第53話 期待のニュー・フェイスども!
貴族街の道は、基本的に馬車がすれ違える程度には広さがある、立派な造りだ。
とはいえ、ひっきりなしに人とすれ違うという程の交通量でもない。
不審人物への警戒の視線が行き届いているせいか、仄かな緊張感に満ちた、どちらかと言えば静かな街だ。
「おはようございまーす!」
「おはようございます」
白色系の石畳で舗装された道を歩いていると、定期的に(大体三、四分おきくらいだろうか)前方や左右から声を掛けられることがある。
街中を巡回している、警官や騎士たちだ。
警官は白い制服と帽子を着用しており、街の基本的な配色に溶け込む形だ。騎士たちは白い衣服の上に鈍色の軽鎧を纏う者が多く、それぞれが所属している貴族家に合わせた、色付きの布地であちこちを装飾している。目立ちすぎるために隠密行動には向かないだろうが、よからぬ考えを抱く者たちに対する威圧としては相応しいのかもしれない。
鮮やかなカーマインレッドの布地を張り付けた若い男性騎士二人組に対し、後ろ暗いことをしている訳ではないアピールとして、蓮もしっかりと返事をしておくべきだろう。
「あ、おはようございます」
特にそこから話が広がるようなことはなく、騎士たちは軽く頷くだけに留め、蓮とすれ違うように去っていく。
(赤は、アシュバートン侯爵家傘下の騎士たち……)
たった今気さくな挨拶をしてくれた彼らも、≪ヴァリアー≫として活動することになれば、いつか戦うことになるかもしれない相手なのか。そう考えると、少しばかり気落ちしそうになる蓮だったが。
いや、帝国が≪ヴァリアー≫を潰したがっているとはいえ、必ずしも血を見る結果になるとは限らないか。……限らないのか? あのヴィンセントの態度を見てしまった後では、蓮はあまり楽観的な考えは持てなかった。
トレヴァスの屋敷を出発してから、それとなく背後の気配を探ってみていた蓮だが……特に誰かが後を付けてきているような気はしなかった。
仮に何者かが後ろを付いてきているとすれば、何故その人物は警邏の者たちから挨拶を受けていないのだ、という話にもなってくる。
(今日のオレを監視するつもりだったとしても、必ずしもオレを追いかけ続ける必要なんてないよな。行動予定が把握されてるんだとしたら、講習会の開催場所に先んじて待機してる可能性だってある訳だし)
もし本当に蓮の想像通りだとすれば、その人物はとんでもない努力家というか、使命感に燃えていることになるだろうが。相当な早起きをした蓮に合わせ、先に会場にて待機しようとしたならば……今頃全速力で街を移動していたりするのかもしれない。いや、わざわざ体力を消費せずとも、馬車や人力車を雇えばいいだけの話ではあるが。
実在するかどうかも怪しい監視者の事情まで考えてやる義理もない蓮は、病院通りを抜け、フレア・ストリートでのんびりと買い物を楽しんだ。
四つの大通りの横幅はそれぞれ百メートル以上もあり、向こう側まで渡り切るだけでも二分ほど掛かる。大通りには一段下がった形となる、馬車や人力車が通行するための道(所謂グラウンドフロア)が無数にある。歩行者はそれらよりは常に高い位置(最低でもファーストフロア。この国におけるファーストフロアとは二階の高さを意味する)を通行することになるため、事故の危険性もなければ、無駄に足を止められて時間を消費させられることもない。
景観の問題もあり、大通りの端以外には背の高い建造物を建てられない決まりがあるため、大通りの中ほどにあるのは露天商系の撤去しやすいものばかりとなっている。
天を走る空中通路群(セカンドフロアと呼ぶ者もいる)はここ三年ほどの工事を受け、それぞれの間に雨避けの透明な天窓が新設されている。故に、大通りの露天商たちは雨に打たれるという悩みから解放されている。庶民にも優しい、良い街作りだ。
やはりというか、最もアクセスしやすい大通りの端にある、しっかりとした店舗を持った店こそが最大手であり、客が列を形成しているのはそうした店だけだ。古代の言葉で表現するなら「壁サー」だろうか。
