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短編とかその他

願いを叶える少女と盗賊

作者: リィズ・ブランディシュカ
掲載日:2022/08/02




 その少女は、かつて無知だった。


 何も知らずに、自分が恵まれているのだと思っていた。


「みんな私に優しくしてくれる。だからきっとそれは、とてもいい事なのだわ」


 しかし違っていた。


 少女は村の中で特別な扱いをされていた。


 しかし少女は誰とも触れ合う事ができなかった。


「でも、どうして誰も私にちかづいてくれないのかしら」


 ある日、盗み聞いた大人達の会話。


「あの子と触れ合ってはいけない。子供達にはひき続きそう伝えておくように」

「うっかり、近づかれてはたまったものではないからな」

「人の負の面がうつって少女が穢れたら、大変な事になる」


 人と触れ合う事は少女が穢れる事。


 村の者達は、そう信じてきっていたからだ。







 少女は神の子供とされていた。


「あの子に願えば、たくさんの願い事を叶えてもらえる」


 少女が望めば、望むだけ。


 人々の願いをかなえる事ができたからだ。


「作物の実りを増やしてほしい」


「雨をふらしてほしい」


「井戸をほりあてたい」


「森の害獣を追い払いたい」


 少女は、そんな人々の願いを叶え続けた。


 それが少女に課せられた役目だったからだ。


 人の為に願いをかなえる事。


 それが少女自身の喜びであると、少女は錯覚していた。


 着る物に困る事はない。


 食べる物にも困る事はない。


 寝る所を探す必要もない。


 その生活は恵まれていると教えられていたから、少女はそうだと思っていた。


「本当だったら、もっと貧しい生活を送っていたんだ。親のないお前はこんな生活をおくれるハズがなかったんだ」


「だからその分、そうしてやった私達の願いをかなえるのは当然のことなんだ」


 しかし、他人の言うその当然が、自分の思うそれと同じものだとは限らないと、少女は知る事になる。






 ある日、村が盗賊に襲われた。


「いやだ! 死にたくない!」


「なんでも、差し出す! 命だけはたすけてくれ!」


「あそこに願いをかなえる子供がいる。どうかそれで見逃しておくれ!」


 にげだした村人達は少女を盗賊にさしだした。


 必然的に少女は盗賊達の戦利品となる。


「お前、名前は?」


 盗賊達は少女の名前を聞いた。


 しかし少女に名前はない。


 だから首をふって答えると盗賊達はいぶかしんだ。


 その者達は盗賊達にしては良心的だった。


「名前がないなら、しょうがねぇ、皆で相談して何かつけるか」


 食う者に困って仕方なくこなしている者達が多かった。


 少女の状況に同情したい者達は、少女にユタカと名前をつけて、面倒を見る事にした。


 そんな生活で、少女の力を知った盗賊達は、「自分達の願いを叶えてほしい」と言ってきた。


 食うに困らない食べ物。


 雨風がしのげる建物。


 ボロボロではない着る物。


 それらは豊かになる願いではなく、最低限生活が整う願いだった。


 それらの願いの成就を求められた少女は、自分のこれまでの生活を思い起こして、確かに恵まれた生活を送っていた事は事実だと考えた。


 少女は願いを叶えていく。


 十分な生活を送れるようになった盗賊達は、自分達で村を作って生活する事にした。


 作物を育て、生活に必要な道具を一からつくっていく。


 その頃になると、誰も少女に願いを叶えてほしいとは言わなかった。


 少女は不思議だった。


 自分は何でも願いをかなえる事ができるのに、と。


「どうして誰もそれ以上豊かになろうとしないの?」


 だから質問をした。


 すると盗賊達は答えた。


「それ以上願いをかなえてもらう必要がないからだ」


 願いを叶えてもらい続ける事。


 それではつまらない、生きている意味がない、自由がない、と言った。


 少女は意味が分からなかった。


 しかし、自分達で一から村をおこしていく盗賊達は楽しそうに見えた。


 それは確かな事だった。


 そこには生きている意味があって、自由があるように見えた。


 分からないなりに、理解の途中なりに少女は予感した。


 自分はもう人の願いをかなえる事はないのだと悟った。


 その瞬間、神様の子供は人間の子供になったのだった。






 数年後、元いた村の者達が少女を見つけて、連れ出そうとしたが、少女がただの少女である事をしってがっかりした。


 諦めた村人たちは少女をなじるが、元盗賊達にこっぴどく怒鳴られて追い払われる事になった。


 自分達に幸運と当たり前の生活をもたらした少女。


 その少女の事を盗賊達はありがたがりあがめたが、少女は元盗賊達と同じように畑をたがやして、水をはこんで、衣類を繕いながら生活していった。




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