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3話 計画と諦め……か~ら~の?


 翌朝。


 泣き疲れでボケっとしながらも、奴隷という名の嫁を買うという行動指針が決まり、その為の計画を練る事から始めた。


 奴隷を買うには相応の金子が必要だ。

 だからやはり稼がなくてはならない。

 結局世の中は金なのだ! 金が全てなのだっ!


 脳筋であれば『モンスターを狩って金に換えりゃあいいんだよ』と言うだろうが、それは命を懸けた綱渡り。負ければ本当に終わる。

 幸か不幸か私には日本人としての知恵と能力がある。ソレを金にかえるんだ!


 まず、目的となる奴隷嫁についてだが、この異世界アウローラにおいて一口に奴隷と言っても、『魔法で契約~』とかそういった類の物はない。


 もっと単純なもので、奴隷商が奴隷を仕入れると、肩や背中、腹などに奴隷商のブランドの焼印を入れる。

 その焼き印の有無で奴隷かそうでないかを区別しているのだ。


 だから買われた奴隷が辛い境遇から自由を求めて逃げ出しても、そのブランドの焼き印がある限り生涯奴隷となる。

 逃げ出した奴隷を捕まえた者は、五体満足でその奴隷商の元に連れて行けば謝礼金が出る為、大抵の場合は引き戻される。中にはこれ幸いと自分の奴隷にしてしまうような者もいたりするが、奴隷商はいつ誰に売ったかを記録しているから正当な所持者ではないという怪しい素振りがあれば謝礼金目当てに、不当に奴隷を手にした情報を売られる可能性も高い。それに奴隷が納得いかないような扱いをされれば奴隷商の下へ逃げ出し『アイツに連れ去られた』と訴える可能性もある。


 戻った奴隷は購入した奴隷の持ち主が健在で引き渡しを求めた場合、奴隷商が取り返した際の手数料を請求する事になり、持ち主の懐は痛む。その為、逃げた奴隷に対しては鉱山送りなど二度と逃げ出せないような場所に売り払われて元を取るようなキツイ対応になる事が多い。


 なにせ、主人にとっては奴隷は人ではなく『物』なのだ。もう壊れていいと思ったら壊れるように使ってしまう。


 また、持ち主が引き渡しを求めなければワケアリ物件のように売られてしまう可能性も高い。そうなると買い手はつきにくくなるから、奴隷も逃げ出して良いことは無く、相当ひどい扱いでない限り我慢して現状を受け入れる。


 だが、逆に言えばこの世界において、奴隷は主人の用意した箱庭内という限られた範囲だが自由意思を持てる。

 例えば奴隷をひどく扱う主人だった場合、不平不満が募れば奴隷の『主人殺し』も起きるのだ。


 もちろんそんなことが起きればその奴隷の生涯も、奴隷商のメンツによって閉じる事になるワケだが『コイツを殺せるなら死んでもいい』となれば奴隷は一切躊躇しない。


 と、まぁ、こんな殺伐とした関係があるからこそ、一口に『奴隷』といっても、その持っている才能によっては、主人からも優良な関係を築こうとしてくるから救いも多い。

 ……才能が無ければ肉の壁まっしぐらとも言えるワケだが。


 こんな感じなので、嫁目的の奴隷を望んでも問題はない。

 もちろん『奴隷を嫁って……もっとマシな女にしろよ』と後ろ指さされる行為ではあるが、性欲の処理に女奴隷は普通に使われており、時には惚れこんで身請けし、奴隷との間に子を儲けるヤツもいるから珍しくも無い。ああ。珍しくないさ! だから大丈夫! 奴隷嫁! 奴隷嫁をもらうんだ!


 ……さて、肝心の奴隷の値段だが、その価値によって金額は大きく変わる。

 なぜなら敗戦国をまるっと奴隷化するのだから種類が豊富なのだ。


 例えば敗戦国の薬師や医師、教師などといった有能な者の金額はとても高く、時には王国が買いとって使用するケースもある。

 逆に安いのは老いた者や病に侵され先の短く思える者。こういった者はどちらかというと叩き売りのように売られ戦争やモンスター退治の駒に使われてしまう。


 そして『女』


 女は器量が良ければよいほど高い。

 まして敗戦国の女なので、美しい者は負けた時点でそれはもう悲惨な目にあった上で奴隷になるワケだが、それでも高い値がつく。


 男はどこでもエロいという事だ。


 そして私もどうせ奴隷を手に入れるなら、見た目が美しい方が良い。

 そういう女はデオダート王国金貨10枚……1,000万円はくだらないだろう。


 というか、王国の魔法使いとか貴族なんが買い占めてしまっていて、ワケありしか買えないだろうな。


 …………はぁ。


 まぁ、自分以外の人間と暮らすことになれば、もちろん養う必要もある。

 ひどい暮らしをさせていれば、ちょっと目を離した隙に『あの主人は嫌! お願いします。あの主人から私を買い取ってください!』とか、『私を助けてください!』なんて金持ちや有力者に泣きつく可能性だってある。


