちと同じ海賊だっ!」

「アフマド。何故です?」


「当たり前だろうっ! 海賊はカネもブツも大して持っていないくせに戦闘(ケンカ)だけは強い。倒すのに苦労する割には実入りがないんだよっ! ましてや『姿なき海賊団』なんて、最小限の略奪しかしない『貧乏海賊』と戦闘(ケンカ)するなんて意味ないんだよっ!」


「なるほど」

 アミリアは考える。

(アフマドたちは私たちがクローブとナツメグの木を持っていることを知らなかった。だけど、それを知る者がアフマドたちに依頼した可能性も否定できない)

「アフマド。『姿なき海賊団(私たち)』と純粋に戦うだけならそうかもしれません。でも、なたたちが『姿なき海賊団(私たち)』を攻撃するよう依頼を受けていたとも考えられます。成功の折には報酬を受け取る約束で」


「……」

 今度はアフマドが考え込む。

「すまない。依頼を受けた記憶もないし、報酬を約束された記憶もない。本当に何で『姿なき海賊団(あんたたち)』に戦闘(ケンカ)を仕掛けたか分からないんだ。何も答えられない。頼むっ! 逆にあんたらの知ってることを何でもいいから教えてくれっ!」


 アミリアはフラーヴィアとンジャメナの方を振り向く。二人とも頷く。

「よろしい。アフマド。あなたたちは魔族(デーモン)に精神的支配されて、『姿なき海賊団(私たち)』に戦闘を仕掛けたのです」


 ◇◇◇


魔族(デーモン)!?」

 アフマドは驚きのあまりまた立ち上がる。

「そんな馬鹿な。魔族(デーモン)は随分前にイース王国のリチャード王太子の指揮する十字軍(クルセイダーズ)に殲滅されたはずだろう」


 ここでンジャメナが前に出る。

人間(ヒューマン)亜人(デミヒューマン)を一挙に支配下に置こうとした軍団は確かにその時に殲滅されました。しかし、残党は残っているのです」


「……そうだったのか」

 アフマドは力なく崩れ落ちた。そして言った。

アフマド()はもう海賊は廃業する。魔族(デーモン)(たぶら)かされて、何の意味もない『姿なき海賊団』を攻撃して、あげくが全戦力のガレオン三隻をつぎこんだあげく、ガレオン一隻の『姿なき海賊団(あんたたち)』にボロ負けときた日には自信もなくすわ」


「……」


「『姿なき海賊団(あんたたち)』にも迷惑をかけた。アフマド()のことは好きにしてくれ。アフマド()は国軍にも戦闘(ケンカ)を仕掛けたことがあるから指名手配の身だ。差し出せば報奨金がもらえるぜ。だがな……」


「すまねえが部下たちの命は助けてやってくれねえか。自分(てめえ)からなりたくて海賊になった奴ばっかじゃねえ。戦争孤児になったり、貧乏でどうしょうもなくて海賊になったのもたくさんいるんだ」


 アミリアは静かに言う。

「あなたたちの処遇はこれからこちらで考えます。今日のところはお休みください」


 




次回第35話「アミリア個人でのお楽しみ」

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― 新着の感想 ―
[一言] ある意味アフマドも被害者ですね( ˘ω˘ )
[一言] 貧乏な海賊を襲うのは割に合わないですよね ^^;
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