蓮は掘り出し物を探して少しマニアックな露店を巡るのも好きなタイプだった。
とは言っても、どの店も役所に許可を得て場所を取っているため、法外な値段で物を売るような悪徳業者は基本的には見られない。もし発見したなら、近くの警邏に通報するべきだろう。
時刻が十一時を回った頃、北の城門に到着した蓮は、門兵と軽く会話を交わす。必ずではないが、王都は出る際にも身分証の提示を求められることがある。兵士の方もそこまで「全ての犯罪者を見つけてやる! 俺はいつでも戦える覚悟だぜ!」というほど燃えているようには見えないが、抜き打ちのチェックがあるというだけでも、治安の維持には役立っているのだろう。ちなみに、今回の蓮は軽く目的を尋ねられただけで、身分証の提示までは求められなかった。
(さて、講習会のメンバーはどの辺に……ララさんは、見ればすぐに分かるって言ってたけど)
馬車の通行のため、緩やかなスロープになっている城門前の道。
それを下りきった左側の辺りに、一台の馬車が止まっている。四頭の馬が繋がれた、二階が存在するかなりリッチな馬車だ。
その脇で、一人の成人男性がこちらをちらちらと見ていることに、蓮はすぐに気づいた。
一瞬だけ“心眼”を発動させ、怪しい人物ではないことだけは確認した。
(あの人かな……オレの外見的特徴をもう聞いてるとか?)
蓮は元々は水色だった髪を脱色し、白くしている。人間種の平均寿命が四十後半から五十代だったことを考えると、白髪は確かに珍しい。寿命が七十を超えるような魔人種族であれば、六十歳を越えたあたりから白い髪が増えて来るのはそう珍しいことでもないが、それはそれで顔が老けているので分かりやすい。
蓮はそちらに向けて歩いていくと、成人男性は手を口に添え、「冒険者講習に参加される方ですかーっ!?」と、大声で問いを放ってきた。
見つめ合っている形になる時間が気まずかったのかもしれないが、もう少し近づいてから話しかけてくれてもいいじゃないか。蓮はそう思ったが、相手に倣ってこちらも叫び返すことにする。
「はい、そうです!!」
――くすんだ金の髪に青い瞳を持つ成人男性は、ディルク・テンスと名乗った。
ひげ面のせいで老けた印象を抱かれがちだが、実際はギリギリ三十歳に満たないあたりか。帝国人らしいがっしりとした身体つきではあるが……左右に分けられた金髪は、先の方が色あせている。よく日焼けした肌と合わせ、冒険者としての活動は半ば引退し、トレヴァス領で農夫として働くのがメインになっている人物なのだと、蓮の目は言っていた。
「――レン・ジンメイさんですね。トレヴァス様のお身内であられる……」
年上の冒険者から妙に畏まった態度を取られていることに、蓮は違和感を覚えていた。だが、わざわざ相手がトレヴァスの名前を出したことで得心が行った。
雇い主の身内だと思われているのだ。
「あ、いや……オレはただの居候みたいなもので。トレヴァス伯爵とは、今の時点では正式に親戚になってるって訳でも無いですし。無理して丁寧語を使ってもらう必要はないんですよ。本当に平民なんで……」
「そうなんで……コホン。……そうなのか?」
「はい。ディルクさんは引率係の、先輩冒険者な訳ですよね? 他の冒険者の皆さんに対してと同じように接していただければ大丈夫です」
ディルクは性格の悪い貴族のクソガキが来ることを警戒していたのか、毒気を抜かれたような顔をしていた。
「分かった。じゃあ、馬車の中にもう皆揃ってるから、とりあえず乗ってもらっていいか」
「えっ……もしかしてオレ、来るのが遅すぎた感じですか?」
「あぁいや、なんか知らんが……今日の参加者は皆、来るのが早かったんだ。早く出発すればその分帰りも早くなるから、大歓迎ではあるんだが」
ディルクに促されて馬車の一階部分に乗り込むと、その空間には既に六人の姿があった。小窓の奥に見える御者は除いて、だ。
(多いな……!)
