表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フラれたショックで侯爵令息から海賊の頭目になったんだが ドタバタワイワイまあ楽しいのかもしれない  作者: 水渕成分


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/77

28 アトリ諸島に危機迫る

「なんじゃあっ! その女―っ? カリムッ! どういうつもりだっ! てめえっ! そんな女いきなり連れてきやがってっ!」


 その海賊の頭目がレオニーを案内した男を怒鳴ったのはその最初の言葉だけだった。


 次の瞬間、レオニーの左眼が金色に光り、頭目はレオニーにすがりついた。

「レオニー。おまえは何と素晴らしいんだ。わしゃあおまえのためなら何でもやったるぞ」


 レオニーは微笑を浮かべ、すがりついた頭目の頭を撫でた。

「いい子ね。私の望みは一つだけ。それを叶えてくれたら、たくさんいいことをしてあげるわ」


「なっ、何だっ? 何でも言ってくれっ! 何でもやるぞっ!」


「私の望みはただ一つ。殺してもあきたらないジェフリーという男とその一味を皆殺しにすること。それだけ」


 ◇◇◇

 

「!」

 ジェフリーはその波動を感知した。


 何とも強く、そして、禍々しい。


 強いだけならアドルフの魔法力の波動の方が大きいかも知れない。また、ジェフリーやアミリアの魔法力の波動も及ぶことはなくても、それに近いものがある。


 しかし、この禍々しさはジェフリーやアミリアの魔法力の波動にはないものだ。アドルフにはあるかもしれないが、ここまでではない。


「気がつかれましたか?」

 いつになく真剣な表情のアミリアにジェフリーも頷く。


「凄く禍々しい波動に、ガレオンが一、ニ、三隻か?」


「そうですね。アミリア()の感知も禍々しい波動にガレオンが三隻」


「監視員。東北東を要確認。ガレオンが三隻視認出来るか?」

 ジェフリーが高い監視塔の上にいる監視員に念話を送る。

「お頭。確かに東北東にガレオン三隻。望遠鏡で視認しやした」


「間違いなしか。どうもアトリ諸島(ここ)を狙っているみたいだな。思ったより早く来やがった。もうちょっと防備体制を整えたかったが、仕方ねえ。おい、アミリア。フラーヴィアはどうした?」


「ポルト王国に向けて商船(キャラック)を出港させる直前だったので、アミリア()が出港を中止させました」


「そうか。そっちは事前の打ち合わせ通り他の島に隠す方向だな」


「フラーヴィアさんも分かって動いてくれています」


「そっちはそれでいいとしてだ。さて……」


 ジェフリーは考え込む。

(敵がガレオン二隻だってえのなら、こっちもガレオン出して、島から離れたところで戦闘(ケンカ)した方が島は無事でいられる。だが、敵が三隻となるとこっちが二隻を相手にしている間、残った一隻ががら空きの島を取りに来る)

(うっては出られんな。こっちのガレオンは港内に停泊させて砲台で使うしかないな)


 気がつけば周りには海賊団員、エルフたちが集まってきていた。アミリアが集めてくれたらしい。 


 エルフにはまだ人間(ヒューマン)語が分からない者もいる。「翻訳」の魔法をかけてくれたようだ。

「みんな急に集まってもらってすまない。実は正体は不明だが、三隻のガレオンがアトリ諸島(ここ)を攻撃しに来る」


 ざわ


 一斉にざわめきが広がる。


「そこで海賊団員はジェフリー()と一緒にガレオンの甲板に出て、大砲と小銃で迎え撃ってもらいたい。ジェフリー()が砲弾と弾丸に魔法力を付加する」


「了解でやす」

「どこの誰だか知らねえがこの島に手は出させねえ」

「ぶちのめしてやる」

 海賊団員たちの表情も真剣だ。


「ジェフリー兄さま。アミリア()も甲板で魔法力を付加します」


「いや」

 ジェフリーはアミリアの申し出に首を振る。

「今回の戦いは残念だが、たくさんのケガ人、下手すると死人がでかねん。アミリアは船室の方で『治癒』の魔法をかけることに専念してくれ。それから、長老」


「おう」

 呼ばれたエルフの長老が前に出る。


「エルフには薬草からケガの治療薬を作る技術があると聞いたことがあるんだが、出来る者はいるか?」


「わしが出来る」

 長老は顔を上げながら言う。

「他にも治療の技術を持っている者が何人かいる。わしらも船室につめて、治療を担うようにしたい」


 ジェフリーはその言葉に頷く。

「では、エルフの中で治療が出来る者は船室につめてくれ。そうでない者は各々自宅に避難して……」


「ちょっと待ってください」

 ここで出てきたのはンジャメナだ。

「私ら森エルフは大砲や小銃は扱えませんが、優れた弓矢使いが何人もいます。私らも甲板に出て戦わせてもらいます」


「それはありがたいが、命にかかわるぞ。いいのか?」


「いいのです」

 ンジャメナは周りを振り返りつつ言う。

アトリ諸島(ここ)はまるで楽園です。人間(ヒューマン)亜人(デミヒューマン)も肩を並べてともに食べ、眠り、楽しみ、そして、恋人同士になる。こんなところは世界中探しても他にありません。私たちだってアトリ諸島(ここ)が大好きです。アトリ諸島(ここ)を守りたいのです」


 ジェフリーは微笑を浮かべ頷き、こう言った。

「ありがとう」


 エルフたちを引き連れ、甲板に上がるンジャメナに恋人のノアは言った。

「おうっ、ンジャメナ。ノア()と一緒に死んでくれるのか?」


「馬鹿言っているんじゃないよ」

 ヌジャメナは言い返す。

「一緒に死ぬんじゃない。一緒に生きていくんだよ。これからもずっとね。この戦いに勝って」


 ノアは頷く。

「うんそうだな」


(いい仲間だ)

 ジェフリーは思う。

(だけど今度という今度は誰も死なないってわけにはいくまいな。畜生)


 



次回第29話「アトリ諸島攻防戦開始」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 不穏な空気が( ˘ω˘ )
[一言] おお海戦だ! エルフの弓部隊の活躍にも期待ですね ^0^/
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