 だから私には……きっと金貨2枚くらいの女がちょうどいい。

 うん。それくらいを目指そう。うん。


 さて、肝心要の金稼ぎ。

 日本で27年、アウローラで18年。

 計45年の人生経験があるわけだが……どうしたものか。


 ……やはり、私の手からは無尽蔵にウンコが出るのを有効活用することが最も効率が良いように思える……なんせ元手が無料だ。無から有を生み出せるのだから魅力的すぎる。くそう。


 ええい、開き直って考えよう!

 ウンコは有用っ! そう有用なんだ!

 神様からもらった『ウンコの知識』のせいか、ウンコの利用方法まで勝手に頭に思い浮かべる事が出来る。


 そうなんだウンコは無用の害悪じゃない!

 江戸時代を思えば、長屋から出るウンコは大家の財産となり、それを売って金子を得ていた。


 つまり、ウンコは金になる!


 とりあえず思いつくのは『肥料』


 肥料の『肥』の字からもわかるようにウンコは野菜を育てる栄養剤だ! 土の栄養だ!

 もちろんそのままウンコを畑に撒いたとしたら、そんな野菜は食えない。というか絶対食いたくない。勘弁してくれ。


 かつて日本に多く存在した肥溜(こえだめ)にあるように、発酵を促し、寄生虫や病原菌を殺し、畑に撒いた時にきちんと良い土となるように加工する必要がある。


 そう。ウンコを加工だ!


 ……………クッソ!

 やりたくねぇ!

 やりたくねぇよう!



 ハッと思いつく。


 ……もう生ウンコ自体を売ればいいのか。

 この世界ではボットン便所から排泄物を回収する業者がいるのだ。


 ソイツにコンタクトを取るか。


 ……ダメだ。


 買ってくれるだろうが、結果として街の機能が死ぬ。


 なぜなら、需要以上の供給が可能になり、街から回収しなくてもよくなれば、誰も排泄物を回収しなくなる。

 ウンコ運びなんて決して良い仕事ではないからな……


 もし私が供給を開始すれば、回収は誰もやりたくない嫌な仕事を引き受ける事から有料に変わり、金を払わなければ回収しなくなる。

 そうなったら、次はどうなるか。

 今まで無料で引き取っていた物に金を払うくらいなら……と、そこらに捨てる者があらわれはじめ、一人そういった人間が現れればドミノ倒しに増えていき、街にウンコが溢れる。


 こうなると疫病が流行り、間もなく街が死ぬ。

 で、その事態を引き起こした私はきっと死刑になる。


 ここまでを予想し、首を振って溜息をつく。

 

 肥料はダメ……か。


 ……となると、やりたくないが……『細菌兵器』として利用して敵国を滅ぼす方向に進むしかないんだろうか?


 ちょっと壁に穴をあけて手を突っ込んで、延々噴射。

 そうすれば汚物にまみれ、衛生は壊滅……疫病発生で戦えなくなり落とす事は簡単になる。


 でも、タツの性格だけならまだしも、日本人として人殺しを禁忌としている倫理観の自分がやれるだろうか?


 疫病を発生させるという事は、病気で人を苦しめるという事だ。

 回復魔法が無いこの世界では、病気になればきっと大半は死ぬ。

 自分の欲を満たすために、大勢を殺す。


 ……それができるか?


 こんなことを考えていると、自然とため息が出てきた。


 いくつか案を考えても、日本人としての自分はどうしても行動の結果を先読みしてしまい、行動した後のリスクに怯む。


「……ウンコねぇ。

 厄介だ……どうやっても誰かを不幸にしそう。」


 あぁ。悲しいな。

 なんでこんな能力なんだろう。


 また、じんわりと目頭が濡れてくるのを感じた。



 その瞬間



『ウンコっと一緒によく出るヤツってなーんだ』


 と、頭の中に背筋を伸ばしたくなるような神様の声が響いた。


「えっ? ……一緒にって…………へっ?」

『正解!』

「えぇっ!? なにが!?」


 以降、神様の声は一切しなくなった。

 とりあえず今の問答を頑張って思い出すと、答えが分かった。


「……あぁ。『屁』か。

 …………ん? 屁?」


 何かが閃きそうな頭の引っかかりを感じ、そして閃く。


「そうか……そのものじゃなくて発生する『ガス』……バイオガスもあるのか……」


 うんうんと頷いて気が付く。


「あ。コレが神託?」


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