向けられる視線の多さに、思わず蓮はたじろいだ。かっこつけなところがあるので、頑張って耐えようとはしていたが。
(全員が早く来てたって……オイ、“実は全員が政府側の雇われだった”みたいな、推理ものの反則技だけはやめろよ……?)
蓮がそうした可能性を考慮出来ているため、恐らくそんな展開はないのだろう。お約束に乗っ取ればだが。
「じゃあ、全員が揃ったことだし……ゆっくり馬車を走らせつつ、自己紹介でもしてもらおうかと思う。……ジャック、馬車を出してくれ!」
「あいよ……ハイィッ」
ディルクの要請を受け、ジャックと呼ばれた御者が手綱を操作した。その動きと言葉が合図になったのか、馬たちがゆっくりと進み始める。御者席には二人の男性が座っているらしい。
蓮もその中の一人となった、馬車に揺られながら座っている乗客たちがひしめく箱の中においては……乗降口から最も遠く、御者台から繋がる小窓の脇で逆光気味になっている黒い影が、やはり目を引く。……いや、他にも黒い服装の者はいる。単純に、蓮がその人物を意識し過ぎているだけだ。
黒を基調にコーディネートしている、軽装の吸血鬼。蓮が昨日、ギルドハウスで遭遇した人物だった。
――その紅眼の吸血鬼は、シラスと名乗った。
どうやら十八歳……蓮と同い年らしい。輝く金の髪に、通常の吸血鬼とは異なる紅の瞳を持ち、今はそれを濃いサングラスで隠している。
白い肌からも察せられるように、日光が弱点で、対策を重ねながら生活しているのだろう。くせ毛気味の髪を肩口ほどまで伸ばしており、前髪も鼻にかかるほど長い。
(馬車の中ではサングラスはいらないんじゃ……?)
と蓮が考えていると、それが伝わったのだろうか? シラスはサングラスを畳み、胸元のポケットへと収納した。
「シラスだ。……ふん……灰や青の髪を持つ人間たちはいつも、俺の名前を聞くと似たような反応をする。先に言っておくが、俺の名前は魚とは関係ない」
何より、頭に残る名前をしているのが印象深い少年だった。
白髪ながら、その“灰や青の髪を持つ人間たち”に含まれている自覚があった蓮は、「あ、はい……」とだけ返しておいた。
シラスという文字だけでは、特に清流人はカタクチイワシの稚魚などをパックに詰めた食品を想像してしまうだろう。食品の「しらす」と男性名としての「シラス」では、アクセントは明確に異なるが。
(普通に嫌そうだ。余計なことを言わなくて良かったな)
傍らに立てかけてある日傘以外に長物が見当たらないが、徒手空拳で戦うのだろうか。まさか、その日傘を武器にするなんてことは……?
――二人目に、ニーナゼルと名乗った少女。
年齢は十六歳。黄土色の毛並みを持つ、犬っぽい印象の獣耳を備えた魔人だ。顔の造形はそれほど高い獣度合いではなく、人間の耳も持つタイプ。横髪のあたりだけを、ミディアムと呼べる程度に伸ばしている。
「わたしは……ニ、ニーナゼル……アゼル族です。よろしくお願いします……」
どうやら≪名有りの種族≫らしいが、蓮はアゼル族という名称に聞き覚えはなかった。
水色のシャツを、薄緑のワイドパンツに押し込んでいる。バーガンティと呼ばれるような暗い赤色をしたマントを羽織り、それと同色の胸当てで心臓部を重点的に守っている。スピードタイプの装いだ。
身長は女性にしては高めで、戦士に適していそうに見えるのだが……少し臆病そうな態度なのが不思議だ。背中側に、斜めに取り付けられた幅の広そうな剣の鞘が少しだけ覗いている。マントにはそれを隠し、盗まれることを防ぐ意味合いもありそうだった。
――三人目、クスタバルと名乗る少年。
年齢はニーナゼルと同じ十六。同じように獣度合いは高くない顔つきで、四つ耳。黒髪の中からちょこんと小さく突き出した丸い獣耳は、タヌキのものに酷似している。黒タヌキと形容すればいいのだろうか。
「おれは十一区長フラウバルの弟、クスタバル。嫌われ者のゼバル族が一緒してわりぃけど、よろしくなぁ~」
嫌われ者を自称しつつも、それを一切気にしたそぶりがない彼はニーナゼルとは対照的で、自信しか感じられない。根拠があるのかは不明だが、“心眼”を使わなくとも蓮はかなり強そうな印象を受けた。両手を左右に振っていて、楽しそうだ。
黒い鞘に納められた太刀は、長さゆえに座りながら佩くことは難しいのか、太腿に敷かれている。足は痛くならないのだろうか。
(ゼバル族はどっかで聞いたことあるかも……あれ、確か“危険種”だったような……今は変わったのか?)
