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フラれたショックで侯爵令息から海賊の頭目になったんだが ドタバタワイワイまあ楽しいのかもしれない  作者: 水渕成分


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29 アトリ諸島攻防戦開始

 海賊でガレオンを三隻持っているというのはかなり大きな部類に属する。


 確かにその海賊団は悪名高い「マルシェ海賊」の中にあって有力なものだった。


 但し、今、三隻のガレオンを駆り、アトリ諸島に向かう海賊団員たちの目はみな虚ろだった。そして、怪しい光を帯びていた。


 一人だけ目が生き生きとしている者がいた。


 長髪の金髪に碧眼。ここが海賊船の甲板ということをまるで考慮していない露出の多い服。


 その女レオニーは思った。

(このレオニー()が真に愛するただ一人の男アドルフ様を悩ませた男。ジェフリー。奴だけは許せない。それだけではない。奴、ジェフリーは調べれば調べるほど危険な匂いがする。わが野望の最大の障壁になるような……)


「レオニー」

 視点が定まらず、目が泳ぎ、それでいて怪しい光だけは帯びる海賊の頭目が背後からレオニーに抱きつく。

「ジェフリーとその一味とやらを皆殺しにすれば、本当に本当にわしのものになってくれのだな?」


「もちろんよ」

 レオニーは妖しい微笑を浮かべる。

「ジェフリーとその一味を一人残らず殺してくれれば、レオニー()はあなたのものになる。この身体(からだ)好きにしていいのよ」


「おおっ、レオニー。愛している。わしにはおまえしかない。おまえだけがいればいい」


「私もよ」

 そう言いながらレオニーは内心別のことを思った。

(そう、愛している。ジェフリーとその一味を皆殺しにしてくれるあなたをね。ことがなった暁には特別に愛し尽くしてあなたを殺してやるわ。全てを絞り尽くしてね)。 

 

 ◇◇◇


「やはり来やがったな」

 ジェフリーの呟きにアミリアも頷く。

「来ましたね」


「総員戦闘用意。アミリア。船室での治療薬の準備は?」


「万全です。ジェフリー兄さま。治療薬作成の技能がないエルフも負傷者の運搬役を買って出てくれています。本当に『総員』です」


「そうか」

 ジェフリーは答えながら考える。

『姿なき海賊団』(俺たちゃ)弱小海賊だ。だから、物を奪うにしても最小限にして、極力恨みを買わないようにしてきた。だがいつまでもそういうわけにはいかねえから、クローブとナツメグの栽培も始めた。目立たないように少しずつ売っていったつもりだが、こんなに早く目をつけられるとはな)


 フラーヴィアの兄ティーノのピロートークが原因とは知る由もない。


(そうは言っても来ちまったものはしょうがねえ。こっちの死人は極力出さないようにしねえとな)


「妙に速度を出してきますね。まさかこっちのガレオンにぶつけようってつもりでもないんでしょうけど」

 アミリアの言葉にジェフリーは我に返る。敵は二隻のガレオンを前面に出し、その後を最後の一隻が追走する陣形で来る。


 だが、確かに前面の二隻の速度は速い。アミリアが懸念するようにぶつけるつもりにも思える。


 通常、艦同士をぶつける場合、このような遠距離から加速度はつけない。ぶつけた方も甚大な損傷を受けるからだ。ぶつけるのはもっと近距離になってからである。どんな海賊も海軍も遠距離からぶつけるなどという戦法は取らない。


 しかし……


 あの艦隊から出ている禍々しい波動はそんな予想を拭い去ってしまう。何をしてもおかしくない。そんな予感がする。


「全砲門砲撃用意。最大射程に入ったら砲撃する。ジェフリー()が合図したら撃て」


「お頭。最大射程だとそんなに当たりませんぜ」


「いや、ジェフリー()の見立てだと結構当たるはずだ」 


 ◇◇◇


 ズド-ンズド-ンズド-ン


 ジェフリーの合図一下、砲撃が開始される。


 ジェフリーが魔法力を付加した砲弾は全てとは言わないが、かなりの数が命中した。艦体が砕け、甲板にいる敵兵が倒れる。


「おおっ、当たったあ」

「最大射程でも結構当たるもんだな」

「お頭の魔法力のおかげですかい?」


「いや、それよりもだ。次発装填急げっ! 砲撃用意っ!」


「「「「「へいっ」」」」」


 ズド-ンズド-ンズド-ン


 再度放たれた砲弾はまたもその多くが命中する。


「うおおおおおーっ」

「また当たったあ」


「こっちは長射程中威力のカルバリン砲。敵は中射程高威力のカノン砲だ。アウトレンジで撃てるだけ撃っておくぞっ! 次発充填急げっ! 砲撃用意っ!」


「「「「「へいっ」」」」」


 ◇◇◇


 ズド-ンズド-ンズド-ン


 三度目の砲撃もその多くが命中した。


 しかし、もはや「姿なき海賊団」の者たちから歓声は上がらなかった。


「お頭。あいつら……」


「ああ」


 敵の前衛を行く二隻のガレオンには多くの砲弾が命中し、遠目にも艦体が損傷していることが確認できる。


 しかし、二隻のガレオンは一向にその速度を緩める様子はなく、最短距離でこちらに向かってくる。しかも、既に搭載するカノン砲の射程距離に入っているのに一向に撃ち返してこない。


(まともな敵じゃないってことだな。何者かは分からないが)

 ジェフリーは自らの頬を両手で叩き、気合いを入れ直した。

「敵が撃ち返してこない理由は分からんが、打撃を与えていることは事実だ。敵が何を考えているか分からない以上、少しでも打撃を与えておくにこしたことはない。次発装填急げっ! 砲撃用意っ!」


「「「「「へいっ」」」」」


 

次回第30話「ジェフリーとその一味は負けない」

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― 新着の感想 ―
[一言] レオニー怖い (;'∀') さらに打ち返してこない敵船の動向も注目ですね☆彡
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