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逆トイレトレーニング日記  作者: 062


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20/29

元旦


健太の家から10分程歩くと、小さな神社があった。意外にも照明が多くて明るい。


「あ、健太君だ!あけましておめでとう!」


健太のクラスメイトである(あや)が声をかけた。それに気づいた健太も声を返す。


「佐々木さん、あけましておめでとう」


「もう、『あや』て呼んでって言ってるのに!健太君その子は?」


詩乃(しの)は先程の自分と同じやりとりに苦笑する。どうやら健太は女の子を名前で呼ぶ事に抵抗があるようだ。それと自信はあったが本物の小学生に見破られない自分の変装に安堵した。


「彼女は詩乃ちゃん。ーーーーーー」


健太は名前を紹介したところでフリーズした。何と紹介したらいいのかわからないようだ。それを見た詩乃がフォローする。健太にとっては良くない方向に。


「早川詩乃です。別の学校に通っています。健太君とはお付き合いさせていただいてます」


目を剥いて綾は動揺する。それを察した詩乃は迷う。このまま完膚なきまで叩いておこうと思えばできる、でも12歳の小学生相手にやる事ではないとも思う。そして、更に気づく。彼女のショートカットの髪から出た耳が、頬っぺたや鼻も真っ赤である事に。多分、健太が来るのを待っていたのだ。


「綾ちゃんだっけ?ごめん、お手洗いについて来てくれない?健太君だと恥ずかしいし」


冷えきって痛そうな耳に小声で言った。綾は素直に「こっちよ」と詩乃を案内する。健太もトイレについて来る程、無粋ではない。


トイレも明るい。詩乃は安堵した。そんな様子をどう思ったのか、綾が聞いてきた。


「トイレ、しないの?」


「私には必要ないの。コレだもの」


グレーのレギンスを膝まで下げて、パーカーのスカート部分を持ち上げる。当然、詩乃のオムツが丸見えになる。


「事故でね。これが必要なの。あなたも女の子ならわかるでしょ?付き合った先にどうなるのか・・・・・・」


女の子は早熟である。当然、綾も何を言われてたかも理解している。でも、疑問も当然ある。


「どうして・・・・・・、どうしてそれを綾に伝えたの?綾なら、黙ってる」


「どうして・・・・・・か、あえて言えば『フェアに闘いたいから』かな?好きなんでしょ?健太君の事」


綾は寒さではなく、顔を真っ赤にする。初対面の女の子だが、詩乃は真面目に向き合う覚悟を決める。


「私はこれを治す。そうしないと健太君に助けてもらうばかりになっちゃう。綾ちゃんはどうするの?」


挑発するように詩乃が笑った。同じように綾も笑って答える。


「綾も、いいえ、私も負けない!必ずあなたから健太君を取り返す!ずっと好きなんだもん!1年生の時に変なおじさんに連れて行かれそうになったのを助けてくれた時から!」


そう宣言して、詩乃の手を取る。


「行きましょう、健太君のところへ」


そう言って、歩き出した瞬間、詩乃は転んだ。当たり前である。彼女はレギンスを膝まで下ろしたままだった。それに巻き込まれるかたちで綾も転んだ。






「どうしたの2人とも」


帰って来た彼女達を見て、健太が目を丸くする。


「ちょっと決闘を」


「綾ちゃん、そう言っちゃうとすごいケンカしたみたいだよ」


健太はさらに混乱した。綾の言うとおり、ケンカしたと言われても納得出来る服の汚れ方である。しかしながら、さっき出会ったばかりの2人なのに、仲良しに見える。戻って来る時も2人で手を繋いでいた。


「健太、詩乃ちゃん!初詣に来たのだから、ちゃんとお参りしなさい!」


『はーい!』


貴子の声に綾も含めた3人で返事した。ちなみに貴子は早々にお参りを済ませ、綾の母親達のグループと井戸端会議中である。


「じゃあ、健太君の右手は私ね!」


「詩乃ちゃんズルい!左は綾のだからね!」


手を繋いで短い参道を歩き、3人で仲良くお参りする。


(健太君と付き合えますように!)

(オムツがとれますように・・・・・・)

(中学受験に受かりますように!)




こうして新しい一年が始まった。

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