蓮は疑問に思ったが、今は全員が順番に名乗っていく段階なので、あまり突っ込んだ質問をするべきではないだろう。
黒いくりっとした瞳に、同系色のシノビ装束のようなものに身を包んだ彼は、しかし顔だけは隠していない。身長もニーナゼルより低いため、その声を聴いていなければ女子だと勘違いしていたかもしれない、そんな華奢で美しい顔立ちだった。ボブカット気味な髪型も、女性らしい印象に一役買っていた。性格は華奢からは程遠そうだが。
まさかその恰好は、古のイーストシェイド(東陽と呼ばれていた頃)に存在したと噂される、政府御用達の諜報機関……トーヨーズ・ニンジャァ! たちに憧れを持つ、勘違い外国人ムーブなのだろうか?
とりあえず、黙ってさえいれば闇に潜む能力は高そうだが……。
――四人目、レオと名乗る女性。
年齢は二十歳。金髪翠眼で、色の組み合わせとしてはエリナと同じだ。長い後ろ髪を、上着の下へと格納しているらしい。
肌の色まで含めて見るからに帝国人カラーであり、蓮の危険人物を判別するセンサー(誤作動や決めつけも度々あるが)がビリビリ反応していた。
「あたしはレオ。皆、よろしくお願いするわ」
ハキハキとした喋り方は、同じ帝国人であれば無条件に好感を抱くのだろうが。
(この中にドール政府から送られてきたオレの監視役がいるとすれば、一番怪しいのは間違いなくこの女だよな。……いや、でも清々しいほど帝国人の血を隠す気が無さそうな外見だし、むしろ違うのか……?)
――怪しさが満点すぎて、蓮は逆に混乱している!
白いシャツに黒のテーパードパンツを合わせ、丈が短くなるように改造されたベージュのコートを、首の前で止めることでマントのように着こなしている。厚底のブーツを除けば、身長は帝国人にしては低い方か。
腰のベルトには蓮が帯びている内の一本にそっくりな、平凡なロングソードにしか見えない柄が見えているが……本当に初心者なのか、それとも偽装か。
別にロングソードが初心者専用の弱い武器という訳ではないが、安価な方であるのは確かだ。
……ずばり言うが、レオは昨日、ギルドハウスではルカと名乗っていた女だった。
つまり蓮のセンサーは、今回は誤作動を起こしていない。“心眼”を使えば確信を抱けたかもしれないが、他人の秘密をいたずらに覗くことは嫌われて当たり前の行為である。蓮の情報を予め保有している政府側の人間には確実に使用がバレるのだろうし、今は使う訳にはいかなかった。
――五人目、スカルセドナと名乗る女性。
珍しい白の髪に、鮮やかな緑の瞳。肌の色は黄色人種のそれだが、これらの特徴からは人種がはっきりしない。左目を覆うように、大きな黒い布から作られた眼帯を着用している。順当に考えれば、左目を怪我、もしくは失明しているのだろう。
「私はスカルセドナ。今年で二十五になる、流れの剣士だ。皆様、どうかよろしくお願いする」
その固い言葉選びをした凛々しい声も、肩甲骨を越えるほどの長さのローポニーテールも相まって、大人の女騎士というイメージを抱かせる。
(暗黒大陸出身の≪名無しの種族≫……か?)
