少し前の出会い その1
4月初め。
お、この店はある。1パック制限付きだけど。
あたしの名前は早苗貴子。仕事も家事も忙しい兼業主婦、1児と夫の3人暮らし。
ここはドラッグストアであたしがいるのはオムツコーナー。オムツが最近、買い占めとかデマとかで品薄で地味に困る。3軒目でやっと見つけた。1つが13枚入りだから13日は大丈夫ね。次の休みもこうやって探さないとダメかと思うと少しテンション下がる。本音を言えば3パックとか買って、1ヶ月ぐらい大丈夫にしておきたい。学校も休校で子供もずっと家にいるし、ダンナも来週からテレワークだったかリモートになるらしいし、昼ごはんの準備まで増えて主婦業も忙しいのだ。その時、同じ売り場の女の子を見て閃いた。
「ごめんなさい、初対面のあなたに失礼かもしれないけど、お願いがあるの」
女の子は10代後半の高校生といった感じだった。ファストファッションのワンピースにMAー1のジャンパーの着こなしが今風だと思うから。身長は150ぐらいだろう。私よりも低かった。マスクで顔は隠れているけれど、可愛いタイプだと思う。あたしの問いかけにその女の子が「何?」といった戸惑いをみせる。不安にならないようにすぐに説明を重ねる。
「このオムツおひとり様1点限りなの、2つは欲しいの!お願い、代わりに買ってくれない?」
少し目を丸くして驚く女の子。
「いいですよ。でも、私はこっちが欲しいんです。代わりにーー」
「OKよ!」
女の子が欲しがったのは息子の使っているオムツの女の子用。売値も同じだから、レジを通して交換するだけでいい。助かった。
これが詩乃ちゃんとの出会いだった。