3ちょろ
私は自宅の部屋で悩んでいた。
空飛ぶネコ、キーのことじゃない。
それも鬱陶しいけど!
最近エリック様と親しい女子生徒がいる。
女子生徒。
女子。
女の子。
名前はマリア・エイミス男爵令嬢。
柔らかなピンク色の髪に新緑のような緑の目。
可愛かった。
情報が入った時すぐ確認に行ったけど……。
可愛かったのよ。
クラスメイトとにこやかに話す。
さりげなく手助けを申し出る。
いい子だった。
評判も悪くない。
ちょっと勉強の成績は良くないみたいだけど真剣に取り組んでいて、教師からも好感度が高い。
『おーなかなか強敵だねー。仕事がはかどるにゃー』
私と一緒にマリアを見たキーが言う。
瞬間私は雷に打たれた。
強敵。
今までエリック様の側に婚約者としていたから、近寄る女の子はいなかった。
油断!大敵!
エリック様は優しくて、かっこよくて、強くて、ステキなんだからそういう輩がでてこないわけがない!
先日試験結果を見せた時「まあまあだな」と褒めていただいたのに!
キーが耳元でちょろいん!ちょろいん!ちょろいん!連打してうるさかったけど!
今後の対策を練らないと!
誰か相談相手はいないかしら。
使用人を呼び家族の予定を聞く。
「お母様は?」
「サロンに出席されています」
「大兄様は?」
「旦那様と領地視察に」
「小兄様は?」
「来客中です」
「じゃあコリン!」
「バイオリンのお稽古中です」
なんてこと!誰もいない!
「小兄様のお客様は誰?」
「第一王子殿下です」
アル兄様⁈
「お邪魔していいかきいて」
「かしこまりました」
「小兄様!アル兄様!聞いてください〜!」
私は勢いよく扉を開け応接室に飛び込んだ!
「チェル。お前なあ、アルとはいえ一応王族だぞ。もう少しどうにかしろよ」
小兄様が呆れていうけど、小兄様だけには言われたくない。
「チェルシーはいつも元気だね」
アル兄様が優しく笑う。
お母様が違うけど、やっぱりエリック様とアル兄様はご兄弟だなと思う。
髪や目色は違うけど顔立ちが似てるから笑いかけられるといつもドキドキしちゃう。
「小兄様大丈夫!王宮や学園ではきっちりこなしてるもん」
「王宮で見かけるとオレ二度見するぞ。あれチェルかって!」
「だってマナーの先生もお父様達も家族以外に笑顔は見せちゃだめ!って厳しいんだから」
おかげて家から出るとピクリとも表情を動かせないから顔が凝るの。
「おいおいアルは家族じゃないぞ」
「アル兄様はもう家族よ。小兄様よりお兄様みたいだし。それにエリック様と結婚すれば本当の家族だもの」
アル兄様は私の2歳上で、とっても落ち着いているし、頭もいい。
さすがエリック様のお兄様!
ちょろいん♪
キーが太鼓を鳴らして思い出した!
「私エリック様と結婚できるでしょうか」
「チェルシーどうしたんだい」
アル兄様の声にうながされてエリック様のことを説明した。
最近親しくしている女子生徒がいて、その子がとてもかわいいこと。
その子といる時のエリック様を見かけた。
その時……。
「私が見たことない顔をされていたんです」
「……弟がすまないね」
「いえアル兄様、そんな」
「一度チェルシーはエリックと話をした方がいいね。これから夫婦になるんだ隠し事は良くないよ」
「アルの言う通りだチェル。一度話しておけよ」
「私エリック様に聞いてみます」
だって大好きだもん!
女は度胸!ズバッと聞いてみる!
ついでに強敵も牽制よ!
「ありがとう小兄様!アル兄様!お話中お邪魔してごめんなさい。失礼しました」
私は軽い足取りで応接室を後にした。
「あのガキうちの天使に何やってくれてんだ」
「エリックもチェルシーの中身を見れればいいんだけどね」
「うちの総意は『エリック王子との結婚反対』だぞ」
「……」
「あのガキはチェルをバカにしてる。そんなやつの嫁にできるか」
「チェルシーが傷つかないように気をつけるよ」
私は浮かれて小兄様たちがそんなこと話してるなんて夢にも思わなかった。