蓮は内心でふぅむと唸った。自分のことを人間だとも魔人だとも明言しなかったスカルセドナだが……今の時代では、これもあまり気軽に詮索出来るものではない。人間と魔人の垣根を取り払おうとしている、この王国では特に。
役所に移住申請が受理されているならそれでよし。街中で出会う人それぞれに「あなたはの生まれはなんてーの?」などと質問していては、そっちの方が危険人物だろう。「お前どこ中だよ?」が口癖の不良じゃあるまいし。
ニーナゼルよりも更に高い、すらりとした長身に黒のボディスーツを纏い、暗褐色のレザーアーマーで関節部分以外の殆どを覆っている。灰色のマントの中には横向きにされた黒い剣(?)の柄が見えているが、なんとなく違和感のある、あまり見ない形状をしているようにも思えた。
――六人目、ヨランと名乗る少年。
白よりも柔らかい印象を与える、象牙色を基調にしたローブを身に纏う彼は……今回の講習会を受ける側ではなく、開催する側に雇われた治癒術士だった。
石製品に見える大きな杖が太腿の上に立てかけられているが、見た目ほどは重くないのだろうか?
ショートにした茶髪に茶色の目と、分かりやすく色が統一されている。肌は少し白めだろうか。蓮は竜信仰の国ガイアに根差した民族に会うのはこれが初めてなので、それがガイア人たちに共通する特徴なのかは分からなかった。
「僕の名前はヨランです。今日はディルクさんにお世話になっている縁で呼ばれました。ガイア教団から冒険者ギルドに派遣された治癒術士の一人で、皆さんのバックアップを務めます。よろしくお願いします!」
年齢は十七歳。素直そうで、誰からでも好かれそうとはこういうことか、と蓮はこれまた脳内で唸った。いや、わざわざこのキャラに寄せて、自分を偽ってまで人から好かれようとまでは思わないが。
ヨランは推定百五十センチ台の低身長男子であることも手伝って、斜に構えたような思考が多い蓮からの第一印象もかなりいい。帝国人などに対して抱きがちな、仄かな劣等感を刺激されずに済むためだ。
どうやら冒険者を半ば引退し農夫となっているディルクという男性は、十区長を担うメルヴィ・テンス女史の夫であるらしい。テンスとは、十区長である立場を示すために後付けで用意した苗字なのだ。その二人と昔からの知り合いであるヨラン少年もまた、十区に身を寄せているのだという。
ヨランは近接戦闘の方がからきしなため、Bランク冒険者待遇ではあるものの、単独でのダンジョンへの挑戦は許可されていないそうだ。もっとも、優れた回復要員になれるというだけで、仕事に困ることはないだろうが。
以上……新人冒険者のシラス、ニーナゼル、クスタバル、レオ、スカルセドナ。
それに加え、開催側のディルクと、その補佐ヨラン。
勿論、蓮もまた名乗る必要があるだろう。
「――オレはレン・ジンメイ。メロアラント出身の清流人で、十八歳の剣士です。よろしく」
丁寧語と砕けた口調のバランスは、冒険者同士なんだしこれくらいでいいだろう……という蓮の選択は、そう悪いものではなかったようだ。この場だと、蓮が丁寧口調を心がけようと意識する相手は、先輩冒険者となるディルクくらいだった。二十五歳のスカルセドナも、少し年齢が離れている方ではあるが……どうだろう。丁寧語を徹底しないと気を悪くするタイプの女騎士だろうか?
自己紹介も終わったので、いよいよこのメンバーで織りなす新たな物語が幕を開ける訳だが……。
(新人冒険者の集まりなのに強そうなやつしかいないの、なんなんだ……!?)
――という蓮の脳内の叫びに、天としても禿同せざるを得なかった。
※左からシラス、スカルセドナ、ニーナゼル、クスタバル、蓮、レオ(ルカ)のイメージイラスト。




